ブラックな初仕事
「へぇ……それを俺に向かって言うなんて、やるねぇ」
関がにやりと笑う。青宮もにやりと笑った。
「きちんと勝算もあります」
「はははっ! じゃあ君達、さっそくだが携帯で協会のアプリを開け。そこに受注したクエストの内容が書かれている」
一同が携帯を確認。
その内容に……樹が、えっ、と声を上げた。
「第二階層のヘヴィゴーレムの魔石……30個を、今日中!?」
「ああ。協会的にはもうちょっと上をやってほしいらしいが、まあ、お前らは新人だし、まだ第二階層がせいいっぱいだろ? 手打ちってことで、この程度だ」
「な、なにを言っているんですか!」
樹が声を大きくする。
ヘヴィゴーレムはあの「倒すのがめんどくさいボス」だ。
乾が静かに抗議する。
「ヘヴィゴーレムはパーティーでも1体、早くて30分です。それを1日で30……早く見積もっても、今から15時間以上もかかります」
「で?」
「……は?」
「なにがいいたいわけ?」
「無茶なクエストだという話です。何故、こんな仕事を持ってきたんですか」
「じゃあ辞めれば?」
「……は?」
「君達中堅冒険者の代わりなんて、いくらでもいんだよ。しかもこういう荒くれ者の特殊な仕事。嫌なら、辞めればええやん」
「……」
あっけにとられて、乾は言葉を失う。
白井はおろおろするばかりで、なにも言えなかった。
樹はむっとした表情を関へ向ける。
青宮は、冷静に思考を巡らせていた。
そして関が、はっ、と息をはく。
「それと、君達ね。なにか勘違いしているようだけど……俺がこのクエスト内容に関与しているのは、あくまでも最終確認と協会との簡易的なやりとりだけ。つまり、このノルマは協会が決めてんの。俺はそれを調整するところまでしか、権限がない。あー、わかる? ようするに、ほとんど俺じゃなくて、協会の指示なの」
「そんな……」
樹があぜんとする。関は肩をすくめた。
「なにも知らないねぇ。文句・指摘をするなら、まずはお勉強と現状分析をしなよ。これ、この業界じゃなくて社会人としての一般常識ね」
「「「……」」」
樹、乾、白井が内心でイラッとする。
いちいちイヤミな言い方である。
青宮は1人、関の発言に頭をめぐらせた。
(やっぱり、ギルドだけじゃなく業界がブラック……そんでもって、その原因は教えないと。前の会社そっくりだな。自分の頭で考え、わからないことは調べ、見て覚えろってやつか)
うむ、と青宮は頷いた。
初出勤からとんでもない状況に置かれたというのに……青宮は、大きな声で返事をした。
「クエストの内容、了解です。できます!」
樹達3人は正気かと、ぎょっとした。
関がパチパチ、と拍手をした。
「良い返事だ。じゃあ、よろしくたのんだよ。期待の星、青宮 翼くん」
「任せてください」
青宮が扉へ向かう。樹達は士気が低い状態のまま、その後に続いた。
その背中へ向けて、関があっ、と声を上げた。
「おっと、言い忘れてた。もしもノルマを達成できなかった場合は、各員は反省文、原因、是正案を書いて明日の朝まで提出ね。“ミスしたら必ず原因究明をする”これが、ウチのギルドの鉄則だから」
「なるほど。はい、できます!」
「青宮くん、良い返事だねぇ」
「ところで、1つ質問があります」
「あ? なんだ?」
「――ギルドマスターから降格した場合も、その原因究明をしますか?」
関は一瞬、静止した。
素直に従ったり、反抗的な態度を見せたり。青宮の一連の行動と、そして関へ向ける顔つきは――どこか彼をバカしているように思えて、関は心の底から腹が立った。
怒りのあまり、彼はいびつな笑みを浮かべる。
「やってみろや、このクソガキが」




