表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/55

ようこそ、スマイル・アドベンチャーへ

 翌朝。青宮は携帯で地図を確認しながらギルド「スマイル・アドベンチャー」の事務所へ向かった。


「ここか」


 ついに今日、ギルドへの初出勤だ。ビルの2階へと上がり、ドアをノックすると目が死んだ男が開けてくれた。


「ああ……新人か。最後の1人かな。どうぞ」


「おはようございます。今日からよろしくお願いします、青宮 翼です」


 昨日あれだけ疲れていたというのに、青宮はハキハキと挨拶した。それに目が死んだ男はボソボソと「あぁ……よろしく……」と返事をして、中へ入っていった。

 室内には上座に向かって、何故か4人の若き冒険者が一列に並んでいる。


(朝礼か。クソみたいな社訓の暗唱だろうな)


 雰囲気と並び方ですぐに、青宮は察した。

 事務所の隅。客用なのか、テーブルを真ん中に向かい合うようにして置かれた黒ソファには樹、工藤、白井の3人が座っていた。


「青宮くん! やっほ!」


 樹が真っ先に気づいて、手をふってくれる。樹の隣へ、青宮もソファ座った。


「昨日ぶりだね」


「どうも」


 工藤の言葉に、青宮が軽く手をふる。樹があ、と声をかける。


「聞いたよ。1人でセイバーゴーレムのところへ行ったって。もう、あいかわらず無茶苦茶なんだから! ムチャしちゃダメだよ!」


 ずいいい、と樹が身を乗り出して来る。青宮は少し引きつつ、顔を赤くして目を逸らした。


「ま、まあ、なんとかなったんだから、いいだろ」


「む~」


 そんなやりとりをしていると、扉が開いた。

 辺りの空気感が変わる。

 ポケットに両手を突っ込み、歩きたばこをしながら――ギルドリーダー、関 京也が入ってきた。


「はーい、おはよう。今日もがんばろうねぇ」


 いかにも偉そうな感じでドカドカ歩き、ギルドマスター関 京也は上座へ座る。灰皿にタバコを突っ込んだ。

 樹が小声で「……なにあれ」と呟く。

 工藤に関しては「ホームページの感じとは、別人だね……」と呟く。


(めちゃくちゃ似ているな……前の上司に、こういうのいたぞ。まあ、さすがに歩きタバコはしてなかったけど)


 やっぱりな、と青宮はため息をつく。

 そして並んだ5人は、いつも通り社訓を唱和する。


「「「「「1、ギルドに惚れ、ギルドのために仕事をせよ! 2、強いやる気を持ち、返事は「はい、できます!」の一択である! 3、ギルドマスターの命令は絶対である!」」」」」


「「「っ!?!?!?」」」


 樹、工藤、白井が驚いて、びくっと肩を震わす。

 いきなりデカい声で唱和なんかすれば、そんな反応にもなるだろう。

 白井に関しては、気がちょっと弱いタイプなのか「な、なんか怖い……」とビクビクしていた。

 ギルドマスター関は背もたれに重心を預け、両手を頭の後ろへ回した。


「さて、昨日のノルマを達成できなかったわけだけど。各々、反省点はわかっているよなぁ。今日は成長したという結果を残すため、昨日と同じノルマを達成すること。はい、いってらっしゃい」


 男が1人、え、と声を上げた。


「昨日と同じ……第三層モンスターの魔石を300個納品ですか!?」


「うん。みんなの反省文見たけど、是正案をアウトプットできればいけると思うよ」


(ムリに決まってんだろ! あんなの、ただの文字数稼ぎだ!)


 5人はしかし、涙を飲んで返事をした。


「「「「「はい、できます!」」」」」


「じゃあ、よろしく」


 5人が事務所を出ていく。

 樹達はあぜんとしていた。

 青宮は1人、ソファから立ち上がり5人と同じように、上座へ向けて立った。

 関が声を上げる。


「はい、君達新人もそこに立って。仕事するよ」


 樹が困惑する。


「え? で、でも、あいさつとか、説明とか、なにも」


 ふん、と関は鼻を鳴らした。


「ウチのポリシーは見て仕事を覚えること、だからね。イチイチ次やることを説明してあげるほど、優しいギルドじゃないんで。そこんとこよろしく」


「なっ……」


 3人が息を飲む。

 だが、青宮は1人立ちながら、慣れた様子であった。


(研修・説明ナシは社畜の定番だからな)


 先ほど5人が言っていた社訓を思い出しながら、見よう見真似で大きな声を上げる。


「1、ギルドに惚れ、ギルドのために仕事をせよ! 2、強いやる気を持ち、返事は「はい、できます!」の一択である! 3、ギルドマスターの命令は絶対である!」


「……おお、すごいすごい」


 パチパチ、とギルドマスター関は拍手する。


「偉いねぇ。言われなくてもやる、それが大人の常識だからねぇ」


 しかしそう言いながらも――その目は笑わず。青宮を品定めするように見ていた。


(コイツ、例の最短記録の青宮 翼だよな……気に入らねぇ。「こうすればいいんでしょ?」っていう顔をしていやがる。ダントツで反抗的だな)


 青宮と関の間で、バチバチと視線と視線がぶつかり合う。

 なんとなく異質な空気を感じ、3人は増々困惑した。こっそり横一列で並ぶも、色々と理解が追いつかない。


「青宮 翼、だっけ? なにやら、色々すごいみたいだけど。がんばってくれる感じかな?」


「はい。やる気が取り柄なので。それと俺には、このギルドでやり遂げたい目標があります」


「目標? なんだ、それは」


 一瞬、空気が止まった。青宮が黙ったからだ。

 樹は見逃さなかった。彼の口角が好戦的に――少しだけ、笑ったのだ。

 青宮は関を真っ直ぐに見据え、口を開いた。


「スマイル・アドベンチャーのギルドマスター、関 京也を引きずり降ろし――俺が、ここのギルドマスターになることです!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ