男性職員の困惑
狂ったかのように、フレイムバッドを狩り続けた。休みもいれず、ぶっ通しである。ちょっと前までセイバーゴーレムに殺されかけたというのに、休むことなど眼中になかった。
夜の22時。LVは14のまま。
3体のフレイムバッドと対峙した。フレイムバッドは青宮を囲うようにバラバラに散り、1体が声を上げながら突っ込んでくる。
「きいいいいっ!!!」
その場でしゃがみ、飛んだフレイムバッドの下を潜る。そして素早く振り返り、斧を一閃した。
「まずは一匹!」
一撃で翼を両断され、床へ落ちて魔石に変えられていく。
残る2体は炎を吐くも、青宮は大きく前飛ぶようにジャンプし、距離を詰めたもう1体のフレイムバッドを仕留めた。
逃げた最後の一匹も追いかけ、逃さず撃破する。
「はあ、はあ……」
明らかにオーバーワークであった。
しかし限界だと思ったところから、本番なのが社畜時代の青宮だ。
手も足も震えているが、止めない。
そこから2時間、さらなる狩りを続けた。
☆
『――青宮 翼のLVが15へ上がりましたHP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
「よっしゃあああああ! やっと、LV15か……」
どさ、と硬い床の上へ大の字になった。
うとうとして、そこで目をつむりそうになり――慌てて、上体を起こした。
「い、いかん。寝そうになった。さすがにヤバそうだ……帰るか」
ダンジョン内で寝て、フレイムバッドにムシャムシャされて死んだら元も子もない。
青宮はワープポイントを目指し、移動を始めた。
☆
「――お疲れ様です。第二階層攻略は順調ですか」
「え? あ、ああ、はい」
いつもの男性職員ではなく、穏やかな表情をした中年の男性職員であった。
それなのに、なんだか青宮の受付をする前に、第二階層攻略中だと言ってきた。
「ファイヤーコングをソロ攻略した探索者ですからね。ここの支部の職員なら、みんなあなたを知っていますよ」
「ど、どうも」
会釈しつつ、退室手続きをして魔石を売る。
職員は第三階層の魔石とセイバーゴーレムの魔石を見て「ええっ?」と声を上げた。
「ま、待ってください。あなた、ソロなんですよね」
「はい」
「そして……一昨日ですか。第一階層を突破したばかり」
「そうですね」
「それで今日、第二階層を突破したと? それもソロで?」
「一応、そうなりますね」
相打ちだったので、攻略したとはやや言い難いが、嘘ではない。
「ありえないですよ!? 第二階層は、パーティーでもレベルが足りなくなりがちで、数か月……苦戦すれば、半年かかることもある。特に最難関ボス「セイバーゴーレム」はケタ違いだ。第一階層の「ファイヤーコング」とは難易度がいくつも跳ね上がる」
「たしかに、強かったです」
「……。っ、な、なんという。ユニークスキル持ちはたしかに、不可能を可能にするほどの才能持ちであることが多い。だが、それにしたって……」
お金をやり取りしつつ、職員はいつまでもブツブツとなにかを言っていた。
「ありがとうございました」
「……お疲れさまでした」
職員はなにか言いたそうであったが、あんまりあれこれ言われるのは嫌なので、青宮はそそくさと帰っていく。
その後ろ姿を見ながら――職員は、つぶやいた。
「彼なら……この業界を、救えるのかもしれない。来たる”魔石ショック”を回避……なんて、夢見すぎか。でも、希望はあるんじゃないか……?」
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次章からギルドへ初出勤。第二章、本番になります。
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