第三階層
空気感がどことなく、第二までと違う。少し重みがあった。
移動するたびに通路に分かれ道があって、協会支給のデバイスによる電子地図がないと、迷子になりそうだ。
しかし内装が硬い岩の積み重なった遺跡ということもあり、いかにもダンジョンという雰囲気だ。
「冒険感は、こういうフロアの方があるよな」
ふと、そういえば樹は元気だろうかと考える。
今朝メッセージでやり取りをした感じでは、ダンジョンには出ているらしい。「君に少しでも追いつかないとね」などと言っていた。怖そうにしていたが、それを跳ねのけるメンタルは、やはり冒険者なのだなと思った。
そうして進んでいくと、やがて2体のモンスターと出会う。
「キイイイイ~~~~!!!」
かん高い声で鳴く、全長1メートル以上あるコウモリのモンスター――フレイムバッドであった。毛の色が赤く、開いた口からは鋭く長い牙が光る。
「2体か。まあ、やるしかないだろ」
明日のギルドへの初出勤へ向けて、少しでも強くなりたい。
青宮はそう考え、ベルセルクを発動。体中に力が湧き、全身が軽く感じられた。2体のフレイムバッドへ向けて、すばやく駆け出していく。
フレイムバッドは翼をバタバタ羽ばたかせながら、二手に分かれる。
片方のフレイムバッドが挑発するように、一定の距離を保ちながら、こちらの様子をうかがっていた。
前へ出て、斧をふるうとフレイムバッドは身軽な動きで、それを回避する。
すると、もう片方のフレイムバッドが、口から炎の玉を吐き出した。
「そんなことだろうと思ったよ!」
武宮はその場から後ろへ跳躍して、横から襲いかかる炎の玉を回避。
正面のフレイムバッドも炎の玉を放ってきた。
これには間に合わず、斧を前へかざすも青宮の体に炎がふりかかる。皮膚を焼くような高い熱が襲い、視界が真っ赤に揺れた。焦げた匂いが鼻をつく。
中々の攻撃力。
だが、セイバーゴーレムと比べればなんてことはなかった。
「うっ、ぐっ……このぐらい!」
しかし青宮はひるまず、再び前へ飛び出す。
炎を吐き出し、隙のできた正面のレッドバッドを一閃。
ザシュッ! と、鋭い斜めの斬撃がその赤い体を切り裂いた。ばたん、と鈍い音と共に硬い床へ倒れ、魔石となって消えていく。
「きい、きぃぃぃ!!!」
1対1では不利だとおもったのか、もう1体が鳴き声を上げながら背中を向け逃走。
全速力だと、かなりのスピードであった。
「絶対に逃がさん!」
しかし青宮は前へと飛び出し、斧を下から上へ振り上げる。レッドバッドの体は持ち上がり、硬い床へぼとりと落ちる。そちらの方も一撃で、魔石となって消えていった。
「まだこんなものじゃ、足りないな。今日は追い込むぞ」
また受付のお姉さんに言われるかもしれないが、青宮はそれでも今日は止まらなかった。
第三階層のモンスターでレベル上げをすべく、夜遅くまでの狩りを決行する。
∞ウェポンは少しだけダルそうに、ほんのり青く光ったのであった。
その内残業代とか、ねだりそうである。




