ゴンダム
昼食をパンで軽くすました後、平原を駆けてすばやく移動する。1時間ほどかけて、次のボスフロアへと到着した。
ヘヴィゴーレムと同じ、大きく盛り上がった丘の中央。そこに全長5メートルほどのゴーレムが丸まっていた。
傾斜を降りると、丸まっていたゴーレムが立ち上がる。白い色のボディ。ヘヴィゴーレムとは違い、細身でロボアニメのようなヒロイックなシルエットであった。そして右腕には、銀色の大剣が握られている。
そしてその戦い方は――心なしか、ロボアニメっぽいものであった。
胸の中央が赤く光る。すると背中から赤い魔力が、まるでブーストのように勢いよく放出されて、前へ素早く飛び出したのだ。そして銀色の大剣を、素早く振り下ろす。
「っ!? めちゃくちゃ早い……ベルセルク!!!」
青宮は驚きながらスキルを発動し、横へとぶ。ずどおおおおんっ! と地面に重い大剣が振り下ろされた。
細身なゴーレム――セイバーゴーレムはさらに赤い魔力を放出し、空へ飛ぶ。そして右の背中からぶら下げた、空へ銃口が向けられた長いキャノンを、前方へ向け角度を降ろす。照準を青宮へ定めると、銃口が赤く光り――高魔力の、槍のような光の弾丸が真っ直ぐに放たれた。
「ゴーレムっていうか、〇ンダムみてーな戦い方だな! 正直、かっこいい!」
前へ一気に飛んで、ギリギリで弾丸を交わす。
光の槍は、地面を真っ赤に爆発させ、砂埃を巻き上げる。
実際、これは豆知識だがネットの掲示板でこのボスはガン〇ムをもじってゴンダムと呼ばれていた。
そしてその名にふさわしく、第二階層の大きな壁として、このボスは立ち塞がる。
魔力をブーストのように扱う高機動力。大剣による高い近接能力。空をも飛べる移動範囲の高さ。そして背中のキャノンによる高火力攻撃。
パーティー戦においても、討伐推薦レベルは25と高い。
この第二階層でこのレベルにまで到達しようとすると、先ほどのヘヴィゴーレムの討伐が中心となる。
幸い、ヘヴィゴーレムの出現フロアは多く、討伐制限の対象外となっていた。
しかしそもそも倒すのがめんどくさい上、ヘヴィゴーレムによる効率はそこまで高いわけではなく。ダンジョンに通っても、第二階層の突破は3ヶ月、下手をすれば半年かかるとさえ言われている。第一階層との大きな違いが、そこにはあった。
そしてそんな第二階層の最難関ボスへ――冒険者歴、1か月未満の青宮がソロで挑んでいる。
一般的の感覚では、無茶を通り越して自殺行為だ。
しかしだからこそ――挑む価値がある。
相手の遠距離攻撃を回避し続けていると、セイバーゴーレムの胸の光が消えた。
すると背中からの魔力の放出がなくなり、地面へ着地する。
高機動力の源である、魔力が一時的に低下したのだ。しばらく時間経過するとまた元に戻るのだが、いまこの瞬間だけは、セイバーゴーレムの機動力が下がる。
この瞬間を狙って、一気に攻撃するのがセオリーだ。
「いくぞ……!」
スキルによって上がったスピードで、セイバーゴーレムへ接近。
セイバーゴーレムは大剣を構え、間合いに入った青宮めがけて横へ一閃。重々しい刃は、直前でジャンプした青宮の、足の下を通過した。
斧を振り下ろすも、すぐに位置を戻された大剣の刃によって、受け止められる。
ずどおおおおおっ!!! と、重厚な金属音が辺りに鳴り響いた。
青宮は攻撃の手を緩めず、すかさず何度も斧を振るう。
セイバーゴーレムは下がりながら、剣で防御していく。全力で柄を握り、守るのが限界の様子で後退していく。
だが、守りに入られれば、決定打がない。
胸に赤い光が戻ると、セイバーゴーレムは空へ逃げていった。
「くそ、ちょこまかと……!」
再びセイバーゴーレムが高い位置から、キャノンにより遠距離攻撃を放つ。地面が熱くえぐれるほどの高威力の魔力による弾丸は、弾速もかなりのもの。
しかもこんな攻防を続けては、徐々に体力が減る。
セイバーゴーレムが地上へ戻る最後の一発は、青宮の右足をかすめ、熱く焼いた。
「ぐぅ……! まだだ!」
かすめただけなのに、右足には強烈な熱のこもる激痛が走る。神経が焼けて、自分の足とは思えぬほど熱く感じる。
それでも、痛みをこらえ、興奮で麻痺させて再び接近。
空気が激しく揺れるほどの、凄まじい攻防。重量感のある音の果てに――青宮の一振りが、セイバーゴーレムの左手首を斬り落とした。
ばごおおおおんっ!!! というクラッシュ音と共に、金属がくだけ、セイバーゴーレムは右腕一本で大剣を支える。
その瞬間に、パワーが戻り、上空へ再び逃げた。
「よし。次でいけそうだな」
そう思いながら、空から降り注ぐ赤い槍の光を避ける。だが――再び、最後の一発である。今度は左足の方をかすめた。両足共に痛みが走り、青宮は思わずその場でぐらつく。視界に光が走り、めまいがした。
「うっ、ぐっ……!」
パワーダウンしたセイバーゴーレムは……しかし、ここで走って青宮へ接近する。青宮はフラフラと立ち上がりつつ、にやりと笑った。
「バカめ。逃げてまた空飛べるようになるのを待てば、良かったのにな!」
片腕になったセイバーゴーレムの近接能力は落ちている。
青宮が弱っているから、接近する判断をしたのだろうが――そもそも、わざわざ相手の土俵に上がることが、チャンスを与えている。
青宮は斧を力強く握り、振り下ろされた剣へ向けて斧を真っ向から振り上げた。
互いの刃が交わった瞬間、パワフルな斧の一閃により、大剣は弾き飛ばされ、宙を舞った。ざしゅっ! と丘の壁に、大剣が突きささる。
「もらった!」
青宮が胸向けて、斧で攻撃。胸の一部が欠け、縦へするどい切れ込みが入った。それでもセイバーゴーレムはあきらめず、右拳を振り上げる。青宮はその腕を、一瞬で斬り落とした。重々しい、けれど細身のセイバーゴーレムの右腕が、ばたんっ! と地面へ落とされる。
「これで、トドメだ!」
セイバーゴーレムの顔へ向けて、斧を振り下ろす。
ヘッドの形をした部分がくだけ、セイバーゴーレムの動きがピタリと止まった。
「っ、いってっ……!」
ここにきて我慢していた両足の激痛が強くなり、青宮は地面へ降りて腰を落とす。
停止したセイバーゴーレムはわずかに足を動かしたが、前へ向かって倒れ、その動きを止めた。
「よし。これで……っ!?」
しかしセイバーゴーレムは、倒れる瞬間まで青宮を殺すことを考えていた。
戦闘は不能になった。だが、やつの倒れた方向……それは、肩にぶら下げたキャノンの銃口が、青宮へ向けられている方向。そして最後の振り絞った魔力はキャノンに注ぎ込まれ――万全な時のほどではないが、強力な赤い光の弾丸が、彼の体めがけ至近距離で放たれる。
両足の激痛により、すぐに動くこともままならない。
「やべぇ。マジかよ……」
やはりそう簡単に、誰も達成していないことを成すのは無理か。
せっかく倒すことは出来たのに……これでは、巻きぞえをくらう。
青宮はそれでも、生き延びてやると、せめてもの抵抗で∞ウェポンを前へかざす。
放たれた赤い光は、青宮を焼き尽くそうと、その全身を包み込んだ。




