ヘヴィゴーレム
「さて。明日から自由の身じゃなくなるし、今日のうちにやることやるぞ」
できるだけモンスターを避けて移動をして、2時間ほどでボスのいるエリアへ到着。大きく盛り上がった丘の中央がへこんでおり、その中央に黒い大きな岩人形が丸まっていた。
金属のようにツヤツヤとした全身は、とても硬そうな印象を与えられる。足、腕、全身がとても太く、どっしりとしたフォルムだ。
青宮はベルセルクを発動し、下へと降りる。
第二階層も2体フロアボスがいる。
この岩人形のボスの名は「ヘヴィゴーレム」と呼ばれていた。
「……」
ゴゴゴゴゴ、とヘヴィゴーレムがゆっくりと立ち上がる。
全長は8メートル。今まで見て来たモンスターの中で一番大きい。
かなり鈍重な動きだ。見た目通りといえば、見た目通り。
「さて。事前情報通りなら、結構な地獄になるが……やるか!」
距離を詰める。ヘヴィゴーレムは凄まじいパワーで右腕を振り払う。だが、どっしりとしたその動きは、今の武宮にとっては極めて鈍く感じる。ぶおおおおんっ! とものすごい風圧を感じるも、全く当たりそうな気配もなく、青宮はヘヴィゴーレムの足元へと侵入した。
そして斧を振り下ろす。
ガギャン!!! と、ものすごい金属音がした。
「硬い……!」
何度か斧を振り上げるも、頑丈すぎて両腕がしびれるくらいであった。まるでコンクリートを殴っているかのようだ。
ヘヴィゴーレムが右足を上げ、青宮を踏みつぶそうとする。
それを走って避ける。どしん、と足が踏み降ろされた瞬間、震動が地面へ響き渡った。
さらに地面へ1つ魔法陣が浮かぶと、1メートルほどの細身なフォルムのゴーレムが召喚される。
「来たか」
一定時間でミニゴーレムが増えていくのだ。
だが、こいつらの1体1体は大したことがない。青宮はすぐさまミニゴーレムへ近づき、一撃で破壊した。
そして再びヘヴィゴーレムの足へ攻撃するも、硬い感触が跳ね返るばかり。
事前情報で覚悟していたとはいえ、青宮は舌打ちをした。
「めんどくせーボスだ」
ヘヴィゴーレムを評するなら、まさにその一言。「めんどくさい」だ。その圧倒的な防御力・強度は何度攻撃してもダメージがほとんど通らず、戦いは持久戦へと持ち込まれる。
さらに時間が経過すればするほど、ミニゴーレムが召喚される。個体は大したことがなくても、放置すればどんどん増えるため、ちゃんと倒さなければいけない。
ヘヴィゴーレムはミニゴーレムの召喚もあって魔力を消費し、徐々にその強度を落とす。
そしてダメージを蓄積すれば、少しずつ突破口がみえてくるのだ。
だが、このヘヴィゴーレムはいわば、HPが極端に高く設定されたボスのようなもの。
パーティーであっても、討伐には30分もかかるという「めんどくさいボス」であった。
攻撃力は高いものの、動きが鈍いので集中すれば危険性はそこまで高くない。
だが、この約束された持久戦が厄介なボスなのだ。
☆
ミニゴーレムを倒し、足を攻撃。
また、ミニゴーレムを倒し、足を攻撃。
ひたすらその繰り返しであった。
もはや作業化した流れは、単調で、人間にとってあまりにも苦痛であった。変化のない時間。それなのに命のやり取り。その緊張感のなさが、逆に危険であった。
「うおっ!?」
ゴーレムの振り下ろされた右足が、青宮の体スレスレを通過。
「まずいな。集中を切らしちゃいけない」
この精神攻撃こそが命取り。
攻撃力事態は高いので、当たるわけにはいかない。
だが、集中を切らせば当たる可能性はある。現に今、危ない瞬間があった。
「そういや、人件費もったいないからって、アホみたいなシール貼り作業を10時間以上やらされたことあったな。それを思い出せ。30分ぐらい、どうってことないだろ!」
時間が過ぎたベルセルクを発動させつつ、ゴーレムの右足を攻撃する。
回避。攻撃。回避。攻撃。回避。攻撃。
長い、長い、作業のような戦闘の果てに――その瞬間が、訪れた。
ばごんっ!!! という大きな音と共に、ゴーレムの右足が破壊されたのだ。
「よし、きた!」
ゴーレムが崩れ落ち、その体が倒れる。
そこからは強度が落ちるのか、斧を振り下ろすたびにその頑丈そうな硬い体が、砕け、弾けていった。
「おら、おらっ、おらああああああっ!!!」
単純作業のストレスを発散するかのように、何度も、何度も斧を打ちつける。
そしてゴーレムの胸の奥にあった、赤い石へ目がけて斧を振るうと、その動きが完全に停止した。
ゴーレムの体が消え、赤い魔石だけが残る。
戦闘時間30分。
ソロなのに、パーティーでの推定時間と同じくらいであった。
「ふう。やったか……なんか、疲れるボスだな」
青宮は魔石を回収し、地面へ寝転がった。
フロアボスは、あと1体。
それを倒せば、第二階層もソロで制覇だ。




