フリじゃないからな?
朝。受付のお姉さんが、涙を流していた。
「ううっ、よかったですっ。無事でよかったぁ」
「ど、どうも……」
死神とその召喚者におそわれた情報が、もう耳に入ったらしい。
まさか泣くほど心配されるとは、思わなかった。
嬉しいが、ちょっと恥ずかしい。
「元気な顔を見れてよかったです。ギルドへの加入も決まったようで、上手くいっていますね」
「そうですね」
「……ちなみに。一か月に一度、ギルドのアンケート調査がおこわれます。必ず要望が通るわけではありませんが、もしも合わなかったら、異動のお願いは可能ですからね」
「みたいですね。一応、調べてはあります」
「ふふふ、それならよかったです。青宮さんはすごいんですから、無理はしなくていいんですよ」
受付のお姉さんの声は、またしても心配そうであった。
明らかにヤバい匂いのする「スマイル・アドベンチャー」は、やはりブラックなのかもしれない。ちなみに調べたところ、現メンバーは1年在籍しているようだ。
どうも冒険者協会は「実力主義」のようで、異動要望は実績のある冒険者を優先、ということになるらしい。
おそらく「スマイル・アドベンチャー」の現メンバーは、優れた実績を残せているわけではないのだろう。
(まあ、俺の狙いは異動じゃないけどな)
アンケートで申請できるのは異動だけではない。
ギルドリーダーへの志望も可能だ。
それに関しても実力と実績があれば通る。
さらに言えば、メンバーに実績で負ければリーダー降格もありえる。
それがこの業界のルール、ポリシーのようだ。
(思いのほか、うさんくさい業界だよな。まあ、ワクワク冒険して楽しく金を稼ぎまーす! なんていう、都合の良い話はないってことか。あいかわらず、社会ってのは面白くない)
「では、今日もいってらっしゃいませ」
「はい。いってきます」
青宮はいつも通り受付を終え、ダンジョンへ入った。
☆
第二階層へワープし、まずは見た目の変わった∞ウェポンのステータスを確認した。ブラックソウル以外にも、なにか変化があるかもしれないからだ。
案の定、∞ウェポンのステータスはさらなる成長を遂げていた。
∞ウェポン
HP+100→130
MP+50→60
攻撃+95→110
防御+50→60
魔力+50→60
精神力+50→60
俊敏+50→60
ベルセルクLV2
ブラックソウルEX
??? LV?
冒険者「青宮 翼」以外装備不可である。
今日は第二階層のフロアボスへソロで挑戦する予定だ。
ブラックソウルによる全ステータスの底上げも手に入れたので、より自信がわいてきている。
もちろん、油断は禁物だ。
「しかし強くなったのはいいが……この新しいスキルは名前すらわからない上、また封印状態か」
??? LV?
このスキルは封印されている。
「まさかまた、解放条件が「死ぬこと」じゃないだろうな。もうあれはナシだぞ」
じっと、見た目の変わった∞ウェポンを見つめながら言った。
「……フリじゃないからな?」
∞ウェポンは返事をするかのように、宝石の部分を青く点滅させたのであった。
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