表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/55

幕章「スマイル・アドベンチャー」

 スマイル・アドベンチャーの本社は、支部の近くのビルだ。その中のテナントに2階へ設置されている。

 ギルドマスターへの朝礼が毎朝行われるため、5人のメンバーが一室で横1列に並ぶ。3人が男性で、2人が女性だ。しかし5人共死んだ魚のような目をしており、表情は疲れはてていた。

 男2人が、軽く会話を交わす。


「昨日は早く帰れたな。なにせ夜22時だ……定時みたいなもんだな」


「ああ……クソが。絶対に転職してやる。3年我慢したら、冒険者なんて辞めてやる」


「そうだな。3年。経歴に傷がつかない、3年の我慢だ……!」


 社畜のような会話を交わしていると、扉が開かれ、ギルドリーダーである関 京也が入ってきた。40代前半。身長はやや低めで、160前半。前髪は黒のオールバックで、指やら首からシルバーアクセサリーをゴテゴテと身に着けている。


「はい、君達。おはよう」


「「「「「おはようございます!」」」」」


「声が小さいなぁ。元気ないの? やる気ないの?」


「「「「「おはようございますっ!!!」」」」」


「おう、いいじゃん。やればできる」


 パチパチ、と拍手をしながら窓際の上座にどすん、と関は座る。

 瞬間、5人は一斉に社訓を暗唱した。


「「「「「1、ギルドに惚れ、ギルドのために仕事をせよ! 2、強いやる気を持ち、返事は「はい、できます!」の一択である! 3、ギルドマスターの命令は絶対である!」」」」」


「んっ、じゃあ今日もよろしくね。昨日、緊急でクエストを受注したから。すんごい報酬が弾む仕事でね。冒険者連盟は我々を信頼して、任せてくれたよ」


「そ、そのクエストの内容は……?」


 恐る恐る、1人の男が聞く。

 ギルドマスターはにやりと笑い、答えた。


「今日中に、第3層モンスターの魔石を300個納品。よろしくね」


「さ、300!? 明日ではなく、今日までですか!」


「うん」


「そ、それは」


 メンバーの戦力と第3層のモンスターの強さから、早く見積もっても今日の23時にギリギリ終わるか、終わらないかぐらいの要求であった。


「あれ? 社訓を忘れたのかな?」


「「「「「はい、できます!」」」」」


「よろしい。やります、じゃなくてできます、がミソだからね。もしも失敗したら各員は反省文、原因、是正案を書いて明日の朝まで提出ね」


(その書類考えて書く時間がもったいないないだろ!!!)


 どう考えてもおかしいギルドマスターで、社訓も絵に描いたようなブラック企業なのだが、5人はなにか環境を変えるための行動は起こさなかった。

 社畜あるある。もはやそんな気力がないのだ。とりあえず、この場から逃げたいと考えている。

 重い腰を上げて、どこかに相談しようとか、戦おうとか、そんなことも考えれないほどに、思考が止まっているのだ。

 3年。とりあえずそこまで我慢して、転職しよう。

 5人の頭には、もうそれしかないのである。





 5人が無謀なクエストに出るため、事務所を出る。

 瞬間、関が笑い声を上げた。


「いい気味だ! あいつらの実力で、今日中に300なんて無理に決まってんだろ、バカがよ」


 パソコンを操作し、近い内にこのギルドの新メンバーとなる名簿と、データをぼーっと眺めた。

 1人目。21歳、青宮 翼。ユニークスキル「∞ウェポン」持ちで、最短記録で第1層をクリア。そしてファイヤーコングをソロ撃破という実績を持つ。さらにそこへ、死神による殺人事件を解決したというものまで、加わった。

 まさにスーパールーキー。協会も期待の新人として、明らかにプッシュしていた。


「青宮 翼、か。イカれている実績だぜ。これでまだ冒険者はじめて一か月未満だろ? 化け物じゃねーか。こんな小さなギルドに配属させるだなんて、協会もバカばっかりだな。けけけけっ」


 笑いながら、2人目を確認。21歳、樹 小春。レアスキル「召喚」を持ち、青宮 翼と繋がりがあるのか、同じく死神による殺人事件解決に貢献(こうけん)しているとのことだった。


「ま、この女には酒でもついでもらうかねぇ。(はな)がある」


 3人、4人目も有能そうな冒険者であった。

 だからこそ……笑う。

 おかしくて、おかしくてたまらないと、関は笑った。


「どいつもこいつも、イジめてつぶしてやるよ。どうせこの業界のことも、なーんもしらねーんだからよぉ。くっくっくっ。はーっ、はっはっはっ!!!」


 クソみたいなブラックギルドに、それを放置する冒険者業界。

 そんな世界へ社畜魂を燃やす青年、青宮 翼が乗り込んでいく。

 目的はギルドリーダーを引きずり降ろし、自身が上へ立つこと。

 これは腐りきった冒険者業界をひっくり返す、革命の物語である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ