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アホ親子、復縁を迫る。絶対に許しません。

「――ああ、よかった! もう何度も連絡したのに、出ないから! 心配したわよ!」


「まあ、色々と忙しくて」


 もう切っていいですか、と喉まで出かかる。


「あなたに謝らなくちゃいけないと思って。ウチの娘が、たくさん迷惑をかけて……本当にごめんなさい」


 そして泉の母親から聞いた話で、青宮は色々と驚くことになった。

 泉の目が覚めたのは昨日の朝だったようで、無事に退院したようだ。有島も同様である。

 そして泉と有島が眠っている間に、事態はとんでもないことになっていた。

 どうもこの2人、いわゆるカップルアカウントというのを作り、SNSでラブラブな様子を投稿していたようだ。

 それ自体は普通なのだが、事件の起きる当日の昼頃に投稿したらしい、とある動画があって、それが大きな問題となった。大炎上し、拡散されたのだ。しかも眠っている間に。

 その動画はダンジョン内で撮影したものであった。まだ駆け出しで、有島達とパーティーを組んでいた弱い時代の青宮が、モンスターにふっ飛ばされ、その様子を泉がケタケタとバカにしたように笑っている内容だ。

 話を聞きながら、ノートパソコンで慌てて検索して、ぞっとした。

 幸い、強いボカシを入れていることと、この時代は∞ウェポンじゃないので、本人を特定することは難しそうだが……かなり怖い事態なのには変わりない。


「これ、かなり広まっちゃっていますよ。なに放置してるんですか」


 一番ひどいのは、過激系の動画配信者が「モラルのない冒険者、バカな炎上事件を集めたらその実態がヤバすぎた」という動画を投稿し、その一部に泉の動画が使われていることだ。大手の動画配信者の動画なので、再生数が200万を超えている。もう取返しのつかないレベルで広まっていた。


(クソ。動画もSNSも見ないから、気づかなかったな)


 社畜みたいな生活を送っていたので、趣味は充実していなかった。


「ご、ごめんなさい。娘に言って、動画は削除していますから」


「いやいや、あのさ。それ、元の動画って意味だろ。そんなものを削除したってなんにも意味がないですよ。もう拡散されているんですから。なにをしているんですか」


「そ、そうね。あと、ここからは今後の話をしたいのですが……」


(はあ。これは、かなり動かないとヤバいな)


 本人特定が困難でも、被害が大きかったり、誹謗中傷目的であれば違法性はみとめられやすい。青宮はあとで、弁護士に相談しようと考えた。動画の削除依頼もやらなければならない。


「玲奈ね、本当はあなたのことが好きなのよ」


 泉の母が、震えた声でそんなことを言った。


「なにを言っているんですか」


「娘はあのチャラチャラした男に、だまされていただけ。今は目が覚めたのよ。2人共、あんなに仲が良かったでしょ? きっとやり直して、結婚できるわ」


「いや、そんなことはありえないけど」


 と、ここで泉の母の声が泉本人のものとなった。代わったのだろう。


「翼! ねえ、会って話をしようよ。私、まだあなたが好きなの!」


 青宮はため息をついた。こっちまで頭がおかしくなりそうだ。


「有島と仲良くすればいいじゃないか。お似合いだと思うぞ」


「あ、あいつはもういいの! カエル化したんだから」


(ああ、そういえば、泉を置いて真っ先に逃げたんだっけ)


 しかしだからといって、泉が青宮へ復縁を求めるのは予想外であった。

 一体なにに駆り立てられたんだと考えていると、その答えはすぐに判明した。


「翼、あれからすごい頑張ったんでしょ? ネットの記事、見たよ」


「あ? ああ……あれか。最短記録のことか?」


 名前だけの記載だが、冒険者協会は新たな認定冒険者発表にあたって、何人かピックアップし「将来有望な新人冒険者」として簡単な記事を記載していた。その中で、青宮は最短で1層をクリアしたこと、そして前例のないファイヤーコングのソロ攻略を達成したことを公表している。他の新人冒険者よりも明らかに文章量を使っていて、優遇されていた。


「あなたを支えられるような存在になってあげるから。また、付き合おうよ」


(なるほど。そういうことか)


 冒険者は夢とロマンにあふれた仕事だ。一流になれば年収〇千万、〇億円と高所得者になれる。

 青宮はそんな業界の、いわば新人王のような扱いを受けていいるのだ。

 短絡的な泉のことだ。お金持ちの旦那になれるかも! ツバつけとこ! という思考になり、甘い声を出して復縁を迫っているのだろう。

 母親も母親で、娘とお金持ちの男とくっつけよう、ぐらいの軽い考え方だと思われる。


「絶対に付き合わないし、もう会わないからな」


「え?」


「あと、この動画。たとえボカシが入っていて、個人の特定が困難でも、名誉棄損の内容だったら、損害賠償が成立する可能性はあるから、その時は慰謝料を払ってもらうぞ。社会人なら、責任はちゃんととってもらう」


 しばしの沈黙。

 都合が悪くなったのを悟ったのか、泉は人が変わったように、低い声を出した。


「そういうところが嫌いなの!」


「あ?」


「最初から、アンタのことなんて好きじゃないんだから! そうやってお金お金、仕事仕事って、ガメついところが嫌いなの! 本当、つまんない男なんだから! せめてここで、お前とまた再スタートしたい、くらいのことを言えたら、また付き合ってあげてもいいと思ったのに! もういい! アンタとなんて、やり直さないんだから!」


「おう。ぜひそうしてくれ」


「後悔しても許してあげないよ!」


「後悔なんてしないから。じゃあな」


 ブツン、と通話が切れる。

 こうして、泉 玲奈と正式に別れることができた。

 1つだけ……どうでもいいといえばどうでもいいが、気になる点があった。

 動画で一緒に笑っている有島は、なぜかボカシを入れずそのまま。

 もっと言うと、アカウントで投稿されている他の写真や動画は、泉も有島も顔をさらしている。

 つまり、この2人。炎上系冒険者として、世間に顔が出ているのだ。

 今後2人がどんな進路を歩むのか。社会人になるつもりならば、色々と今後に影響が出ることだろう。

本作の閲覧ありがとうございます。


もしここまでの内容がよろしければ、★★★★★評価・ブックマークをいただけると、とても助かります!


何卒、よろしくお願いします!

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