ブラックソウル、起動
工藤はいきなり、何者かに首根っこをつかまれ――体が、宙を舞った。
「え?」
「樹に近づくな」
どん、どんどんどん! と、左腕一本でぶん投げられた工藤が地面を転がる。そして彼は顔を上げて、信じられないとばかりに、驚いた表情を浮かべた。
死神が青宮を警戒しながら、工藤の元へと下がる。
「冗談でしょ……なんで、生きているのさ。あれだけ念入りに、殺したというのに」
青宮の右手に握られた∞ウェポンは、青から黒を基調とした色に変わっていた。所々にダークブルーの線が入り、斧刃の中央にはミラーカットのダークブルーの宝石が両面に埋め込まれている。
「青宮くん……! えへへ、やっぱり君はすごいね。傷一つ残ってないよ!」
「……なんか自分がバケモノみたいで、ちょっと複雑だけどな」
工藤は立ち上がり、舌打ちをした。
「クソ! くそ、くそ!」
青宮へ背中を向け、走り去っていく。代わりに、死神がこちらへめがけて突っ込んできた。
「逃がすかよ――ベルセルク、起動!」
スキル発動と共に、宝石の部分が青く光る。
青宮は先ほどよりもさらに早いスピードで飛び出した。死神は前へ立ち塞がり、鎌を振り下ろす。
素早い動きと一振り。だが、青宮にとってはそうじゃなくなっていた。
「中々に遅く見えるぞ。悪いな」
∞ウェポンを振り上げる。さらなるパワーの上昇をした一閃は鎌を弾き飛ばした。そして下から斧をもう一度、上へと振り上げる。鋭い攻撃を受けた死神は、フラフラと後退しながら、影から新たに4つの腕を出現させる。しかし迫りくる腕は、斧の薙ぎ払いにより、一掃された。
「これで決めるぞ」
斧を振り上げ、死神の胸へ大きな切れ込みが入る。
そのダメージが致命傷となり、死神は姿を消していく。
新たなスキル――ブラックソウルは、彼のステータスをより高みへと上げていた。
ブラックソウル EX
永続バフ。全ステータスが30%上昇する。
ベルセルクLV2と合わせれば、攻撃と俊敏に関しては合計140%も上昇している。
「バカな、秒殺だと……! 来るな、来るな!」
工藤の背中へ飛び蹴りする。彼は体勢を崩し、その場でゴロゴロと転がりながら倒れ込んだ。
「がはっ! クソ、何者なんだ、お前は! 僕が最強の冒険者になる男なんだ! ハーレムを作って、人生逆転するつもりだったのに! 邪魔をするな!」
「邪魔もなにも、お前から俺達を殺しにきたんだろ」
「黙れ、黙れ、黙れ!」
工藤が武器である、ダガーを構える。だが、その手はカタカタと震えていた。
本能的にわかっていた。青宮は格上だ。
それがブラックソウルの発動によって、さらに差が開いた。人質というカードが無くなれば、もう勝ち目はない。
青宮はにやり、と笑みを浮かべた。
「なあ、おい。2回も殺してくれてありがとな。こいつはお返しだ、受けとれ」
「うっ、うわああああああっ!」
工藤がダガーを振るう。だが、その攻撃をひょいと短い横飛びで回避し、重々しい∞ウェポンを振り下ろした。
重い斬撃が、工藤の体を襲いかかり、胸の出血と共にバタンとその場に倒れる。
死神の撃破により、拘束をとかれた樹がこちらへかけ寄ってきた。
「青宮くん!」
「樹――って、うおうっ!?」
樹は青宮の胸へ飛び込み、ぎゅっと抱きついてきた。胸の辺りに当たるあれの柔らかさだの、女の子の甘い匂いだのが感じられて、一気に心拍数が上がる。
「怖かったよ……! うっ、ううううっ」
勇敢であった樹だが、両手の震えを背中で感じた。
「そうだな。まあ、でもなんとかなった」
青宮は顔を赤くしつつ、樹の肩をポンポンと、左手で軽く叩いた。




