ソウル・リーパー
「……どういうことなんだ、これは?」
青宮が疑問を口にする。
工藤――目の前の男は、青宮のパーティーを助けてくれた人物の1人だ。
それが元凶である、死神のモンスターと共にいる。
工藤はにやりと笑って、あっさりその種明かしをした。
「こいつは僕のユニークスキルさ。色々と便利でね。意図すれば隠せるし、こうやって自動的に動いて狩りをしてくれる。君が前回標的になったのは、たまたまさ」
「……召喚スキルに近い、ユニークスキルなのね」
樹がそう言った後に、青宮はさらに問いかける。
「召喚なら街中と階層関係なく現れたのも納得いくし、アンタと違う活動をしていたのもそういう性能ということだが……なんでわざわざ、冒険者を狙うんだ」
工藤はにやりと笑みを浮かべる。
「人を殺した理由は――これだよ。これが、僕のユニークスキルの真骨頂だ」
ぱちん、と指を鳴らす。
瞬間――彼の周囲に黒い影が生まれた。
そしてその影は、6人の真っ黒な人間の形になって、この世へ姿を現す。
3人は、見覚えのある人物であった。
「チャラ男と、クソビッチ……!?」
寝取り男有島と、元彼女の泉であった。泥人形みたいな見た目をしているのでわかりづらいが、殺された時のあの2人である。手には剣をもっていた。
そしてもう1人の見知った顔は、青宮本人であった。ただし、その手にはなにもにぎられておらず素手だ。
「ユニークスキル「ソウル・リーパー」は、殺した人間の魂をコピーし、自身の使い魔として召喚することが出来る。死神ではなく、こちらが本命。そう。僕の最強のユニークスキルだ」
「嘘……! こんな数、どうしたら……」
樹が杖を持ちながら、おびえた様子で肩を震わす。
たしかにこのコピーが本体と同等の力であれば、太刀打ちできない。あの時の青宮、有島、泉は弱いのでこちらはまだしも、追加の被害者である3名は同じ第二層で活動して3人パーティー。それに加えて、樹の召喚獣を撃破した死神までいる。
数にものを言わせるユニークスキルだ。相手は実質工藤1人なのに、戦力差がものすごい。
ただ1つだけ、気になる点がある。
「落ち着け、樹。完全にコピー出来るわけじゃなさそうだ」
「え……?」
「俺のコピーが素手なんだ。たしかにあの時は∞ウェポンを上手く扱えてなかったけど……にしたって、素手はおかしい。色々条件があるんじゃないか?」
余裕があるのか、単にアホなのか、どちらかわからないが工藤はくくく、と笑いながらまたも手の内をしゃべる。
「その通りさ。残念ながら、ステータス・スキルの完全コピーとはいかない。いわゆる劣化コピーだ。特に君、青宮くんが問題なんだよ。ユニークスキルはエラーが起きて、ついでといわんばかりに斧術もコピーできない。ステータスもひどいものだ」
(まあ、こんなスキルコピーされたら、詰みだったけどな)
青宮がベルセルクを発動。∞ウェポンは工藤へ敵対心を出すかのように、心なしか、いつもより強い青の光を放った。
工藤は不快そうに、眉間にしわを寄せた。
「……どうせ大したことないと踏んでいたけど。なんだか、嫌な予感がする光と派手な武器だね。君の相手は、こいつらにしてもらおうか」
6人の泥人形が一斉に飛びかかってくる。
そして工藤と死神が、樹へ向かっていった。
死神一体で仕留めきれなかった彼女に、2つの戦力がいくのはまずい。
「お前……! くそ、どけ!」
素早い動きで、斧を振るう。青宮と、有島、泉の分身はすぐに撃破することが出来た。
だが、残りの3人がやっかいであった。槍、片手剣と盾、後衛のメイスを持った若き男の冒険者パーティー。青宮の振るった斧は、盾に受け止められた。
後衛から、メイスを持った分身から水の弾丸が放たれる。
それを避けながら、接近してくる槍と片手剣の攻撃を、斧で振るいながらさばく。がきん、がきん! と甲高い金属音が辺りに響いた。
3人パーティーによる休みない連続攻撃。そして後衛からの魔法攻撃。
こちらよりも手数が多い。
だが、数に不利がある状態でのソロ攻略は、第二階層のダンジョンで経験してきた。
「すぐに終わらせてやる!」
まずは出来るだけ、囲まれないようにし、戦いの場を一か所にとどめない。ポジションは重要だ。出来るだけ、相手の連携を崩すように心がける。
高い俊敏で動きまわり、敵を翻弄した。
(よく相手を見るんだ。スピードはこっちのが早い!)
槍が大振りで、青宮への攻撃を外した。
そのスキを逃さない。斧で力強い一振り。
それは凄まじい破壊力であった。吹き飛ばされた、槍を持った泥人形が地面にゴロゴロと打ちつけられ、戦闘不能に。泥は魔力となって消えていった。
もう1人、片手剣が振ってきた。だが、1人を撃破されたことによる焦りか、無謀な突っ込みであった。カウンターで斧を一閃。もう1体の前衛も撃破した。
「あとは、お前だけだ」
こうなれば状況は一気に有利となる。後衛のメイスから再び水の弾丸が放たれるも、それを避けて、斧を振るう。接近戦は弱いようで、一振りがすぐに命中した。
3体の泥人形が消えていく。
「よし、これで――」
「そこまでだよ。その不気味な武器を捨ててもらおうか」
振り返る。
そこには、死神の影の手にとらわれた樹と、不敵に笑う工藤がいた。




