スピアバード
ダンジョンを進んでいくと、ゴブリンとは違うさらに厄介なモンスターと遭遇した。
「クわああああ!!!」
高い鳴き声と共に、全長1メートルほどの大きな鳥が接近。
早すぎて視界にとらえきれず、ほとんど本能的な危機感で、横に跳んで回避した。
巻き起こる風。その強さを感じながら、再び空へ大きな鳥が上昇していった。
「スピアバードか。それも2体」
空を大きな鳥が2体グルグルと飛び回りつつ、青宮の様子を見ていた。
くちばしが槍のように鋭利で長い。上空を飛び回りながら、早いスピードで下降して、そのくちばしで冒険者を突くヒット&アウェイな攻撃スタイルだ。
その素早い移動速度と上空を飛び回る行動範囲の広さが強力で、遠距離攻撃の手段が無ければ降りてこちらへ攻撃してくるのを待つしかない。
さらに厄介なのは、それだけではない。
1体の鳥が、くちばしの先へ緑色の魔法陣を展開した。瞬間、空気をゆらしながら風の刃が青宮へ目がけて飛んでくる。
「早い……!」
横っとびでなんとか回避する。地面の土が巻き上がり、細長いきれこみが入った。
スピアバードは魔法攻撃も行うのだ。
威力が高いわけではないが、速度のある風魔法は回避しづらい。
さらに魔法攻撃に気を取られていると、すかさずもう1体が素早く下降して接近。鋭いくちばしが青宮の腹めがけて向かってくる。
返り討ちにしようと斧を構え、斜めに振り下ろす。
しかしスピアバードはギリギリの距離で右折し、斧を回避した。
「もっと引きつけないとダメか」
さすがは第二階層といったところか。ゴブリンと共通して、モンスターの戦い方が明らかに上手くなっている。ステータスやスキルだけではなく、冒険者自身の立ち回りも要求されているのだ。
もう1体の風魔法を避けつつ、もう1体が接近してくるのを待つ。
焦りは禁物。こちらへ接近してくるのを待つのだ。
「ベルセルク――起動!」
∞ウェポンが青く光る。
次こそは当てる。
青宮はぎゅっと斧を強く握りしめた。
「来い。次こそは当ててやる」
やがてもう1体のスピアバードが接近してきた。
緊張感が走る。外せば、あの鋭利なくちばしが青宮の体へ襲いかかることになる。しかもあれほどのスピード。威力はかなりのものだろう。風魔法とは違い、大きなダメージが予測される。
先ほどよりもギリギリまで引きつけて――斧を、一振りした。
ずどん! と思い一撃がスピアバードの脳天を斬り、深い切れ込みが入った体は、床へ叩きつけられた。
3回ほどけいれんしたあと、スピアバードは動かなくなり、魔力となって徐々に消えていく。
「よし! 決まった!」
俊敏が高い代わりに、耐久はモロいようだ。
もう1体のスピアバードは「くわあああっ! くわっ!」と仲間の死をいたむように何度か鳴きながら空をぐるぐる飛び回ったあと、青宮へ背中を向けて去っていった。
どうやら、ゴブリンとは違って1体で戦うことはないようだ。
「ふう。疲労がたまったら、戦うのが難しい敵だな」
先ほどのようにタイミング良くカウンターが決まれば、すんなり戦いは終わる。
だが、そうでなかった場合は、風魔法とくちばしによるヒット&アウェイが上手く決まり、ハメられることだろう。
「でも、こういう難しさがある方が冒険らしい」
面白くなってきた、と青宮は不敵な笑みを浮かべながら、スピアバードの魔石を回収した。
今日は早く帰らないといけない分、高密度に狩りをしなくてはいけない。
求めるは、効率のみだ。




