再会
「退室します」
「お疲れ様です……今日も遅いですね、青宮さん」
昨日の若い男性の職員であった。彼は夜勤なのかもしれない。
(2日連続で夜勤とは、協会もブラックだな)
余計なことを考える。
「いえ。今日は早く帰って寝ようかと」
「……そうですか」
なにか言いたそうであったが、魔石の譲渡作業へ移る。今日は深夜ではないので、ここで買い取りを済ます。
「っ!? これは……ファイヤーコングの魔石! まさか、ソロで倒したのですか?」
「はい」
「そんなこと……ありえるのですか……」
「珍しいですか?」
「珍しいというか、前例はないかと。上級冒険者がソロで1層のボスを狩る利点はあまりないですし、適正のレベル帯であればリスクが大きい。よく無事に戻られましたね。ファイヤーコングは範囲攻撃などもして、回復役がいないとかなり厳しいと思いますが」
「たしかに、ヒヤリとする場面はありました」
「軽いですね……いや、ですが、素晴らしい。レベルは10……ステータスの伸びも少しずつ良くなっていますね。ユニークスキルは……っ!」
鑑定スキルで青宮のステータスを検査していく。ベルセルクの効果、そして∞ウェポンの現時点でのステータスに息を飲んだ。
∞ウェポン
HP+35 MP+35 攻撃+70 防御+35 魔力+35 精神力+35 俊敏+35
ベルセルクLV1
ブラックソウル LV???
冒険者「青宮 翼」以外装備不可である。
「全ステータスが底上げされるのですか。それでいて、攻撃力は斧術レベル2の水準を満たしている。それでいて、多少の耐久ダウンと引き換えに、攻撃と俊敏を2倍にするベルセルクLV1……レベルが上がったら、ここからさらに上振れるのですね。しかも、新たなスキルにも目覚めている。先が楽しみですね」
「えっと、どうも」
「ゴブリンの魔石……第二階層への挑戦も始まったようですね。これは、ギルドの加入義務が今後発生する可能性が高いでしょう」
「え、そうなんですか」
「はい。基本的には、第一階層の制覇者からが対象になりますので。青宮さん、最速の制覇かもしれませんね。私が知っている限りでは、登録3週間が最速なので。しかもソロ攻略。協会は騒ぐかもしれません」
ちょっとそれは嫌であった。目立つのは嫌いだ。
「そういえば、第一階層に登場した死神のモンスターは……」
「調査中ですが、そのような報告は上がっていません。が、青宮さん達が何者かの襲撃を受けたのは明白ですからね。なにかあるはずなのですが、現状は第一階層に不審な点は見当たりません」
「そうですか」
残念だが、手がかりなしのようだ。
改札を出る。すると他の事務員と手続きをしてた女の子が早歩きで青宮へ追いつき、ポンポンと右肩を叩かれた。
「?」
「こんばんわっ。ほっぺプニプニだね~」
ぷすっ、と右肩に乗せられた右手の人差し指がほっぺに突き刺さる。
樹 小春である。おてんばな女の子らしいイタズラだ。
「ちょっと会話聞いたけど、ファイヤーコングをソロで狩ったの?」
「ああ。まあな」
「うは~。クレイジー! 私ですら、野良のパーティーと一緒だったのに。あのステータスから、ずいぶんと強くなったんだね! やっぱり私の直感に狂いはなかった!」
「あのステータスって、なんで俺のステータスを知っているかのような発言をする?」
樹がぴゅー、ぴゅ~~~と、口笛を吹く。
「さてさて、今日も狩りの報酬でごはんだね~。ねえねえ、この辺でね、美味しいお店知っているの。一緒にいかない?」
(追及を逃れようと、話そらしているな……)
やれやれと思いつつ、可愛い女の子からのごはんの誘いは嬉しい。
それに樹がどうして青宮を見込んでいるのか、気になるところであった。




