社畜に鍛え抜かれた2年間
桐澤との一件から、2年が経過。
かつてダンジョンブレイクが発生した地点に、突如として”黒い塔”が現れた。
なんの前触れもなく、唐突に――新たなダンジョンの誕生かと日本中がざわめく中、しかし同時にダンジョンブレイクによる”災害”も連想させた。
現地では冒険者と自衛隊による調査が、慎重に行われた。
そして――その現場責任者となった獅子山は、大勢の前で塔に触れる。
システム音が告げる。
彼の場合は。
「なるほど。どうやら、これは招待状のようだ」
「は……?」
自衛隊の隊員達が首を傾げる。
獅子山は振り返る。
「入場制限がかけられている。高いステータスの持ち主以外は、入れないようだ。勇者だけが入れる、隠しダンジョンのような存在なのだろう」
隊員たちがざわつく。
「で、ではこれは……?」
「冒険者で対応をする。現状はダンジョンブレイクの兆候はない。先手を打って、入れる者達で突入をしよう」
獅子山はにやりと笑う。
「今の我々は、青宮ダンジョンでイジメ……じゃなくて、鍛えられたのだからね」
☆
時は遡る。
桐澤との一件から一週間が経過した頃だ。
樹は四之宮のダンジョンではなく、青宮のダンジョンで預かることにした。
強くなりたいという彼女の意見は尊重しつつ、それでいて自分の管理下に置くことで、安全性も保つ。
全ては彼女守るため……。
その、はずだった。
「はぁ、はぁ……! もうむりっ!!! ちょっと休ませてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「無理と思った時が、成長のチャンスだぞ?」
「ブラックすぎっ!!! もっと優しくしてよ!」
「そうか。樹、1日もついてこれないけど、大丈夫か?」
「うぅ……! 青宮くん、いつもこんな無茶してたの……?」
場所は青宮のダンジョン内。ビルに囲まれた、白い道路にて樹用に調整した巨人(※人間サイズバージョン)で、樹を社畜形式で鍛えていたのだが……彼女は1日も、ノルマを達成することが出来なかった。
樹はペタリと座って、水を飲み、ジト目を向ける。
「朝から晩までダンジョンに潜ってたな。なんかもう、懐かしいが……」
「……ううっ。私、いつになったら、青宮くんの役に立てるようになるんだろ」
「正直言うけど。無理じゃないか? 今の俺に対抗できるのは、四之宮ぐらいだ」
その言葉に、樹は息を飲む。
「……本当に、そんなことがわかるんだ」
「ああ。樹も見たなら、わかるだろ? 四之宮はダンジョンマスター。ダンジョンブレイクを起こしたし、現に樹をサクッと作ったダンジョンに案内した」
「うん。青宮くんも……同じことが出来るの?」
「似たようなことはな。現にここも、同じ理屈で出来ている」
樹はキョロキョロと見渡す。
現代日本に似たデザインだ。
「ダンジョンに潜っても、もう成長しなくなった……んだよね?」
「ああ。ダンジョン・ルーラーの力を使って、海外含めて全てのダンジョンに入ったけど、どこも弱すぎる。桐澤も、この状態だったんだろうな……」
青宮はため息をついた。
「唯一の例外は四之宮が作ったダンジョンだけど、格が違うからな。どうも勝手に入ることはできないらしい」
「そっか……じゃあもう、青宮くんはカンストなのかな」
「いうてたったLV68なんだけどな。どうもステータス基準みたいだ。∞ウェポンも、すっかり成長しなくなった。おかげで金銭以外で、ダンジョンに潜る理由がなくなった……」
戦闘にも緊張感がなくなり、青宮にとって戦うことは、ただの一方的な蹂躙となっていた。
樹はうーん、と首を傾げた。
「四之宮さんって……人類の敵、なの?」
「あいつらは、ダンジョンそのものだからな。一概に敵とも言えない。ダンジョンのおかげで、人類は発展したからな。だけど、弊害もたくさんあった。ダンジョンブレイクで人はたくさん死んだし、魔石のために死んだ冒険者だっている」
「ええっと……つまり?」
ダンジョン・ルーラーとしての力が、本質を教えてくれる。
四之宮がこの世界にいることは、間違いない。
「四之宮はダンジョンの本能として、今の人類と戦いたがっている。人類を発展させるために。そして、強くなった人類によって、討伐されるために」




