社畜VS勇者
「スキル起動――∞ワークス!」
発動と共に、影山の伸ばした左腕がダークブルーの炎に包まれる。
そしてその炎が消えた瞬間――もう1本の∞ウェポンが現れた。
大きな斧を、二刀流のごとく握る。
桐澤が眉をひそめる。
「あぁん? んな重そうなモンを2つ持ってどうす――」
言葉は最後まで紡がれない。
青宮は一瞬にして、桐澤の背後をとった。
「っ!? はっ、いいねぇ!!!」
青宮が右腕の斧を一閃。
すぐさま振り返り、桐澤は大剣でそれを受け止めた。
∞ウェポンによるステータス上昇。
現在はそれを2本持つことにより、2本分の恩恵を受けることが出来る。
それにより、全ステータスが先ほどよりも格段に上昇していた。
「最高だ、最高に興奮するぜ! こんなの久々だ! ダンジョンでもオレの渇きを癒せなかった。冒険者は腰抜けばっかりだった! けど、お前はちげぇ! お前だけだ! 青宮 翼だけが、オレを渇きから解放してくれる!」
斧と大剣がぶつかり合うたびに、爆発が生じた。
地面や壁がひび割れ、砕け、ダンジョン内がボロボロになっていく。
怪物2体による戦闘。
これがもしも街中で行われていたら、辺りは瓦礫の山となるだろう。
それほどまでの、規格外の戦い。
国家のパワーバランスへ関与出来るほどの、圧倒的な破壊力を保持した者同士の、決して交わってはいけないものであった。
故に桐澤は興奮する。
人類なんぞゴミに出来るほどのパワー同士のぶつかり合い。
自身の魂が、本能が、叫んでいるのを感じていた。
(こっちはそんな余裕ないっての……!)
青宮が歯ぎしりをする。
もはや口を開く余裕もない。
常人――いや、もはや冒険者ですら目に負えぬほどのスピードによる争いだ。
気が抜けない。
気を抜いたら、体が消し飛ぶ。
爆発が当たり前の一撃、一撃だというのに、その一手は綱渡りのごとく繊細。
青宮はダークブルーの炎で体を守りながら、二刀流で斧を振るう。
それでも全身が軋む。
光の魔力が、刃が、体を傷つける。
肩が、腕が、足から血が流れていく。
対して、桐澤はほぼ無傷。
やっとの思いで斧をぶち当てても、聖属性のぶ厚い魔力による壁が、彼女を守る。
間合いもとれない。
間合いをとるという、暇すら与えてくれないのだ。
状況は絶望的。
だが――。
(限界を超えろ――!!!)
社畜時代の精神。
そして同時に――桐澤と同じ、高揚感も感じた。
圧倒的な強者。しかし世界“最強”同士であることを感じさせる力。
それに魂が反応していた。
目の前の敵ならば、いける。
もっと高みへ。
限界のその先へ。
『――ベルセルクがLVMAXへ上がりました』
ベルセルク LVMAX
消費MP50。自己強化スキル。攻撃力、俊敏を110%上昇。魔力、HP、防御、精神を“30→50”%上昇。効果時間は7分、クールタイム10秒。
青宮のまとうダークブルーの炎が、さらに熱く、強力になる。
しかし――。
(違う。こんなものじゃない――この女が、求めてるものは!)
パワーの上がった青宮の一閃。
桐澤もそれを察知した。
「すっげぇモンもっているなぁ、お前! たまんねぇよ!」
ズドオオオオオンっ!!!
武器同士がぶつかり合った瞬間、両者を引き剥がすほどの大爆発が起こった。
ふっ飛ばされ、傷つき、血を吐き――しかしそれでも、両者は地面に着地。
ボロボロの体で、敵をにらんだ。
ダンジョン内が揺れる。
天井から、瓦礫がボトボトと落ちてきた。
「はははははっ!!! オレ達が激しすぎて、ダンジョンが壊れちまうなぁ!」
「そうみたいだな」
『――青宮 翼のLVが61へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
『――青宮 翼のLVが62へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
『――青宮 翼のLVが63へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
『――ダンジョン・ルーラーを獲得しました』
『――ワークホリックを使役できるようになりました』
『――ワークホリック・キングを使役できるようになりました』
さらに跳ね上がる能力。
今までにない感覚だ。
というか……真っ当な方法なら、こんな境地に達することはできないだろうという、領域であった。
前の前にいるナンバーワンが、どれだけ並ぶ者がいないか、バグなのかということをさらに実感する。
なにせ――ここまで来て、ようやく同じ境地に達したと感じたからだ。
「桐澤 揚羽。俺と戦うのをやめろ」
「あーん?」
「これだけの力を、お前も持っているんだろ。オレとお前なら、四之宮に勝てる。勝負はそれからでいい」
無駄だとわかりながらも、いよいよその確信があったので、提案する。
しかし――桐澤は、歩み寄らない。
「あとちょっとでイクってのに、おあずけなんざできるわけがねぇだろ? 最後まで楽しもうぜ、青宮 翼ぁ!!!」
「っ、バカ野郎が――」
2人は同時に――起動する。
ダンジョンブレイク。
四之宮がやったこととほぼ同じ力を、その場で使った。
「「スキル起動――ダンジョン・ルーラー!!!」」
青宮と桐澤の周囲を同時に、次元や空間をも歪める特殊な“魔力”が巻き起こる。
2つの力はぶつかり合い――固有の“ダンジョン”を形成した。




