∞・ワークス
「そろそろ遊びは終わりにして、本気でいくかぁ」
桐澤は舌を伸ばし、自身の聖剣の刃を舐めた。
「スキル――ホーリーナイト」
まばゆい光に包まれ、桐澤は仰々しい、白い鎧を身にまとう。
それはさながら光の勇者のようだが、野獣のような桐澤には絶望的に似合わない。
勇者ポジションというよりは、魔王ポジションの方がよく似合うだろう。
「冗談みたいな恰好だな」
「これがオレのスキルなんだ。あらゆる攻撃にビクともしねぇ耐久力がある。試しに、なんかヤってみるか」
「じゃあ遠慮なく。色々スキルを会得したからな」
青宮は魔力を込め、新しく習得した水魔法を放つ。
「――ハイドロ・ウェーブ!」
巻き起こるのは、大きく太い水の柱3本。
ウェーブ・ストライクを上回る水量に加えて、ウォーターカッターのように凝縮され、鋭い水の刃となっている。
巻き込まれた鋭くなった水圧でもって両断されるだろう。
水の柱は滝のごとく、桐澤の体を呑み込んだ。
大量の水が叩きつけられる音。
耳を塞ぎたくなるほどの爆音だ。
しかし――水の中から現れたのは、真っ白な球体。
光が弾けると、ガードによって無傷の桐澤は現れた。
「いいねぇ。だが、ちと残念だなぁ。アメリカになら、このぐらいのヤツはいる。お前はもっとヤれるだろ? あんま失望させんな」
桐澤が弾丸のようなスピードで飛び出し、一瞬で間合いを詰めてくる。
そのまま光の剣を、青宮へ向けて一閃。
斧で受け止めるも、すぐに次がやってくる。
光の剣は∞ウェポンが放つダークブルーの炎さえも弾き、圧倒的な魔力によって、青宮を押し込んでいく。
一撃一撃が重く、そしてまともにあたったらタダでは済まないことを、予期させた。
(なんて速さだよ……!)
協会で下調べしていたので、わかってはいた。
絶望。規格外。別ゲー。
桐澤はこれまで戦ってきた相手とは、比べ物にならないほどのインフレキャラだ。
彼女の存在は、バグと言ってもいい。
桐澤 揚羽
LV 103
HP 8400
MP 2163
攻撃 2430
防御 2440
魔力 2180
精神 2300
俊敏 2190
スキル 勇者の証 EX
常設バフ。全ステータスを30%上昇。
スキル・ダンジョンによる干渉を無視し、世界を正しく認識することが可能。
もうこの時点でほとんどの探索者が並ぶことはない。
世界でも一握りだろう。
しかし彼女はここにとどまらない。
ここへ今発動したホーリーナイトが加わることにより、そのステータスは規格外のものとなる。
スキル ホーリーナイト EX
全ステータス50%上昇。あらゆる攻撃を防ぐ光の鎧を装備。
桐澤 揚羽(バフ後)
LV 103
HP 8400→15120
MP 2163→3891
攻撃 2430→4374
防御 2440→4392
魔力 2190→3942
精神 2300→4140
俊敏 2200→3960
闇獣モードの荒木 貞雄ですらステータス1400前後。
その3倍ものステータスだ。
彼女が探索者として、世界最強と言われ、そして恐れられるのも納得の数値である。
「おら、おらぁ! お前はそんなモンじゃねぇだろ? わかってんだよ! すげーモン見せて見ろよぉ!」
「っ、うっせぇな、いちいち!」
桐澤の大きな一振りにより、青宮がふっ飛ばされる。
「がはっ……!」
壁にうちつけられ、青宮は意識を揺らしながら、膝をついた。
桐澤はにやりと笑う。
「ほら、お前の相棒もウズウズしてるぜ? オレを見て、そいつも興奮してんだよ」
たしかに、先ほどから∞ウェポンの宝石部分がピカピカと光っている。
力を使えと、促しているかのように。
青宮 翼 男 21歳
LV38→60
HP 2900→4704
MP 955→1549
攻撃 877→1449
防御 627→1045
魔力 875→1447
精神 641→1059
俊敏 591→987
∞ウェポン
HP+710→1680
MP+220→490
攻撃+230→500
防御+220→490
魔力+230→500
精神力+220→490
俊敏+220→490
青宮 翼 合計値
HP 10214
MP 3262
攻撃 4678
防御 2456
魔力 3115
精神 2478
俊敏 3545
色んな戦いを乗り越えてきた。
そうして、ここまでの力に辿り着いた。
正直、日本国内ならもう圧倒的だ。
それでも――目の前のバケモノには、まだ届かない。
だから、青宮は左手を伸ばす。
ずっと封印されていた力――???から生まれた、∞・ワークスを使う。
「……ああ。まあたしかに、それだけは認めるよ。世界一のお前を超えられたらって思うだけで、興奮する」
青宮は立ち上がった。
「ナンバーワン。俺の社畜人生――∞ワークスを、見せてやるよ」




