久しぶりの休暇
「ダメですよ、青宮さん。ちゃんとご飯は食べないと」
「あ、ああ。悪い……」
どうしてこうなったのか、と思いつつ食事を取る。
なにやら料理を振る舞うつもりだったのか、姫咲は持ってきた食材でたまごうどんを作ってくれた。
あったかい麺と麺つゆの旨味と、卵の濃厚な甘みが絡み合って美味しい。
刻まれた細ネギがしゃきしゃきと口の中で音が鳴るのも心地よく、良いアクセントとなっていた。
消化にも良さそうである。
「冷蔵庫の中、空っぽでしたね。自炊はしないんですか?」
「コンビニで適当に食べるだけだ」
「栄養偏っちゃいますよ~。ゴミ箱の中、カップ麺多かったですし」
「早く用意出来て食べ終わるからな……」
「もう~。そんなことだから、突然倒れるんですよ! いつまでも若いわけじゃないんでから!」
「そ、そうだな」
「ちゃんと野菜も食べないとダメですよっ。果物、豆類、海藻も大事です!」
姫咲は押しかけ女房のごとく、掃除をして、青宮の看病をしたりした。
(い、良いのか、これは)
こうして2人きりになって、距離感が近いと、姫咲が美人であることを嫌でも意識してしまう。
そして自分の部屋にいるので、当然、本能的な意識も強くなる。
脳裏には、前の彼女との嫌な思い出が蘇る。
無意識に女性を遠ざけていた。
ダンジョンに熱中することで、樹や姫咲のアプローチにも動じなかった。
だが休んでいるところにつけ入れられると、どうにも、その予防線が無くなっていく。
夜には美味しいカレーを作ってくれた。
後片付けをする後ろ姿は、完全に嫁だ。
(もっと広いところに引っ越そうかな……)
青宮もすごいことを考え始める。
「今まで……」
姫咲が皿を洗いながら、なにかを言う。
青宮はソファに座りながら、え、と声を上げる。
「なんだ?」
「ダンジョンブレイクの時も、それ以外の時も……遠くから、見守っていれば、いいかなって。影から応援できれば、いいかなって。そう思っていたんですけど……樹さんがいない今、チャンスだって。つい、そんなことを思ってしまって……」
「ひ、姫咲」
「ごめんなさい。急に、こんなこと……」
沈黙が降りる。
なにか言わないといけないことはわかっていたが、言葉が出ない。
(どうすれば……)
片づけを終えると、姫咲は帰ると言って、玄関へと移動した。
青宮は見送るため、その後をついていく。
「青宮さん。ゆっくりしてくださいね」
姫咲が背中を向け、ドアノブに手をかける。
その瞬間になって、青宮は声を上げた。
またな、と言おうとしたが――実際に出た言葉は、別のものであった。
「……もう少し、ここにいてくれないか」
姫咲の頬が赤く染まった。
「はい……」
そこからは流れで、夜を共に明かすことになった。




