第八層
次の日。いつも通り協会へ行くと、獅子山が待っていた。
第八層へ挑戦するにあたって、話があるらしい。
2人で受付の近くにあるテーブル席へ移動した。
「第八層は現役の探索者だと、ナンバーワンの桐澤 揚羽しか踏み入れたことのない階層だ。今回、君が挑戦するということで、覚悟してほしいことがある」
獅子山は第八層がどういうものかを続けて説明する。
「情報は極めて少ないが、第八層には必ず“ミッション”が与えられる。それをクリアするまでは、脱出が不可能だ」
「どういう内容なんですか?」
「不明だ。かつての挑戦者の間で、内容が異なる。そして桐澤 揚羽は話したがらないので、参考にならない」
「“あぁ? んなもん忘れちまったよ”とか言いそうですよね」
「そんな感じだ。桐澤 揚羽は独特のポリシーを持っていてな。“冒険者の道は、冒険者自身が切り開く”。情報の共有・馴れ合いは好まないんだ。今回の貞雄の事件についてなにか知っていそうだが、話そうとはしないな」
「俺が見つけてきますよ。きっと、ダンジョンに答えがあるでしょうから」
「悪いな。君に全てを背負わせてしまって」
「大丈夫ですよ。なんとかしてみせます」
青宮はそう言って、獅子山の元を離れダンジョンへ向かう。
「……やれやれ。現役で桐澤 揚羽しか踏み入っていないと聞いてもなお、向かうとはな。たしかにそれほどの自信に見合う実力だが……躊躇いがないってのは、桐澤 揚羽
の言うことは正解なのかもな」
才能のある冒険者はマトモじゃない。
故に獅子山は、自身の才能の限界を感じた。
桐澤 揚羽や青宮を、マトモじゃないと思えてしまうからだ。
「さて。だが、自分に出来ることはやるって決めたからな……お、来たか」
獅子山の元へやって来たのは、荒木であった。
「……こんにちは」
「よう。俺を頼るだなんて、信頼を取り戻せたのかな」
荒木はかつて、獅子山のギルドから離れた経歴を持つ。
それは荒木が、彼をリーダーとして頼りないと思ったからだ。
実際、獅子山には思うところがあった。
年齢を感じ、衰えるステータスとスキルに、目的と自信を見失ったからだ。
荒木にはそれを見破られたのだろうと考える。
(変われたのは、まあ、青宮くんに啓発されたからだろうな)
そんなことを思っていると、荒木が軽く頭を下げた。
「話を聞いてくれて、ありがとうございます。都合がいい話だというのはわかっていますが……今の獅子山さんに、鍛えてほしいと思ったんです」
「そうかい。目の付け所は、悪くないと思うぞ」
「そうですか」
「ああ。ちょっと前の俺なら、断っていたがな。会長業務の合間ぐらいでなら、付き合ってやるさ。ただし――」
獅子山は好戦的な笑みを浮かべた。
「目指すは第七層だ。厳しめにいくから、死ぬんじゃないぞ」




