バーサーク・コング
「おいおい。さっきのゴリラの親か?」
冗談を口にしつつ、舌打ちをする。
体にはまだ痺れが残っているのだ。万全とはいえない。
そこでこの連戦だ。
赤い毛の巨体が、青宮めがけて駆けてくる。
「ウホォォォォっ!!!」
空気を震動させる大きな咆哮。
新たなボス、バーサーク・コングの右腕に、黒い闇属性の魔力が発生する。
漆黒の右ストレートを、青宮めがけて放った。
青宮は素早く上空へ飛んで、それを回避。
ブオンッ! と重たい風切り音が地上で放たれた。
バーサーク・コングはそのまま連続パンチを撃つ。
青宮はベルセルクの炎を使い、なんとか避け続けた。
移動しながら、∞ウェポンに魔力を溜めていく。
「カオス・クレイブ!」
ずどんっ!! と、ダークブルーの炎と斧の一閃を、バーサーク・ゴリラの右腕めがけて放つ。
パンチを避けたすれ違いざまだ。
バーサーク・ゴリラは右腕が切り裂かれ、痛そうに腕を引っ込める。
瞬間――ちくり、と。
今度は、右足に痛みを感じ、細い針が刺された。
「っ、また――」
痛みの方へ視線を向けると、バーサーク・コングを小さくした、子供のようなサルが笑いながら草陰へ逃げて良く。
憎たらしい。
そう思いながらも、青宮の全身に電撃が走り、感覚が鈍っていった。
「くそ、めんどくせぇな」
「ウホオオオオオ!!!」
バーサーク・コングが左腕のストレートを放つ。
それも空中を飛び回り、間一髪のところで避ける。
体の麻痺のせいで、斧を上手く触れない。
(時間を稼げば――)
空中でポーションを使いつつ、バーサーク・コングの拳を避け続ける。
右腕は先ほどの一撃で使いものにならないのか、振るうのは左腕のみ。
それならば攻撃の間隔も短くなり、出所もわかるやすく避けやすい。
しかしそれでも、万全に動けないのは青宮も同じ。
時間にして数十秒の攻防。
だが、青宮にとってはひどく長い時間に感じた。
やがてポーションが効いて、体の痺れがとれていく。
左拳を回避した後、前へと飛び出した。
∞ウェポンを握り、スキルを放つ。
「――カオス・クレイブ!」
青い炎による一閃が、バーサーク・コングの胸を焼き、斬る。
縦にぶった切られた思い一撃は、バーサーク・コングの悲鳴を奏でた。
「ォ、オオオオォ……!」
バーサーク・コングは地面に背中から倒れる。
動かなくなった後、その体は消えて魔石となっていった。
『――青宮 翼のLVが44へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
「くそ、あのクソサルめ……」
地面へ着地した後、刺さった針を抜きながら、影山は毒づく。
木陰から例のサルが現れることは、なかった。




