第七層ボス
「……?」
警戒しながら前へと進むも、なにも起きない。
辺りは静まり返っていた。
「ボスフロアじゃないのか?」
意味ありげな空間なだけで、なにもない可能性が高い。
この辺りでも、事前情報がないことが牙をむく。
命のやり取りの場において、先がわからないというのは恐ろしいことだ。
ダンジョンブレイクでも経験したが、今まで事前情報ありだったが故に、大きなディスアドバンテージを感じる。
「っ、いてっ」
チクリ、と左手に痛みを感じた。
刺さっているのは小さな針。
全身に痺れが走り、体の感覚が鈍くなっていく。
「くそ、またこの手口かよ!」
しかし木陰には、ブロウガン・モンキーも姿はない。
なにが起きているのかがわからないものの、ここで立ち止ってスタンするのはまずいと判断。
ベルセルクの炎で空へ飛び、ポーションを使った。
それでも全身の痺れがすぐにとれず、鈍った感覚のまま∞ウェポンを握ることになる。
「ステルスか……?」
冒険者でも姿を消すスキルがある。
その類を使われているのかもしれない。
大抵、その手のスキルは気配や殺気は消せないはずだが……今回は、足音1つすら聞こえてこなかった。
炎で出来るだけ早く動き回りながら、地上へ着地。
そこで攻撃魔法を解き放った。
「――ウェーブ・ストライク!」
大きな波が、開けた平地に叩きつけられる。
瞬間、太い声が上がった。
「ウホゥ!?」
「あいつか」
波から現れたのは、全長2メートルほどのゴリラ――アサシン・コングであった。
どうやらこいつがボスのようである。
しかし青宮はまだ、体に痺れが残っていた。
先手を打ったのは、アサシン・コングの方だ。
動きの鈍る青宮に向けて素早く距離を詰め、右拳をふるう。
青宮は斧をかざしてそれを正面から受け止めるも、スタンで下がるパワー故に、わずかに押し負ける。
「うぐっ!?」
どすっ、ドスン!! と、連続で放たれるパンチとキック。
さばききれず、青宮のボディにも肉薄が入っていく。
拳は骨が軋み、蹴りで生々しい痣を増やしていった。
蓄積されていく体へのダメージ。
だが、時間の経過と共に、ポーションの効果によって痺れがとれていく。
そしてアサシン・コングの動きを見切った青宮は、カウンターで斧を一閃した。
「ウホゥ!?」
悲鳴を上げたアサシン・コングが、攻めから一転して後ろへ跳んで下がる。
胸には大きな傷が刻まれた。
睨み合う両者。
共にダメージは蓄積されている。
そして同時に前へと飛び出し――すれ違った。
鋭く、素早く振り下ろされた∞ウェポン。
その一閃はアサシン・コングの腹を裂き、致命傷となった。
ばたりとその場に倒れ、その体が魔石へと変わっていく。
『――青宮 翼のLVが43へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
青宮はふう、と息を吐いた。
「よりにもよって、初見殺しみたいなやつが情報不足とはな――」
ポーションを使い、傷を癒す。
しかしその瞬間、ごおおおおお! という音と共に、赤い魔法陣が現れた。
「っ!?」
青宮は慌てて武器を構える。
魔法陣から現れたのは――アサシン・コングと同じゴリラの外見をしたモンスター。
しかしその全長は、6メートルを超えていた。




