トップの実力
「あなたは――桐澤さん!? 帰国していたのですか!」
女性にしてナンバーワンという座を獲得しているからか、猪塚は敬意を抱いているようで、真っ先に声を上げる。
その声音は嬉しそうなものであったが、桐澤はそれを全く相手にしようとせず、ズガズガと会議室の中へ入り、青宮の座る席へと向かう。
「お前か? 青宮 翼ってのは」
「……さあ、どうだろうな――」
返事を待たずして、桐澤はアイテムボックスから180センチを超える大剣を取り出す。
目にも止まらぬ、圧倒的な速さでの振り下ろし。
強い身の危険を感じた青宮は、瞬時に∞ウェポンとベルセルクを発動。
ズドオオオオオンっ!!! という音と共に、∞ウェポンと大剣が衝突した。
その衝撃と風圧だけで、周囲の机や椅子が吹き飛ぶ。
ギルドマスター達はバランスを崩し、会議室の壁へ叩きつけられた。
まるで唐突にやってきた、竜巻のような災害である。
「っ! お前、いきなりなにを……!」
「いいねぇ、まずは合格点だ。オレはねむてー前戯なんかしねぇからよぉ。いきなり激しいから、覚悟しとけよぉ」
ギギギギギギギギ、と競り合うも、徐々に青宮が押し込まれていく。
桐澤は信じられないくらいのパワーであった。
攻撃力の高い青宮ですら、真っ向勝負で分が悪い。
「おいおい、どうしたぁ? あんまりガッカリさせんなよ。このくらいで果てちまうつもりかぁ?」
「黙れ……!」
ギルドマスター達は身動きがとれない。
目の前の強者と強者の戦いは、それほどまでに絶対的な“力”があった。
歴戦の彼らだからこそ、その異常な“質”を感じとることができる。
(こんなところで戦うわけには……!)
どうにか抑えられないかと、青宮が逡巡。
と、ここで獅子山が横から言葉を挟んだ。
「エース。頼むから、その剣をしまってくれないかい」
「あぁ? おめーが大将になったのか。まあ、所詮は茶番だし誰だろうと同じだが。ってことは、そろそろ時期か。くくくくっ」
「時期?」
「この様子じゃ、誰も辿り着いてねーってか? そういや、なんかお前ら面白そうなことを話し合っているじゃねーか」
桐澤が大剣を引く。
青宮は腕が痺れて、斧を降ろした。
「なにか知っていそうだな」
青宮の問いかけに、桐澤は肩をすくめた。
「知ってるんじゃねぇ。たどり着いたんだ。冒険者ってのは、テメーの力で謎を解き明かすもんだ。情報共有なんざ、ねむてーことはしないぜぇ?」
桐澤はにやり、と笑みを浮かべる。
「オレが求めてんのは、本能剥き出しのヤリ合いだ。全てを賭け、生を散らし、勝者と敗者を決める。理性ぶっ飛ぶヒリヒリした殺し合いこそが、最高のゲームってもんだろ?」
(イかれてるな……)
警戒する青宮に、桐澤はふんと鼻を鳴らす。
「なにスカしてんだ。テメーもオレと同類だろ? 見りゃわかる。匂うんだよ。朝から夜中まで、激しくヤリ合っている顔をしている。わかるだろ? ダンジョンでアガれる奴ってのはなぁ、イカれてる奴なんだよ。認めろよ。本当は、同類と会えてギンギンに興奮してんだろ?」
「死ね。お前みたいなイカれビッチと一緒にするな」
「はっ! 素直になれねーってか? まあ、いいさ。その内自覚が出んだろ」
桐澤は背中を向けた。
「テメーとの戦いは、後回しにしてやるよ。それまでせいぜい、興奮しながら待ってなぁ」




