彼に追いつくため
ぴぴぴぴ、と携帯のタイマーが朝の6時を告げた。
「うぅ……眠い……」
樹は弱音を吐きながらも、用意されたベッドから降りる。昨日は0時に寝ていた。
ガス、水道、電気と全てが揃っているので、最低限の生活はできる。
食料もコンビニの宅配で適当に買い揃え、冷蔵庫に入れていた。
『――調子はどうですか? 困ったことがあったら連絡をください。あなたをサポートします』
四之宮からそんなメッセージが、携帯に送られている。
正直、信頼はしていない。
だが、どういうわけか、チャンスを与えてくれているのはたしかだ。
利用しない手はない。
しかしもう一個のメッセージは、樹の胸を苦しませた。
『――なにかあったら、相談してくれ。本当になにもないなら、それでいいんだ』
青宮である。
また、他のスマイル・アドベンチャーメンバーからも、心配をかけているのか、メッセージが送られている。
罪悪感が胸にわだかまる。
樹はお礼を返信した後、シャワーを浴びて、服を着替え、適当に朝食をとった後に、樹はEXダンジョンへと潜る。
昨日と同じ、赤い壁と、赤い床が広がる部屋。
そして高レベルのボタンを押し、モンスター部屋へと入った。
部屋の中には、剣を持った黒いサルと弓を持った黒いサルがいる。
「キー! キぃー!」
「サモン――ヴァルキリア!」
杖を天へ掲げ、召喚魔法を発動。
小柄な銀鎧の少女が現れた。
ヴァルキリアは前へと素早く出て、スピードでサル達を翻弄し、ヘイトを集める。
やがて隙を見て、ヴァルキリアは横へ跳躍し下がった。
樹が攻撃魔法を発動させる。
「ライトニング・ストライク!」
「キィィぃィィ!?」
青白い稲妻が杖から放たれ、2体のサルを焼き殺す。
絶叫が室内に響き渡るが、弓を持ったサルが範囲から免れていた。
サルは矢を引いて、樹めがけて射撃。
反応するも間に合わず、右肩を射抜かれた。
矢尻が硬い骨にまで刺さり、割れるような激痛が走る。
「あぐっ!?」
悶える樹。ヴァルキリアはすぐさまフォローに入り、弓のサルを剣で一閃。
3体のモンスターの撃破に成功するも、樹は負傷した。
膝をついた後、アイテムボックスからポーションを取り出し、痛みと傷口を和らげながら、矢を引き抜く。
激しい痛みによって全身から汗が出て、呼吸が乱れた。
「はぁ、はぁ……」
ヴァルキリアが心配そうに側による。
しかし回復で落ち着くと、樹は立ち上がった。
「大丈夫。もういかないと。時間がない」
樹は内心で笑った。
(なんだか、青宮くんみたい。危ないかもしれない。すごく、怒られるかも。でも、あなたの側に立ちたいから……)
嘘をついてスマイル・アドベンチャーを離れてでも、強くなりたい。
樹は移動し、再び高レベルのボタンを押す。
開かれる扉。樹はモンスターのいる部屋の中へと、ためらいなく入っていった。
2日目にして、疲労はある。
だが、立ち止まってはいられなかった。
ここでいつものペースになったら、EXダンジョンの意味がない。
「よーし! いっぱい狩るぞ! お~~~!!!」
樹は自身鼓舞するように、明るく声を上げた。




