ブロウガン・モンキー
斧を持つ巨大なゴーレムを、同時に2体相手する。
圧倒的なパワーと耐久力を持つモンスター。
しかしそれでも、今の青宮の敵ではなかった。
「――カオス・クレイブ!」
ダークブルーの炎によって、ゴーレムを撃退していく。
『――青宮 翼のLVが43へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
ダンジョンブレイク時に習得した技だが、今後主力になるであろう強力な攻撃力だ。
それに加え、MPを大量消費さえすれば広範囲にもなる。
そして自身のコピーと戦った時には、炎の新しい使い方も覚えた。
これによって機動力の上昇と、行動範囲が広まり、戦い方に幅が増えた。
なによりも、自分自身でもどこか思っていた――∞ウェポン頼りなんじゃないかというコンプレックスにも、向き合うことが出来た。
ブラック企業はクソだが、社畜魂で色んな試練を乗り越えてきたのも事実。
鍛え抜かれたという意味では、あの会社に恩があるなと、青宮は考えた。
「っ、いてっ」
気配も音もなく、突然――首筋辺りに、虫さされのような鋭い痛みが走った。
痛みを与えられた方向へ視線を向けると、ニホンザルを真っ赤にしたような見た目のデザインのサルが、茶色の吹き矢をもって、木陰から覗き込んでいた。
「きー、きききききっ!!!」
猿はニヤニヤ笑い、煽るようにお尻ぺんぺんをして、走り去っていく。
追いかけようとしたが――全身に強い痺れが駆け巡り、上手くうごけない。
ゾッとした。青宮は慌ててアイテムボックスからあらゆる状態異常へ効果のある高級ポーションを取り出し、体へふっかける。
時間をかけて徐々に痺れがとれるも……かなり危ない場面であった。
「気配を消すスキルでもあるのか、全く気がつけなかった……」
周りにモンスターがいない状態だったから良かったものの、あれがゴーレムとの戦闘であった場合は危険だ。
「あんなのがいるのか。くそ、厄介だな」
対策を考えるも、常により周りに気を配る……という方法しか思いつかない。
「どうするか……」
青宮は立ち止まり、思考をめぐらせた。
周りに聳え立つ木々。
高く立つ植物。
視界は良好とはいえない環境だ。
青宮は攻撃魔法を詠唱する。
「――フレイム・ストーム!」
熱風を周辺へ向けて放つ。
辺りの木々を燃やし、植物に火がつく。
周囲は山火事のごとく、あっという間に燃えていった。
もっともダンジョンの木と植物なので、現実のものとは異なり、一定の範囲で燃え移らなくなるという性質があるが……事前に辺りを燃やしておけば、少なくとも近くには、あのブロウガン・モンキーは寄らないだろう。
「これでいくか」
青宮は対策をそうして組み立て、前へと進んだ。




