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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第五章「最強の冒険者」

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新会長はつらいよ

 テレビのニュースにて、獅子山が取り上げられていた。

 新たな体制を作っていくにあたって、公の場で様々な発表をしている。

 しかし世論の風は、極めて厳しかった。

 SNSでは#獅子山やめろ がトレンド入りしている。

 主に議題として上がっているのが、軍事へのテコ入れだ。

 記者へ向けて、獅子山はこんな意見と今後の動きを発信している。


『今回のダンジョンブレイクでは、93名という戦死者を出しました。みなさんはこの数字を、どう受け止めていますか』


『私は多いと感じています。さらにこの命は、守れる命でもありました。自衛隊の使っている対モンスター兵器のどれもが、コストパフォーマンスを重視した、生産性重視のものなのです』


『もちろん、コストへの配慮は大事です。ですが、例えば魔力の障壁を生み出す防御兵器などには、明確な問題があります。ワイバーンの攻撃に耐えられず、目の前で勇敢な兵士たちが焼き殺されるのを、この目で何度も見てきました』


『自衛隊を、兵士達の命を守るために、軍事力強化を政府に要求します。ダンジョン産の材料を使った新世代兵器の開発・生産により力を入れるべきです』


 しかしこの方針が、ネットで炎上している。


『ふざけんなこのオッサン』


『四之宮様と変われ』


『獅子山は戦争を望んでいる! 戦争反対! 戦争反対!』


『私達の子供は戦争の道具じゃない』


『自衛隊の命のため(戦争をするため)』


『日本は平和第一の国なんだよ。戦争したいなら他所へいけ』


『ダンジョンブレイクで人が死にまくったんだから、強化は当たり前じゃね?』


『こういうやつらってすぐ第三次世界大戦ガーって叫ぶよな』


『まあ、獅子山新会長がいきなり強く行動しているから、困惑は招くよな』


 ようするに、軍事力強化の促進=第三次世界大戦の幕開けという風に結び付けられ、世論に火がついたのだ。

 さらに魔石ショック、エネルギー問題についての発言も大きな物議をかもしている。


『一度便利になった環境を手放すのは、非常に苦しいとは思います。ですが、国民のみなさんには今、苦しまなければいけない時期がやってきたと思っています。減りゆく冒険者に対して、魔石の供給が追いつきません。このままでは全てが崩壊します』


『私としては、魔石で全てのインフラを支えるという今の体勢を、壊すべきだと思っています。具体的に言うと、電気です。私は冒険者を守る会長として、原子力発電の再稼働を要求します』


 魔石の恩恵により、現在の日本は原子力発電がゼロとなっている。

 ちなみにこれは、“四之宮改革”によって実現した社会だ。

 当然、当時の四之宮と内閣は絶賛させられた。

 しかし結局、これは無茶な話だったのだ。魔石の供給量は追いつかなくなり、近い内に日本社会が大混乱に陥る“魔石ショック”が迫っている。

 必然的に、四之宮改革とは逆のことをしなくてはいけないのが、現状なのだ。

 だが、一度ゼロになった原子力発電の再稼働は、当然、国民の理解を得られない。

 SNSはこちらの問題でも炎上だ。


『なんとかしろよ』


『ただの怠慢では?』


『冒険者業界がブラックとか、関係ねーよ。魔石とってこい』


『四之宮様はなんとかしてたじゃねーか。なんだこのオッサン』


『今まで隠蔽してたツケを払おうって話じゃないのか?』


『獅子山新会長、ボロクソ言われてるな。でも、全部正論だと思うんだけど』


『なんか日本、バカばっかりになってきたなぁ』


『四之宮の人気が高すぎるんだろうな』


『一度手にした良い環境を手放すのはね……みんな受け入れられないんだよ』


『四之宮はいわば、ユートピアを作っていたからな』


『偽りの楽園は崩壊。ここからはその代償を払う時代、かぁ……』


 青宮はテレビを消した。


「……驚いたな。獅子山さん、すごいアグレッシブに動いている」


 正しいことを成すために動いているが、現状の正しいことというのは、全部国民が受け入れたくないことだ。

 四之宮のような、人気取りのための動きを全くしない。

 正直、青宮は獅子山の性格的に、保守的なムーブをする人だと思っていたが……ダンジョンブレイクでの激闘を経て、なにか心情に変化が生まれたのかもしれない。


「さて。今日も出勤といきますか」


 世の中は世知辛いなと思いつつ、青宮はマンションの部屋を出た。

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