3つの部屋
「……行きます。私は、強くなりたいですから」
樹は決意を固めた表情で、真っ直ぐに四之宮へ向けてそう返事をした。
四之宮は笑顔を浮かべる。
「素晴らしいです! そう言ってくれると思っていました」
樹はダンジョンのワープポイントへ触れた。
システム音が告げてくる。
『――EXダンジョンの第一層へ転送します』
樹は了承し、その姿を消した。
四之宮はそうして樹がいなくなった後に、ぽつりとつぶやく。
「……まあ、本音を言いますと。あなたにはそこまで、期待していませんけどね。保険というやつでしょうか」
☆
赤い壁と、赤い床が広がる部屋。
近未来の宇宙船の中のような、SFテイストのダンジョンであった。
「本当にダンジョンだ……」
振り返ると、すぐにワープポイントがあって、そこから元の世界へ帰ることができる。
半信半疑であったが、四之宮は本当にダンジョンを紹介したようだ。
(……強くなれるダンジョンかな)
そんなことを思いながら、樹は部屋の中を探索する。
左、真ん中、右、それぞれに開閉式の扉が上がり、その横に赤いボタンがある。
ボタンに触れると、システム音が警告を発した。
『――この扉の奥には、LV20以上のモンスターがいます』
左、右の赤いボタンに触れると別のメッセージが浮かぶ。
『――この扉の奥には、LV10以上のモンスターがいます』
『――この扉の奥には、LV30以上のモンスターがいます』
なるほど、と樹はうなずく。
「それぞれの部屋がモンスターハウスに繋がっていて、LVも教えてくれる。一番弱いところと、普通なところ……そして、一番強いところ」
樹は右の部屋へ向かった。
「なら、強いところ一択」
赤いボタンを押すと、プシュウウウ、というガスが抜けるような音と共に扉が開いた。
「「「ガウぅぅぅぅ!!!」」」
体高70センチほどの銀色の狼3体が、唸り声を上げた。
通常のダンジョンと変わらない、獰猛なモンスターだ。経験値になるだろう。
そして部屋の奥には、先ほどのものと同じように、3つの扉があって、赤いボタンがある。
(移動時間もなしに、倒したらまた3つの扉からモンスターハウスを選べる。他の冒険者への配慮や競争もなし……へえ)
樹はにやりと笑みを浮かべた。
それは普段の可愛らしい彼女からは想像もつかない――獰猛なものであった。
「これで強くなれる。青宮くんの側に立てる。力になれる」
アイテムボックスから杖を取り出し、両手ぎゅっと握りしめた。
「最高。絶対にやってやる!」
樹は強くなる決意を固め、前へと飛び出した。




