EXダンジョン
青宮達に旅行へ行くと偽り、樹は四ノ宮元会長と会う決意を固めた。
指定された駅を降りる。時刻は13時だ。
改札口に駅員がいないくらい、閑散とした田舎である。
そして駅前の道路にて、やたらと目立つ黒塗りの大きな高級車が停まっていた。
近づくと、窓が開いて四之宮が中から微笑んでいる。
「ごきげんよう、樹 小春さん」
「……どうも」
樹は警戒しながらも、車に乗る。
中には四之宮、運転手以外には誰も乗っていない。
車は静かに発車した。
「どうして、私にダンジョンの紹介を?」
樹は問う。四之宮の誘いは、公表されていないダンジョンを好きに使っていい、というものであった。
なぜ、そんなものがあるのか。
なぜ、それを樹に提供するのか。
疑問はつきなかった。
「わたくしの目的はいつだって、同じです。冒険者業界の発達。強き冒険者の育成。あなたの力が必要だと、判断したまでです」
「……」
「それでも、わたくしを信用できませんか?」
樹は肯定も否定もしなかったが、答えは明白だ。
強くなれる――そのためなら、なんでもするつもり。
だが、四ノ宮が全く信用ならないのが現状だ。
正直、今この瞬間も身の危険を感じていて怖い。
しかし青宮のところへ辿り着くには、合法的な手段では無理なのだ。
四ノ宮が強くなる近道を用意してくれるのならば、それにすがりたい。
「ならば、見るのが早いでしょう……着きました。この平屋です」
家がまばらに建築されているところ、その内の1つである平屋の前に車が停まる。
こじんまりとした、ごく普通の平屋だ。
車を2人で降りると、四之宮が告げる。
「この家の中に、EXダンジョンへのワープポイントがあります」
「っ!?」
「ここをお好きに使っていいですよ。必要なものがあれば、言ってください。すぐに用意させますので」
四之宮が家の中へと入る。樹も恐る恐る、中へと続いた。
玄関を入って、右に曲がると――家具の置かれていない8畳ほどの和室の真ん中に、次元の黒い歪みがあった。
ワープポイント。
間違いなく、ダンジョンへの入口だ。
「嘘……どうして、こんなところに。ほ、報告とか、いいんですか?」
「あなたは今、強くなるために手段を選びたくない状況なのでは?」
「っ!?」
「社会的な制裁が加えられないことは、このわたくしが保証します。なぜならこのEXダンジョンは、長く持ちませんからね。誰にも気づかれず、消える運命です」
「どうして、そんなことがわかるんですか?」
「ふふふ。そんなこともわからないんですね」
樹が息を飲む。
存外に、自分が弱いのだと煽られていた。
「わたくしの正体を知っているのは、この日本では2人です。1人が、荒木 貞雄。もう1人はおそらく、桐澤 揚羽です」
「……おそらく?」
「荒木 貞雄に関しては、わたくしから教えたので。桐澤 揚羽――日本のナンバー1に関しては、ダンジョンの“真理”に辿り着いているので、おそらくわかっているのだろうという予測です」
「ダンジョンの、真理……」
ごくり、と唾を飲む。
そんなものがあるのかという驚き。
そしてそこへ辿り着いた人間がいるという、驚きもあった。
「さて。とはいえ、引き返すなら今ですよ。どうなさいますか? 樹 小春さん」
四之宮は樹を試すように、問いかけた。




