働き方改革。姿を消した樹。
スマイル・アドベンチャーの事務所。
樹へ何度目かの電話をしたが、応答はなかった。
「樹さん、本当に旅行なんでしょうか……」
携帯を切りつつ、姫咲の言葉に青宮は首を横に振った。
「……さあな。わからない」
ダンジョンブレイクの後、樹は旅行とするから休暇をとるとメッセージで告げてきて、姿を消してしまった。
姫咲が住んでいるマンションまで行ったが、不在。
青宮も電話をするが、応答はもらえていない。
ただ、メッセージには答えていて「本当に遠くへ行っているだけだから、大丈夫!」と返信していた。
これ以上踏み込むなという、無言の圧力を感じる。
こんなことは初めてなので、青宮としては心配であった。
「でも、これ以上追うのはやめよう。詮索してほしくなさそうだから」
「そうですね……」
青宮の言葉に、姫咲はこくりとうなずく。
ダンジョンに休みなく通っていたのに、突然の旅行宣言。
なにかあるような気がしてならないが、メッセージには返信しているので、生存は確認できている。
とりあえず今は、それでよしとすることにした。
「じゃあ、俺はダンジョンへ行ってくるよ」
立ち上がると、姫咲は出口まで見送ってくれた。
「気をつけてくださいね、青宮さん」
「ああ。後は頼んだ」
書類作業を姫咲に任せ、青宮はこの日もダンジョンへ潜った。
☆
「――査定金額、15万2000円となりました。ご確認ください」
「ありがとうございます」
夜22時。査定書を受け取った青宮は、協会を出た。
「……改革のスピードが速いな」
冒険者協会の会長が獅子山となった今、様々な改革が手早く行われた。
真っ先にメスを入れられたのが、冒険者への待遇強化だ。
四之宮時代は分与がかなり狂っていたようで、魔石の買い取り価格が上がった。
第六層を攻略し終えた青宮は、1日で15万2000円。
第六層とはいえ、1個3000円前後の相場となっていた。以前は1800前後だったため、中々の昇給ぶりだ。
しかしその分、見直されたところもある。
例のギルドマスター手当てだ。
四か月に一度の支給に減り、金額も一律40万となった。つまり年間、120万だ。
データによると、40代サラリーマンのボーナス支給額の平均ならしい。
しかしダンジョンブレイクにほぼ強制出勤であることを考えると、釣り合っているのかは人によるところだろう。
「まあ、冒険者にもっと回してもらえれば、それでいいけどな」
少なくとも、以前の青宮は露骨なえこひいきによってギルドマスター手当を貰いすぎていた。それは間違いない。
あの時の1000万は、まだ手をつけていない。




