幕章2「契約」
「くっ……まさかこの私が、タスクを失敗するとは」
貞雄は冒険者専用の留置場に入れられた後、イラだった様子で室内をウロウロする。
ダンジョンブレイクの騒動により、後継者候補から犯罪者へと転落。
全ては冒険者協会を手に入れ、四之宮の力によって、日本を再びアップデートするためであったが、それも無駄に終わった。
後継者は獅子山となることが、正式に発表されたのだ。
それは貞雄にとって、耐えられないことであった。
「このままでは、この国はスローダウンし、海外に置いていかれる……なんとか、なんとかしなければ。私が、この国をリファインしなくては……!」
そんな時であった。
ズドオオオオオン! と、留置所の壁が強力な爆発によって粉々になった。
その衝撃で、貞雄が柵に叩きつけられる。
「がはっ!? な、なんだ……?」
貞雄が破壊された壁を見る。
そこに佇むのは、少女の姿であった。
150後半の身長。肩の辺りまで伸びた髪は、右側が黒で左側が紫色だ。肌は白く、つり上がった瞳とあどけない顔立ちながらも、見る者を恐れさせる異端な雰囲気をまとっている。
「ハロー、○ー大柴さんみたいな人♪」
貞雄が息を飲んだ。
「あ、あなたは……! 支柱が、なぜこんなところへ!?」
「支柱? ああ、アンタ勝手に崇拝してるんだっけ。それで家庭崩壊してるんだから、人間って不思議~」
警報が鳴り響く。少女は貞雄に告げた。
「アンタさ、助かりたい?」
「っ!? 逃がしてくれるのですか!」
「うん。その代わり、りりかのお願いを1つ聞いてくれる?」
「こ、交換条件ですか。わかりました。アグリーです」
少女――りりかは、にやりと笑った。
「そう? じゃあ――死ね」
りりかが右拳を突き出す。
貞雄も戦士だ。不意打ちだが、瞬時に殺気を察知。
闇獣モードを発動し、両腕を交差しガードの体制をとった。
だが、圧倒的なパワーをもつ拳は両腕を貫き、胸も貫いた。
がはっ、と貞雄は血を吐く。
「バカ、な……!」
「ザーコ☆ お前なんか、もう見放されてるんだって。殺してもいいよって、四之宮様が言ったら、あたしが来たわけ。ドンマイ☆」
「私は、イノベーションを……! あき、らめない!」
「がんばれ~! りりか、応援してあげる☆」
そう言って、貞雄を思いっきり右腕一本で突き飛ばす。
今度は柵を捻じ曲げながら、貞雄は叩きつけられた。
「りりか、ザコを殺すの大好き☆ でも、勝手な殺しは怒られちゃうから、もう逃げるね~」
りりかは通路にある監視カメラへ向かって、血に濡れた両手を振った。
「じゃあね、みんな~。早く強くなってよね! 人類みんな、魔王を倒す勇者候補なんだから!」
☆
19時。帰り道で樹は1人、ため息をついた。
「はぁ……あんまり上達しないなぁ……」
ダンジョンブレイクから3日。
それから休みをとることなく、樹はダンジョンと家を往復する日々を送っていた。
求めるのは、青宮と並べる強さ。
だけど樹には、到底その力はない。
ましてや、青宮と同等となるとかなりのハードルだ。現状、彼の力は低く見積もってもギルドマスター内上位。
今やトップと評しても、間違いではないだろう。
下位のギルドマスターにすら及ばない樹が、そこへ辿り着くには真っ当な手段では不可能である。
「――力が、ほしいですか?」
「っ!?」
聞き覚えある女性の声に、樹は驚いて振り返る。
「私と契約してください。そうすれば、あなた専用のEXダンジョンを用意してあげます」
笑みを浮かべながら――四之宮 京子は、告げた。




