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キングマンティス

 青宮とキングマンティスは同時に動き出す。両者の間合いはすぐさま縮まっていった。最初の一手を打ったのは、リーチの長いキングマンティスだ。右腕の長い鎌を、斜めに勢いよく振り下ろしていく。空気を切り裂く、鋭い刃だ。ステータス補正のない生身ならば、バターのごとくバラバラにされるだろう。

 左横へ素早く飛びながら、鎌の一閃を回避。だが、すぐさま右腕を引き、入れ替わるように左腕の鎌が、横へ一振りされる。

 青宮は前へ飛ぶようにジャンプし、これを回避。距離を詰めたところで、キングマンティスの胴体へ向けて斧を振り下ろしたが、直前でバックステップされ、斧は空を切る。

 互いの動きに大差はない。

 拮抗する攻防。

 だが、先手をとったのはキングマンティスであった。素早く距離を詰めて放った、右腕の一閃が青宮の腕をかすめたのだ。


「ぐっ……!」


 青宮もカウンターとして斧を振るうも、鎌に受け止められる。がきゃん! と硬い音が辺りに響き渡った。

 腕の動きがそのまま武器と一体化している、キングマンティスの攻撃と防御は、柔軟で素早かった。

 手数が向こうの方が上回る。

 さらに。


「いてっ! くそ、もう毒が回ってきたか!」


 体の中が、ズキズキと沸騰するように痛む。

 そう。このキングマンティスの鎌には毒が含まれているのだ。

 持久戦に持ち込まれれば、このまま毒ダメージで青宮は負ける。


「もう少し動きを見てから使いたかったけど、しょうがない――ベルセルク!」


 切り札をここで使う。斧が強い青の光を放った。

 被ダメが大きくなるというリスクが怖いが、これを使わないと突破力に欠けるのも事実。

 キングマンティスの振り下ろされる右腕の鎌。だが、それに合わせて振られた斧の一閃が、鎌をがきんっ! と力強く弾いた。


「っ!」


 キングマンティスがこれまでと違う力に、戸惑い、警戒する。

 そのことが、余計に攻めづらくさせた。

 青宮は攻撃に転じたが、キングマンティスは先ほどよりも一歩下がったポジションを維持し、攻めをさばくことに専念したのだ。

 姑息なことに、毒を与えていることをちゃんと認知しているのだろう。

 しかも青宮は回復役がいない状態。

 キングマンティスの立ち回りは正解だ。

 リスクを負って無理に攻めずとも、守りに専念すれば勝手に青宮はたおれる。狙いが良い。


(どこかで決めないと――)


 毒で痛む体で、両方の鎌の動きを見定める。

 そして――タイミングを見計らって、両足に力をこめた。

 高い俊敏ステータスによって、爆発的な速度で一気に前へ。

 キングマンティスは後ろへよけようとしたが、間に合わない。

 ベルセルクの効果によって、スピードは青宮が上回ったようだ。


「そこだ!!!」


 斧を振り下ろす。キングマンティスの胴体に、深い切れ込みが入り、そのまま返す動きで斧を振り上げ、大きな体へ衝撃を与えた。

 ずどん、とキングマンティスはお腹を空へ向けひっくり返る。

 緑色の足がジタバタした後、やがて動かなくなった。


「よし……って、いてて。早く解毒しないと」


 アイテムボックスから、対策として購入していたキュアポーションを使う。1個1500円もする。わりに合わない話で、キングマンティスの魔石は1000円がレートだという。つまり赤字だ。アイテムしか回復手段がない場合は、毒をまくモンスターはあまり相手にしたくないものであった。


「レベルは上がらないか……まあいい。道中の敵は無視で、さっさと次のフロアボスへ移動しよう」


 レッドシープはレベル6,スライムはレベル3。

 どちらも今の青宮にとっては格下だ。ソロであっても、経験値効率は悪い。

 といって同種のフロアボスは、1日に1回しか挑めないという制約がある。パーティーを組んでも同じで、1日以内にそのフロアボスを倒した冒険者がいると、フロアボスは消えてしまうという徹底ぶりである。

 なので、ボスの周回狩りというのも出来ない。

 ならばザコ敵が強くなる次のフロアは成長の近道だ。青宮はベルセルクの効果を維持したまま、素早くダンジョン内を駆けていった。

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