決戦
巨大ナメクジが青宮めがけて光線を放った。
獅子山の時と違い余裕がないのか、複数の光線をこちらへ向けてくる。
「街をめちゃくちゃにしやがって。この大怪獣」
空中でベルセルクの炎を噴射し、高速移動して光線を回避。
強力な魔法攻撃が、休みなく一直線に襲いかかってきた。
「――フレイム・ストーム!」
大きな熱風の渦が、巨大ナメクジに襲いかかる。
液体の体を溶かすほどの熱さと威力に怯み、光線が一時的に止んだ。
青宮はその隙をついて、間合いを一気に詰める。
そして∞ウェポンへ魔力を送り、ダークブルーの炎を宿した。
「一気に決めさせてもらうぞ」
カオス・クレイブを発動し、巨大ナメクジを一閃。
ヌメヌメした体の一部を斬り飛ばし、ダークブルーの炎が断面をさらに焼いた。
一か所に止まらないようにしながら、動きつつ斧をもう一振り。
巨大ナメクジの体を着実に削り、大ダメージを蓄積させていった。
しかし3回目の振り上げをしようとした瞬間――まばゆい光が放たれた。
巨大ナメクジの体の前で、一瞬にして展開される魔法陣。そこから光線が、至近距離で放たれる。
回避不可能のタイミングと、距離だ。
「っ、やべ――」
咄嗟に炎をまとう∞ウェポンを振り、ガードするも大爆発が発生する。
ふわり、と内臓がせり上がるような、強い浮遊感。
その勢いは凄まじく、青宮の体を悠々と1キロはふっ飛ばしていった。
「……」
巨大ナメクジは体を再生しながら、のそのそと進んでいく。
青宮は全身が痛み、頭から血を流しながら、立ち上がった。
「今のは効いたな……!」
視界が揺れ、足が震える。
あと少しガードのタイミングが遅れていたら、もっと悲惨なことになっていただろう。
だが、ダメージはすでに十分であった。
痛みがそれほどではないのが、かえってダメな証拠なのかもしれない。
ごふ、と口から大量の血を吐いた。
「がはっ、ぐっ!? っ、まだだ、限界を、超えろ……!」
いつもの社畜魂を口にする。
だが、呼吸を整えた後――青宮は前へと出た。
そして∞ウェポンへ魔力を送る。
これまでにないほどの、大量のものを。
「カオス・クレイブの消費MPは、自分が使おうと思った分だけ消費される。そしてその消費量が多ければ多いほど、カオス・クレイブの効果規模はデカくなる。どうしてもバカみたいな質量になるから振りは大きくなるし、動きも悪くなるから、威力が上がるわけじゃないから最大量を使う場面ってのは、中々ないんだが――」
目の前の巨大ナメクジは再生能力と、強力な光線による火力はある。
だが、その体は大きく、動きは非常に遅い。
まさに今回獲得したスキル――カオス・クレイブの出番であった。
最大出力。
己のMPを、全て注ぎ込む。
「まあ今のところはざっと――ここまでやれる」
ズドオオオオオンっ! と。
巨大ナメクジへ向かう青宮が上へ掲げる∞ウェポンから、ダークブルーの炎によるタワーが出来た。
それは全長50メートルの巨大ナメクジにすら匹敵するほど、圧倒的な大きさ。
それを青宮は、両腕で持ち上げ操る。
「……」
巨大ナメクジくるりと振り返り、光線を放った。
渾身の一撃が来ると、察知したのだろう。
これまでの中で、一番太い光線を複数叩きこんでくる。
今まで見たこともない、圧倒的な破壊力。
街を1つ吹き飛ばすであろう、巨大ミサイルのような一撃だ。
もちろん恐怖はある。しかしだからこそ――高揚感もあった。
心の中で、確信があるのだ。積み上げてきた経験が、叩き上げたステータスが、磨いた技が、このバケモノによる圧倒的な力の前に、対抗出来るのだと。
青宮はにやりと笑い――超巨大なダークブルーの炎を、上から下へ振り下ろす。
「これが俺の、全力だ! いっけええええええええええ!!!」
火山の噴火のごとく、凄まじい爆音が目の前で弾けた。
光線と炎がぶつかり合う。
「っ、おおおおおおおお!」
強力な抵抗。光線も複数集まっている。1つ1つが上級魔法級の威力だ。
それでも青宮は高い攻撃力によるパワーで、∞ウェポンを振り下ろす。
光線は呑み込まれ、破壊され、巨大ナメクジの体全体を炎が覆う。
ゴゴゴゴゴゴゴ! と、炎のタワーはその怪獣を包み込み、焼き消していく。
天へ向かって発射される噴水のように、炎の塔が大規模に形成。
圧倒的質量の炎が、巨大ナメクジの再生すらも焼いていった。
青宮にとってそれは長い、長い時間に感じた。
やがて青い炎が晴れたそこには――巨大ナメクジの姿は、なかった。
修正されることもなく、激戦によって出来上がった、超巨大クレーターの数々が、残っている。
辺りはまるで、巨大隕石が複数落ちて来たかのように、ボコボコだ。
「っ、やった、か……」
MPをありったけ注ぎ込んだ青宮は、その場で倒れる。
全身の力が抜け、意識も遠のいていった。
しかし戦場はこれで、完全ある落ち着きを見せる。
敵勢力なし。モンスターの魔力反応も、ダンジョンブレイクも消滅している。
戦いは、冒険者サイドの勝利となった。
『――青宮 翼のLVが40へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』
『――青宮 翼のLVが41へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』




