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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第四章「後継者争い」

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風神

 風魔法で自身の体を飛ばし、猛スピードで巨大ナメクジへと向かっていく。


(いやいや。本当は若いのに任せたかったけどなぁ)


 しかしその若い人間というのは、青宮 翼に集約される。

 彼1人に任せるわけにはいかなかった。

 自分の力を見せる必要がある。

 だが――。


(このバケモノを、今の俺でどうにかできるのかね)


 見込みが薄いまま突っ込んでいく。

 獅子山のLVは驚愕の91だ。

 日本国内で、第2位の数字。しかしそのステータスは、その数値のわりには低めのものであった。


 獅子山 志郎 LV91


 HP 5005

 MP 1200

 攻撃 1213

 防御 1283

 魔力 1219

 精神 1277

 俊敏 1208


 年々減少していく数値。

 いざ目に見える形で衰えを突きつけられるのは、精神的にくるものがあった。

 巨大ナメクジの周囲に、複数の魔法陣が浮かび上がる。

 まばゆい光が生まれた瞬間――獅子山は素早く左へ移動して回避。

 攻撃は獅子山だけではないようで、光線はランダムの方角に放たれ、街を破壊していく。

 削れるビル。家。マンション――光線に触れた部分だけ、爆発音と共にごっそりと消し飛ばされていった。


「クソ。もう未曾有の大災害だな」


 空を飛んでボロボロになった街並みを見ながら、舌打ちをする。

 これ以上距離は詰められないと判断。

 獅子山は2対の剣を構え、その先端を巨大ナメクジへ向けた。


「――ヂェミナイ・ヴォルテクス!!!」


 台風のような突風が、2対の剣から巻き起こる。

 鋭い斬撃すらも含まれる、鋭利な風圧が巨大ナメクジの体を穿とうとした。

 えぐれていく液体性の体。だが、巨大ナメクジは触覚を動かし、光線を放った。


「っ!」


 間一髪のタイミングで横へ飛ぶ。

 ギギギギギギ、と嫌な音共に左足に光線がかする。

 たったそれだけで焼けるような痛みに襲われ、歯を食いしばった。

 慌てて足が繋がっているかを確認。

 火傷はしているかもしれないが、幸いにも足は元の形のままだ。


「やっぱ、“アレ”を使うか」


 獅子山は体の震えを感じながら――覚悟を固め、二対の剣の刃をクロスさせた状態で、首筋に当てる。


「スキル発動――“風神”」


 ゴオオオオオオオ!!! と、獅子山の周囲に突風が巻き起こり、彼の姿が急速に変化した。

 腰の辺りまで伸びた、緑色に変色した髪。

 エメラルドのように輝く、重厚な金属の鎧。

 その姿は歴戦を潜り抜けた、戦士のようであった。


「うっ、ぐぅぅ……!」


 瞬間、全身へ締め付けられるような激痛が走る。

 さらに左目の視界が急速に悪くなり、ボヤけて光を失っていく。


 風神 EX

 発動者に風属性を付与し、全ステータスを50%上昇。

 あらゆるダメージを10%カットする。


 風神は全盛期の獅子山を支えた強スキルだ。本来ならば、さらにここへ“自動HP回復”能力も追加されていた。

 しかしその能力は削除され、むしろ使用すれば体に大きなダメージを付与する。

 強力なスキルに耐えられるほど、今の獅子山の体は強くないのだ。

 不相応なスキルを無理やり酷使した状態。それ故に、体に大きな普段がかかる。


「……」


 巨大ナメクジが再び光線を向けてくる。

 放たれる、必殺の一撃。あらゆるものを破壊しつくした、高魔力の攻撃。

 獅子山はそれに対して、真っ向から挑んでいった。


「――ヂェミナイ・ヴォルテクス!!!」


 世界をかき乱すほどの轟音と共に、2対の竜巻が発生する。

 竜巻は光線すらも飲み込んで、巨大ナメクジを穿った。

 ズゴゴゴゴゴ! と地面を大きく揺らしながら、液体性の体を削り取る。

 50メートル越えの巨大の半分が、竜巻によってえぐり消えた。

 しかし――。


「……」


 ズブブブブブブブっ! と濁った音と共に、巨大ナメクジが消し飛んだ体が元に戻っていく。

 獅子山はスキル“風神”が強制解除された上、身にまとう風魔法すらも消え、力なく落下していった。


「っ、体が……」


 強烈な重力を感じながら、一直線に地面へ向かっていく。

 しかし魔力が尽き、激痛で動かぬ体ではどうしようもない。

 死を覚悟した瞬間、その体は空飛ぶドラゴンによって回収された。ホセが右腕で、獅子山を抱える。


「っ!? ホセか……?」


「シシヤマ。アナタ、スゴイ。ワタシ、マチガッテイタ」


 ホセの前には、青宮が斧を手にじっと巨大ナメクジを見ていた。


「それじゃ、ホセさん。獅子山さんを頼みましたよ」


「ワカッタ」


 獅子山が顔を上げた。


「青宮……すまないな」


「いえ。ナメクジのやつ、体が明らかに小さくなっている。獅子山のおかげで、結構弱っていそうだ。あとはなんとかします」


「ああ……うぐっ」


 体が痛み、獅子山は苦しそうに喘いだ。

 その視界は左目が失明し、見えなくなっている。

 青宮は立ち上がって、ドラゴンから飛び降りた。


「ベルセルク――起動」


 宣言と共に、青宮の体に青い炎がオーラのように湧き出てくる。

 巨大ナメクジは彼を警戒するように、触覚を向けてきた。


「さあ、勝負だ。元社畜、人類を救ってやるよ」


 青宮は冗談半分にそう言って、落下しながら∞ウェポンを構えた。

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