彼は立ち上がる
ダンジョンブレイクの外で待機していた部隊が、巨大ナメクジを観測次第、輸送発射機で弾道ミサイルを発射した。
「撃て、撃てー!」
ダンジョン産の材料で作られたミサイルは、モンスターに対しても強大な力を発揮する兵器だ。
「……」
ナメクジの目の前に、紫色の魔力が集まる。
瞬間――世界が、光った。
紫色の光線がレーザービームのごとく放たれ、ミサイル全てに襲いかかる。
ミサイルは空中で全て、ほぼ同タイミングで大爆発した。
「「「は……???」」」
あまりに規格外な破壊力に、戦場の士気が一気に低下する。
さらに……ナメクジの触覚が、紫色に光る。
真っ直ぐに光線が放たれ、10キロ以上離れている輸送発射機を木っ端みじんに破壊した。
光線の軌道上にあった高層ビルや、マンションも跡形もなく消えている。
絶望が戦場を駆けめぐった。
「無理だ……」
誰かがそんなことを呟いた。
「こんなの、勝てるわけがない」
「バケモノだ……」
そして自衛隊の隊員の1人が、冒険者へ向けて叫んだ。
「なあ、お前達なら――倒せるんじゃないのか!?」
震えた声で、すがるようにそう言い放つ。
「こんなこと言うの、すごく悔しいし、情けないけどさ!? だけど冒険者なら、ああいうバケモノと戦ったことがあるやつが、いるんじゃないのか!」
しかし冒険者サイドが黙り込む。
ここにきて、冒険者の質の荒さが出た。
他国と比べ出遅れている、というナンバー1の評価は間違っていなかったのだ。
突出した人間がいない。圧倒的な力を持った人材が出来上がっていない。
だが――1人の男が立ち上がる。
「ま、俺がいくしかねーよなぁ。やれやれ、だが」
ナンバー2と呼ばれた男、獅子山 志郎であった。
彼はアイテムボックスから取り出した、1つでウン千万は超えるポーションを使い、完治している。
巨大ナメクジが放つ魔力は強力で、みんなはまともな精神を保つのもやっとだ。
だが、獅子山は違う。
毅然と、真っ直ぐに立って敵を見据えている。
しかし――乾は声を上げた。
「……でも。あなたは、震えていますよ」
トリニティ・ワイバーンへ立ち向かった時もそうであった。
獅子山は肩をすくめる。
「そりゃあ、怖いさ。若い時は勢いがあったけど、年をとった。本当は行きたかないさ。だが、他にいない。仕方ないだろう」
青宮が立ち上がって前へ出ようとするが、獅子山はそれを制した。
「青宮。ここは俺に、任せてくれないか。君に行かせて全てを解決してしまうと、冒険者協会の立つ瀬がない」
「……いけるのか。今のあなたに」
獅子山はうーん、とナメクジを見上げる。
「まあ、ナメクジ一匹に滅ぼされたなんて、シャレにならないからね。なんとかしてみせるよ」
冗談みたいなことを言っているが、余裕がないのは明らかであった。
ナンバー1の桐澤 揚羽と違い、自信がない。
それほどまでに、年齢による衰えを感じているのだろう。
「……ムボウダ。アンナバケモノ、タオセナイ」
ホセをも弱気にそんなことを言う。
しかしそれでも――獅子山は迷わない。
「なら、ホセはそこで見ていてくれ。俺を頼りないと散々言ったんだ。ここで結果を残したら、さすがに認めてくれるだろ?」
「……ノコセレバ、ミトメル」
「頼んだぞ。君の影響力も、中々だからね」
獅子山は2対の一本、右手に持った剣をかざした。
「冒険者協会ナンバー2。獅子山 志郎。でっかいナメクジさんを、いっちょ駆除してくるよ」




