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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第四章「後継者争い」

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孵化

(え……レベルが上がった? おいおい、死んでないよな)


 そんなことを思いつつも、他人を手当するほどの余裕はない。

 7連戦によるボス戦。そしてギルドマスターとの戦闘。

 疲労困憊だ。今日一日が、異常に長く感じる。


「青宮くん!」


「……樹」


 スマイル・アドベンチャーの面々が、駆けつけてくる。

 自衛隊や他のギルドメンバーも、こちらへ向かっていた。


「みんな無事で良かった」


「青宮くんも……すぐに手当てするね」


 樹の回復魔法を受ける。少しずつ傷と、毒が治癒されていった。

 現場の混乱を自衛隊の隊員達へ説明すると、貞雄は拘束された状態で治療を受ける形となった。

 もう1人、ボスフロアを戦い抜いた猪塚も帰還しており、手当を受けている。


「荒木さんもここにいたんだね」


 乾の言葉に、青宮はうなずく。


「あの感じは、兄のところへ向かっていたんだろうな」


「獅子山さんを刺した上、青宮くんまで殺そうだなんて……どうしてなんだろう」


「後半の方は、正気ではない感じだったな」


 猪塚も他のポイントから無事に脱出したようで、手当てを受けている。

 ダンジョンブレイクによって発生した結界が、徐々に晴れていった。

 エリア内のモンスター達は倒され、エリアボスも撃破されている。

 今回の戦いは終息へ向かっていた。

 しかし問題はこれだけではない。後継者だ。今回大きな貢献をしたのは、誰なのかという話になってくる。


(結果的に、エリアボスに挑んだのは俺と猪塚さんだけだしな……このままじゃ、少しまずいかもしれない)


 そんなことを考えていた時であった。

 ズゴゴゴゴゴ! と、大きな地震が発生する。

 そして1人の隊員が、大声を上げた。


「お、おい! なんだよ、あれは!」


 隊員が指をさした先には、大きな次元の裂け目が発生していた。

 紫色の、混沌とした魔力だ。

 そこから、まるで生み出されるようにグロテスクな黒い卵が湧き出てくる。

 ドクン、ドクンと心臓のように脈打ちながら、全長50メートルはある物が地上へ降りた。


「なに、あれ……?」


 樹が驚愕の声を上げる。青宮も言葉を失った。

 ダンジョンブレイクは終わったはず。

 それなのに……正体不明の“なにか”が出てきた。

 と、ここで戻って来たホセが声を上げる。


「マニアワナカッタ」


「なんだと?」


 青宮が振り返って言うと、ホセは首を横に振った。


「アレガ、ダンジョンブレイクノ、ボス。ジカンギレノ、ペナルティ」


「……あの速度で? 冗談だろ!」


 青宮と猪塚はたった2人という条件で、データなしのボス7連戦で連勝した時点でかなりの偉業だ。

 さらに言えば、モタついた戦いはなかった。

 しいて言うなら、自分のコピーとの戦いに苦戦したくらいだ。


「見ろ! なにか出てくるぞ!」


 ビキビキビキビキ! という音と共に、卵に亀裂が走る。

 中から現れたのは――どす黒い、ナメクジであった。

 ヌメヌメとした、液体っぽい体。その体を這わせて、地上のビルや電柱をなぎ倒しながら、前へとのっそり進んでいく。

 全長は約50メートル越え。

 正真正銘の、バケモノだ。

 そしてそのバケモノが降り立った瞬間――その場にいた全員が、膝をついた。


「「「うわあああああああああ!!!」」」


 訓練を受けている自衛隊の隊員の、何人かがパニックとなり、その場から逃げるように走り出した。

 一歩でも遠く、あのバケモノから遠ざかろうとするかのようだ。


「あ、青宮くん」


「……さすがにヤバそうだな、あれは」


 腕にしがみついてくる樹の肩を抱きながら、青宮は巨大ナメクジを見る。

 こうして視界に入れるだけで感じ取れる。

 目の前のバケモノは、人類をも滅ぼせるほどの強大な力をもっている、ということに。

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