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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第四章「後継者争い」

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決着

 貞雄が変わったのは見た目とまとう雰囲気だけではなかった。

 周囲に漂うダガーも、大剣へと変わっている。


「私のLVは70。いくら青宮 翼でも、低レベル帯で勝つのは不可能です」


「そう言われて、少なくとも2人は倒したけどな」


「轟 悪魔ですか。中々の人材でしたが、コアコンピタンスに欠けていました。ですが、私には強力な力がある!」


 空気を切り裂きながら、大剣が宙を舞い青宮へ突っ込んでくる。


(実際、今まで戦ってきた小物ギルドマスターとは格が違うか)


 後ろへ下がりつつ、カオス・クレイブで大剣を叩き落とす。

 だがその全てを落とすことが出来ず、2本の大剣が青宮の右肩と左足を斬った。


「ぐっ……」


 青い炎を噴射し、勢いよく右へ移動。

 大剣は貞雄の元へと戻り、再び13本を形成した。

 斬られた部分から血を流しつつ、青宮はため息をつく。


(何度も対処したところで、同じことを繰り返すだけか)


 さらに異変は続く。

 右足と左足の感覚が、痺れて動かしにくくなっているのだ。

 その様子に、貞雄は笑い声を上げる。


「私のサーティーン・ダークダガーの味はどうですか?」


「良い感じに体が痺れるな」


「私が操るのは闇属性であるのと同時に、毒属性でもあります。精神のステータスが低ければ、その毒はあなたの体を蝕んでいくでしょう」


(これでも結構上がったんだけどな。それでもダメなのか)


 強力な毒付与なのだろう。ボス戦でも通用することが多いことが推測される。

 やはりこれまで戦ってきたギルドマスターとは格が違う。

 再び襲いかかる、猛毒の剣。

 青宮はフルスピードで空を駆ける。だが、剣は追尾ミサイルのごとくしつこくホーミングした。

 その様子を見ながら、貞雄は声を上げた。


「アーツファイトでは見せなかった技に、動き……底の知れぬ人ですね。今でも、四之宮派になる意志はないのですか?」


「ブラック上司に尻尾を振るのはもう、前の仕事で飽きたんだよ」


「全く……頭が硬い人ですね。四之宮様に気に入られているというのに、もったいない」


 青宮は左手をかざし、範囲魔法を唱えた。


「――ウェーブ・ストライク!」


 ズドオオオオオ! と、大きな波が発生し、貞雄を呑み込もうとする。

 しかし彼は余裕を浮かべた表情を浮かべ、5本の大剣を呼び戻す。

 集まった大剣は六角形の盾となり、貞雄の体をガードした。


「上級魔法程度、私には届きませんよ」


 浮かんだ盾は、ウェーブ・ストライクが発生させる大容量の水圧をもってしても、ビクともしない。

 そして青宮の体に流れる、毒の痛みと痺れが徐々に強くなっていく。

 まるで体内に直接、電源を流し込んでいるかのような痛みだ。

 視界がぼやけ、体の力が抜けていく。


(っ、まだだ!)


 痛みを気持ちで乗り越え、俊敏をフルに振り絞り、音を置き去りにして猛スピードで駆ける。

 その速さは防御に気をとられた貞雄の意識を、十分にかき乱した。


「見失った……? 一体、どこに」


 貞雄は強く警戒している。

 勝てないと挑発はしているが、アーツファイトでの高い攻撃力は目撃している。

 あのパワーを押し通されたら、自分は敗北する。そういう計算はしていた。青宮を甘く見ているわけではない。

 辺りの気配に神経を尖らせ――やがて、捉えた。


「そこです!」


 盾を背後へと回し、青宮の一振りを受け止める。

 ズドンっ! という大きな衝撃を全て盾は殺した。

 しかし青宮は斧を振り上げた後、魔力を練り上げる。ダークブルーの炎が、宝石から斧へと湧き上がっていく。

 高い魔力による、圧倒的な破壊力。

 その気配を、炎を見ただけで貞雄は感じ取った。

 彼は13本の太刀を全て、盾へと注ぐ。

 盾は巨大な岩のようなサイズになり、貞雄を守った。


「サーティーン・ダークダガーの真骨頂は、この守りです! 先ほど見たあなたのカオス・クレイブ。かなり強力な力ですが、十分に耐えられる範囲内です!」


「なら、耐えてみろよ!」


 ガガガガガガガガガ! と、2つの魔力がぶつかり合い、大爆発が起きる。

 その爆発の威力は凄まじく、結界を砕き、崩していく。

 2人はさらに力をこめ、裂帛れっぱくの声を上げる。


「「おおおおおおおおおおお!!!」」


 大ダメージを負った荒木と獅子山も、両腕で顔をおおった。

 道路が荒れ、爆風で木々が煽られ、両目を開けることも出来ない。まるで目の前で、大型のミサイルが落ちてきたかのようだ。


「兄さん、リーダー……!」


 しばらくして、爆風が止むと――立っていたのは、青宮であった。

 そして吹き飛ばされた貞雄は、血を吐きながら、膝を落とす。


「がはっ! なぜ……先ほどよりも、威力が上がっている……まだ、底を見せていないというのですか!?」


「……かなり近くに、瀕死の2人がいたしな。配慮する必要があったんだよ。地味に結界が邪魔だったな」


「っ!?」


 遠まわしにまだ本気の一撃を見せていないと宣言する青宮に、貞雄は息を飲む。


「……認めない! 気が変わりました。あなたを倒すこと……それが、マストだ! 殺します!」


「なっ、お前!」


 青宮は思わず再び身構える。結界も消え、ドローンもこちらに駆けるだろう。それなのに、貞雄はもう見境がない。

 13の太刀が、貞雄の尻尾へと吸収され――闇の魔力が、さらに強くなった。


「ぐっ、ああああああああああ!」


 貞雄は叫びながら、傷を修復し――尻尾を大きくし、立ち上がる。

 身にまとう魔人のような気配に、青宮は∞ウェポンを握る力を強くした。


「この状態になれば、さらに俊敏が13%上昇します。ここからは――真っ向勝負といきます!」


 スピードアップした貞雄の姿が消える。

 同時に青宮の元へ距離を止め、黒い剣を振り下ろした。

 がぎぃん! がぎぃん! がぎぃん!

 何度も交わされる壮絶な白兵戦。金属音が辺りに木霊し、荒れ果てた地面の上で、2人の戦士が本気で武器を振るう。


「これが、お前のやりたいことなのかよ!」


「あなたの存在は、神を殺してしまうんですよ! ここで息の根を止めなければ、イノベーションは途絶える!」


「いつもわけわかんないが、さらにわけわかんないことを言いやがるな!」


 青宮が斧を振るう。

 貞雄も剣を大きく振り下ろした。

 両者がすれ違い――ゴポォ!!! と、大量の血を胸から流した。

 斬られ、倒れたのは――貞雄であった。


「四之宮様……私は……」


 ぐふっ、と血を吐き、意識を無くした。

 青宮は毒の回った体で、膝をつく。


『――青宮 翼のLVが39へ上がりました。HP+82 MP+27 攻撃+26 防御+19 魔力+26 精神+19 俊敏+18』

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