兄弟対決
「ぐっ……くそ、どけ!」
獅子山が右腕で剣を振るう。
貞雄は剣を引いて大きくバックステップして回避しつつ、距離をとった。
「がはっ……!」
胸から、口から血を大量に吐き出し、獅子山は膝をつく。
ステータス補正によるタフな生命力があるとはいえ、元は人間の体。
急所を貫かれては、さすがに命の危機へ直面する。
「お前は……そこまでして、後継者に……!」
「四之宮様は世界をブラッシュアップする。それがわからない人に、協会は渡しませんよ」
「なにを、バカな……」
瞬間――貞雄は、剣を前に振るってなにかをガードした。
きぃん、きぃん! と、彼の近くにはないのに、金属音はする。そして貞雄は姿の見えない何者かと、剣を交えていた。
だが、貞雄は表情を変えない。
むしろ退屈そうですらあった。
「あなたごときではなにもできませんよ。出来損ない」
貞雄は右足でキックして、姿の見えない戦士を蹴り上げる。
強力な力で肉薄された男は、獅子山の前に転がっていく。
「っ、荒木か!」
「……」
荒木は無言で短剣を構える。
対峙する兄弟。貞雄は肩をすくめた。
「勝てると思っているのかい?」
「……兄さんを止めにきた。どうせ、こんなことをするだろうと思った」
「全く。四之宮様へアグリ―なしとは、理解に苦しむ。そんなことだから、父さんと母さんにも見捨てられるんだ」
「四之宮は神なんかじゃない」
「神だよ。少なくとも、私と父さんと母さんにとっては」
「いつまで洗脳されている……」
「いつになったら、出来損ないはイノベーションするんだい?」
話は平行線。
荒木は前へと出た。
「力づくでも止める」
荒木の姿が増えていく。
分身が1、2――と、やがて合計6人となる。
素早い動きで貞雄を取り囲んでいく。
トリッキーかつ素早い行動だ。
しかし貞雄はそれを、鼻で笑った。
「その忍者ごっこがコア・コンピタンスかい? バレバレのステルスといい、パッとしない戦い方だ」
荒木が素早い俊敏で距離を詰める。
貞雄は動かない。彼の周囲へ13の短剣がミサイルのように、素早く発射された。
短剣の刃が分身を、貫く。
分身はその場で苦悶の表情をして、消えていった。
貞雄はにやりと笑みを浮かべる。
「サーティーン・ダークダガー。これが私のコア・コンピタンスだ。13の短剣が宙を舞い、戦いをソリューションする」
だが――異変が起きる。
6人すべてがダークダガーに貫かれ、消えていったのだ。
つまり、6人すべてが分身。
本体はスキル“ステルス”で姿を消し、貞雄の背後をとっていた。
荒木はダガーを一閃。
しかしその刃は、一本の宙を舞うダークダガーに受け止められた。
「っ!?」
「まあ今のは、少しだけヒヤリハットだったね」
貞雄が黒い剣を振り上げる。
荒木は咄嗟に後ろへ飛んで斬りを浅くしたが、胸を切り裂かれる形となった。
「っ、まだだ……!」
下がりながら、荒木は左手で光の魔力によって形成したダガーを投擲。
ダガーは貞雄に向って、弾丸のごとく飛び出していくが――飛んでいるダークダガーが盾をかたどるように集まり、投擲をガードした。
バチバチバチっ!!! という雷鳴のような音と共に、光のダガーが消えていく。
大量の血を地面へまき散らしながら、荒木は膝をついた。
「兄さん……!」
「そこで見ているといい。私が頂点に立つイノベーションの瞬間を」
貞雄が獅子山へと近づく。
獅子山はアイテムボックスを操作した。
(……仕方ない。アレを使うしかないかね)
そう思った瞬間である。
ゴオオオオオオオ! と、轟音が結界の中で鳴り響き、ワープポイントが唐突に現れた。
縦の線による、次元の歪み、
その場にいる者全員が、息を飲んだ。
「この気配、まさか……!」
貞雄が顔をゆがめる。
次元の歪みから現れたのは――青い斧を握りしめた、青宮 翼であった。
にやり笑みを浮かべ、皮肉気に意識高い系で言い返す。
「後継者争いからエグジットしてもらうぞ、荒木 貞雄」




