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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第四章「後継者争い」

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兄弟対決

「ぐっ……くそ、どけ!」


 獅子山が右腕で剣を振るう。

 貞雄は剣を引いて大きくバックステップして回避しつつ、距離をとった。


「がはっ……!」


 胸から、口から血を大量に吐き出し、獅子山は膝をつく。

 ステータス補正によるタフな生命力があるとはいえ、元は人間の体。

 急所を貫かれては、さすがに命の危機へ直面する。


「お前は……そこまでして、後継者に……!」


「四之宮様は世界をブラッシュアップする。それがわからない人に、協会は渡しませんよ」


「なにを、バカな……」


 瞬間――貞雄は、剣を前に振るってなにかをガードした。

 きぃん、きぃん! と、彼の近くにはないのに、金属音はする。そして貞雄は姿の見えない何者かと、剣を交えていた。

 だが、貞雄は表情を変えない。

 むしろ退屈そうですらあった。


「あなたごときではなにもできませんよ。出来損ない」


 貞雄は右足でキックして、姿の見えない戦士を蹴り上げる。

 強力な力で肉薄された男は、獅子山の前に転がっていく。


「っ、荒木か!」


「……」


 荒木は無言で短剣を構える。

 対峙する兄弟。貞雄は肩をすくめた。


「勝てると思っているのかい?」


「……兄さんを止めにきた。どうせ、こんなことをするだろうと思った」


「全く。四之宮様へアグリ―なしとは、理解に苦しむ。そんなことだから、父さんと母さんにも見捨てられるんだ」


「四之宮は神なんかじゃない」


「神だよ。少なくとも、私と父さんと母さんにとっては」


「いつまで洗脳されている……」


「いつになったら、出来損ないはイノベーションするんだい?」


 話は平行線。

 荒木は前へと出た。


「力づくでも止める」


 荒木の姿が増えていく。

 分身が1、2――と、やがて合計6人となる。

 素早い動きで貞雄を取り囲んでいく。

 トリッキーかつ素早い行動だ。

 しかし貞雄はそれを、鼻で笑った。


「その忍者ごっこがコア・コンピタンスかい? バレバレのステルスといい、パッとしない戦い方だ」


 荒木が素早い俊敏で距離を詰める。

 貞雄は動かない。彼の周囲へ13の短剣がミサイルのように、素早く発射された。

 短剣の刃が分身を、貫く。

 分身はその場で苦悶の表情をして、消えていった。

 貞雄はにやりと笑みを浮かべる。


「サーティーン・ダークダガー。これが私のコア・コンピタンスだ。13の短剣が宙を舞い、戦いをソリューションする」


 だが――異変が起きる。

 6人すべてがダークダガーに貫かれ、消えていったのだ。

 つまり、6人すべてが分身。

 本体はスキル“ステルス”で姿を消し、貞雄の背後をとっていた。

 荒木はダガーを一閃。

 しかしその刃は、一本の宙を舞うダークダガーに受け止められた。


「っ!?」


「まあ今のは、少しだけヒヤリハットだったね」


 貞雄が黒い剣を振り上げる。

 荒木は咄嗟に後ろへ飛んで斬りを浅くしたが、胸を切り裂かれる形となった。


「っ、まだだ……!」


 下がりながら、荒木は左手で光の魔力によって形成したダガーを投擲。

 ダガーは貞雄に向って、弾丸のごとく飛び出していくが――飛んでいるダークダガーが盾をかたどるように集まり、投擲をガードした。

 バチバチバチっ!!! という雷鳴のような音と共に、光のダガーが消えていく。

 大量の血を地面へまき散らしながら、荒木は膝をついた。


「兄さん……!」


「そこで見ているといい。私が頂点に立つイノベーションの瞬間を」


 貞雄が獅子山へと近づく。

 獅子山はアイテムボックスを操作した。


(……仕方ない。アレを使うしかないかね)


 そう思った瞬間である。

 ゴオオオオオオオ! と、轟音が結界の中で鳴り響き、ワープポイントが唐突に現れた。

 縦の線による、次元の歪み、

 その場にいる者全員が、息を飲んだ。


「この気配、まさか……!」


 貞雄が顔をゆがめる。

 次元の歪みから現れたのは――青い斧を握りしめた、青宮 翼であった。

 にやり笑みを浮かべ、皮肉気に意識高い系で言い返す。


「後継者争いからエグジットしてもらうぞ、荒木 貞雄」

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