後継者としてコミットするために
(さて、どうしたものか……ん?)
青宮が思考を巡らせる中、猪塚の右手がピクリと動いた。
瞬間――工藤の背後に白い杖が現れる。
その杖が宙を勢いよく舞った後、工※の後頭部へ先端が突き刺さった。
「がはっ!?」
怯んだところで猪塚が拘束から抜け出す。
そして空を飛ぶ杖がブーメランのように来たのを、華麗にキャッチ。
そのまま杖を一閃し、※藤は倒れた。
「※※、※※※※……」
最後になにかを言っていたが、ノイズがひどく言葉がわからない。
工※は地面に倒れ、その姿を消していった。
モンスターと同じ消滅の仕方……やはり、本人ではないようだ。
「意識が戻ったんですね」
青宮の問いかけに、猪塚はこくりと頷く。
「っ、ええ……なんとか。強さを見せるどころか、あなたの足手まといになっていたようですね。反省いたします」
「お。後継者は諦めるってことですか」
「それとこれは話が別です」
(まあ、そりゃそうか)
フロアボス撃破により、次のワープポイントが現れる。
残るは後、3体だ。
「ここから先は、共闘していきましょう」
「それは賛成だが……いけるんですか?」
「ダメージは残っていますが。サポートくらいはやります」
「了解。それなら、頼みましたよ」
2人はワープポイントへ触れ、次のボスフロアへ進んだ。
★
「さて、と……みんなと合流しないとな」
はあはあ、と膝をついて呼吸を整えつつ、震える足で立ち上がる。
「けど、ちと休ませくれ……」
獅子山はふう、とため息をつく。
久々のボス戦。そして強敵の相手は全身に響いた。
ヒリついた戦いの雰囲気も、久しぶりだ。
「若い頃は、こういう戦いに飢えていたんだがね」
昔は激しい戦いに気分が高揚していた。
だが、今はそんな感性がない。
むしろ逆で、戦いは楽をしたいというのが本音だ。
「……ん?」
ぞわり、と。鳥肌が立った。
その瞬間。ゴオオオオオオオ! という大きな音と共に、辺りに黒い障壁が一気に展開された。
「っ!? 結界スキルか……!」
獅子山は慌てて剣を構える。
だが、警戒が遅かった。トリニティ・ワイバーン撃破の後に、油断をしすぎたのだ。
ずぶり、と。
獅子山の胸を黒い剣が貫いた。
「っ、がはっ!? この剣に、黒い結界……荒木 貞雄か!」
振り返らずとも、自分を刺した人間の名を当てる。
黒い結界はドーム状の広がり、2人を空から覆い隠している。結界内にドローンは飛んでいなかった。
計画的な犯行。
最初から、この結界を使って獅子山を殺害するつもりだったのだ。
貞雄は澄ました表情を浮かべ、冷徹に告げた。
「あなたごときでは、協会トップのプロセスはこなせない。後継者は、私がコミットします」




