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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第四章「後継者争い」

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衰えを嘆くナンバー2

 トリニティ・ワイバーンは強者――獅子山を待つように、空を飛んでじっとしていた。

 待っていた獲物である獅子山が来た瞬間に、咆哮を上げる。


「ギャオオォォォォォ!!!」


 殺意のある大音量は体の芯にまで響く。

 対して獅子山は、重いため息をついた。


「やれやれ……やる気満々か。俺は、そうでもないんだけどね。青宮もホセもいないから、仕方なく来たわけ」


 フェミ旅団の猪塚、ネクスト・イノベーションの貞雄の2人の名前を上げないのは、彼にとっては順当な評価であった。

 今の日本で、トリニティ・ワイバーンの相手をできるのは3人。

 青宮、ホセ、そして獅子山だ。


(あーあ。やりたくねぇな)


 が、獅子山はモチベーションが上がらない。

 というか、これが本来の獅子山だ。

 ギルドマスター会議でナンバー2として胸を張っているのは、無理をしている。

 彼の素は、例えるならば丸くなったごく普通の中年男。

 出来ることなら、目の前のトリニティ・ワイバーンも、他の奴でどうにかしてほしいとすら、思っている。

 そんな士気の低い獅子山へ向けて――トリニティ・ワイバーンがブレスを放つ。

 三つの首から放たれる、強力な炎の雨が降り注いだ。


「おいおい、街を燃やすなよ」


 獅子山が二刀流の剣を振るう。

 瞬間――ゴオオオオオオオ! と、竜巻のような音が起こったのと同時に、大規模な炎魔法が吹き飛んだ。

 トリニティ・ワイバーンが、驚愕したように声を上げる。


「ホセと同じ、空中戦でやるとするか」


 獅子山の周囲に突風が吹き荒れる。

 そしてその勢いによって、獅子山の体がふわりと浮き上がり、一瞬にしてトリニティ・ワイバーンと同じ位置まで飛んだ。


「ギャアァァァァァ!!!」


 トリニティ・ワイバーンが咆哮と共に、接近してくる。

 巨大な体がこちらへやってくるのは、飛行機が突っ込んでくるかのような迫力があった。

 それでも獅子山は怯まず、前へと出る。

 強力な突風が、獅子山を突き動かした。


「久々に、本気出させてもらうぞ」


 空中で目にも止まらぬ速さで飛ぶ獅子山は、すれ違いざまに何度もトリニティ・ワイバーンを斬る。

 硬い鱗に何度も、何度も刃で裂いていく。

 トリニティ・ワイバーンは空中で尻尾を振ったり、頭を振ったりしたが、どれも獅子山を捉えることはなかった。

 一見すると、獅子山の動きにトリニティ・ワイバーンが対応できていない。

 だが、本人は決定打がないと分析。


(俺、こんなに非力だったか)


 獅子山は己の衰えを改めて感じた。

 というか彼は、冒険者としての活動自体に、もう本気を出していない。

 最後にボス戦に挑んだのは、10年も昔の話だ。

 久々の強敵との戦いで、若い頃から――否。40代と比べても、さらなる劣化を痛感した。


(動きも遅い。魔力も、こんなに質が悪くなったか……もうオジサンかねぇ)


 トリニティ・ワイバーンの、右足の蹴りが獅子山に命中。

 どすんっ! というトラックに跳ねられたかのような衝撃と共に、鋭い爪が、腹に食い込んだ。


「ぐふっ!? くっ、そ……! こんな鈍い攻撃に……!」


 さらに怯んだところへ、トリニティ・ワイバーンの真ん中の頭による、強力な頭突きが獅子山の背中を打つ。

 ばごおおおおんっ! と、コンクリートを砕いて、獅子山が道路にたたきつけられた。


「っ、いってぇな……中年には優しくしろっての」


 しかしトリニティ・ワイバーンもダメージは蓄積していて、全身傷だらけであった。

 咆哮を上げながら、まっすぐに突っ込んでくる。

 獅子山は二対の剣へ魔力を込めた。

 辺りの空気が乱れ、髪をふわりと揺らす。


「その命、狩らせてもらうぞ――ヂェミナイ・ヴォルテクス!!!」


 2つの剣を前へ真っ直ぐ構えた。

 瞬間――トリニティ・ワイバーンをも呑み込む、2つの大規模な渦が巻き起こす。

 その渦は飛翔するトリニティ・ワイバーンを吹き飛ばし、裂き、全身をズタズタにした。

 どごおおおおおんっ!!! とビルに叩きつけられたトリニティ・ワイバーンは、その場でぐったりと力を無くし――消えていく。

 獅子山は足と手が震え、その場に膝をついた。


「っ、あぁ……体に響くなぁ。全力ってのは」


 獅子山は自身の衰えを嘆き、ため息をついた。

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