ボスフロアに閉じ込められる
猪塚へポーションを使い、処置をした。
意識はないが、呼吸はしている。
「まあステータス補正はあるし、無事だろ」
青宮は猪塚を左腕で樽のように抱え、現れた歪みへ手をふれる。
そしてシステム音が、メッセージを告げた。
『――次のボスフロアへ進みますか?』
「なに?」
本来ならばこれで外へ戻れるはず。
それなのに、ワープポイントが導こうとするのは次のボスフロア。
考える。ダンジョンブレイクで発生するボスフロアは7つと言っていた。
つまりこの後、6連戦もしないと出られないということだ。
「おいおい、ふざけんなよ!」
しかし何度ワープポイントに触れても、答えは変わらない。
ボスフロアを移動しても、無限ループみたいな感じで同じところへ辿り着く。広い場所ではないのだろう。
どうやら進むしか、選択肢はないようだ。
外は戦場だ。早く樹達のところへ戻りたいが……まんまとここへ閉じ込められてしまった。
「くそ。つーか、指定人数2人で7連戦って、鬼畜難易度だろ」
悪態をつきつつ、ワープポイントへ触れる。
世界が光に包まれた後――次のボスフロアへ。
広がる景色は変わらなかった。黒い床。紫色の空。
だが、敵の姿は見えない。そう思った次の瞬間――殺意を感じ、ゾッとした。青宮は慌てて前へと大きく飛ぶ。
彼がいなくなったところへ、紫色の長槍を持ったディアボロスが突きを放っていた。
槍は空を斬る形となったが……ディアボロスはすぐさま、青宮めがけて翼をはためかせ全身。
「ちっ。正々堂々やらない、不意打ちパターンか。悪いが、ちょっとそこで寝ててくれ」
猪塚を黒い床の上へ寝かす。
ここからディアボロスと同等か、あるいはそれ以上のボスと連戦となると気が滅入る。ピンチと言ってもいいだろう。
だが、やるしかないと考えた。
青宮は∞ウェポンを持ち、ディアボロスめがけて駆けていく。
「お前らはアポなしで仕事ぶっこんで来たんだ。好き勝手に暴れてやるからな!」
★
「撃て、撃てー!」
自衛隊がダンジョンで採掘できる金属によって生成した、対モンスター用のRPGを放つ。
スマイル・アドベンチャー、フェミ旅団、移民冒険団で狼達を抑える。
そうして攻撃態勢を整えながら、サイクロプスへ向けてRPGを休みなく怒涛の勢いで打ち込んだ。
ズドンっ! ドスンっ! ゴゴゴゴゴ! と、重々しい爆発音が世界を揺らした。サイクロプスも打ち込まれるミサイルの雨に、怯んで徐々に後ろへ下がっていく。
1発、2発――10発、20発。
そこまで打ち込んでもまだ、倒れない。
「あれを一撃で倒していた青宮 翼は、何者なんだ……」
隊員の誰かが、そんなことを呟いた。
やがて、30発を撃ち込まれた瞬間。
サイクロプスが倒れ、その体が消滅していった。
おおおおお、と歓声が沸く。
「っ、待って、空を見て!」
樹の叫びに、空に注意がいく。
そこに飛んでいたのは、またしてもワイバーンであった。今度は6体が飛んでいる。
「またあのモンスター……!」
白井が苦しげに呟く。
実際、今のメンバーでワイバーンを相手するのは戦力不足だ。
といって、撤退できるほどの火力もない。
全滅――そんな最悪な言葉が脳裏をよぎった時、嵐のような風の上級魔法が、ワイバーン達を全て切り裂いていった。
ビュン! ザシュっ! とワイバーンの体が、翼が裂かれ、次々と地面へ落下していく。
そして背後から、新たな冒険者達と自衛隊が加勢していった。
その一番前に現れた姿に――乾が声を上げた。
「獅子山さん!」
「よく戦ったね」
周囲に荒々しい風を巻き起こしながら歩く獅子山は、両手にそれぞれ、緑色に輝く剣を持っていた。
「もう年だから、前線に立つのはもう性分じゃないんだが……他にいないんだから、ま、仕方ない」
獅子山はすこしめんどうそうに――だが、その体から強力な魔力を放ちながら、宣言した。
「久々に、頑張ってみるか」




