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彼女に捨てられた社畜、覚醒スキル《∞ウェポン》でダンジョン無双  作者: 音有五角
第四章「後継者争い」

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ディアボロス

 辺りに広がるのは、闇であった。空は紫色だが、太陽のような光が地上へ差し込んでいる。

 床と役割を果たすのは、混沌とした黒色の雲。

 どこまでも不気味で、気分がざわつく光景であった。


「……あれか」


「そのようですね」


 ゆっくりとした所作で、腰を落として床に座っていた悪魔の見た目をしたモンスター……“ディアボロス”が立ち上がる。

 前回のダンジョンブレイクでも現れた、闇魔法を扱う悪魔だ。

 黒と紫が入り混じる、金属のように硬い皮膚。

 それが管のように複雑に重なり、人型の四肢を形成している。

 全長は約5メートルだ。

 立ち上がったディアボロスは、大きな二対の翼を広げる。

 ごおおおおお、と辺りに突風が吹きすさんだ。


「私に、全てを任せてください」


 猪塚が前へと出る。


「なに?」


「男は下がっていてください」


「こんな時にツイフェ……フェミニスト活動かよ」


「ええ。今後、業界の中心になるであろうあなたに……私の、力を見せたいのです」


 青宮は思わず、舌打ちをする。

 そんなくだらないことをしている時間はないのだが、猪塚はこの戦いを後継者争いとしてがっつり利用しようとしている。

 それに影響力のあるギルドなのには、変わりない。

 一旦、要求通り任せてみることにした。


「頼りないと思ったら、すぐに邪魔するぞ」


「わかりました」


「それにあいつ。かなり強いぞ」


 青宮は全身に鳥肌が立つのを感じていた。

 第六層のボス、ウルトラエレファンよりも確実に強い。


「――」


 ディアボロスが無言で右手を真上へ上げる。

 一瞬にして、魔力に寄って形成された紫色のボールが肥大化していく。

 バリバリバリ、という奇妙な音を立てながら膨張し、4メートルほどのサイズとなった。

 ディアボロスはそのまま闇をぶん、と投擲した。

 瞬きしている間に、こちらへ到達するほどのスピードだ。

 青宮は左に、猪塚は右へ同時に駆けて、それを回避。

 闇は着弾と共に爆発し、ズズズズズズッ、と床にぼっこりとドーム状のへこみを発生させた。


「私は、あらゆる属性のモンスターの欠点をつけます。闇には、聖なる力を」


 猪塚の周囲に浮かぶ白い杖を手にとる。杖の先端には美しい光が宝石のごとく輝いていた。


「――ホーリー・ジャベリン」


 杖の先端に、白い魔法陣が広がる。

 そこから聖なる槍が飛び出しディアボロスの体を貫いた。

 だが――ディアボロスは翼を羽ばたかせ、前へと出る。


「っ!?」


 白い槍が消えていく。

 ダメージは与えているはずであった。ディアボロスの体は傷つき、皮膚の表面の一部がえぐれ、消滅している。

 だが、致命傷にはなっていない。弱点であるはずの光魔法でも、多少のダメージで抑えられた。

 猪塚は動揺して顔を青くしつつ、急接近してくるディアボロスへ向けてホーリー・ジャベリンを放つ。

 1発、2発、3発と高威力魔法を命中させる。


「グオォォ!」


 響く苦悶の声。

 傷ついていく悪魔の体。

 だが、その動きは鈍らない。

 ディアボロスは右手で、再び闇の球体を投擲した。


「こんなバカなことが……!」


 猪塚は即座に光の攻撃魔法を放ち、ガードする。

 杖の先端に広がる魔法陣から、光の槍が放たれた。

 しかし両者の攻撃がぶつかり合い、大きな爆発が起きる。

 ゴゴゴゴゴ、という地響きが鳴るほどの衝撃と、魔力の煙が晴れた後――大ダメージを負った猪塚が、床にばたりと倒れていた。


「っ、仕方ないな!」


 ディアボロスがとどめを刺そうと前へ出る。

 青宮はそれを止めるため、猪塚の前へと素早く出た。


「次は俺が相手だ」

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