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トリニティ・ワイバーン

 三本首になったワイバーン――トリニティ・ワイバーンは、ドラゴンへ向けて突進した。

 大砲のような衝突音が空中に木霊し、ドラゴンが大きなビルの側面へ叩きつけられる。

 ゴゴゴゴゴ、とビルが壊れ、辺りへガラスとコンクリートの破片が飛び散った。

 ドラゴンの背中から大きくジャンプしたホセはビルの屋上へ着地。

 そこから雷魔法をトリニティ・ワイバーンへ向けて放った。


「――ライジンハ!」


 槍から雷の閃光が、トリニティ・ワイバーンの頭を貫く。

 ダメージは大きいようで、吹き飛ばされたかのように、その大きな体を仰け反らせた。

 隙をついて、ドラゴンはすぐさまトリニティ・ワイバーンを肉薄で押し出す。

 ホセもビルが飛び降りて、ドラゴンの背中へと戻った。

 トリニティ・ワイバーンは体を振り、ドラゴンを払う。

 両者は空を飛びながら、距離を取り、次の一手を模索した。


「こんな怪獣バトル、僕達になにができるっていうんだ!?」


 乾が思わず嘆く。

 自衛隊も動きあぐねていた。

 圧倒的なパワーとスピードで空中バトルをするトリニティ・ワイバーンとドラゴン。

 サポートしたくても、敵が強大すぎて動きづらい。

 そんな戦闘の中、樹があることに気がつく。


「あれ? 柱……全部無くなってない?」


 各員も戦場を見渡す。

 遠くからでも見える7つの柱が、消えている。

 だが、そんなはずはなかった。

 ボスを撃破しなければ、柱は消えないはず。


「青宮くん……」


 樹は不安になった。

 向こうでなにかが起きたのかもしれない。


(本当は、側にいたかった)


 青宮を見送った時。本当は、胸が苦しかった。並んで一緒に戦いたかったのだ。

 だけど、自分の実力が追いついていないのは、わかっている。

 だからあの時。青宮の背中を押したのだ。


(過去の恋の傷だって、癒してあげられなくて。どうして、なにも出来ないんだろう)


 心のモヤモヤが止まらない。

 青宮はどんどん前へ進んで、遠い人になっている気もした。

 対して樹は、自分がそんな彼に、なにかしてあげられただろうかと、疑問であった。


「オマエタチ、ヒケ!」


 ホセがドラゴンの背中から、大声を上げる。


「ジョウキョウ、ワカラナイ! ココハ、マカセロ!」


 言葉を受けた自衛隊の隊長がこくりと頷く。


「柱の消滅……ボス撃破とは思えない。青宮氏は帰還してないのだから。情報を集める必要がある! ここを離れるぞ!」


 反対する者はいなかった。

 そもそもここに残っても、戦闘に貢献できない。

 ならば、全体のために他で出来ることを探した方が良いだろう。


「……」


 樹は複雑な思いになりながら、スマイル・アドベンチャーのメンバーと共に、自衛隊に続いた。

 と、ここで移民冒険団のメンバーがホセへ向けて声を上げた。


「リーダー!」


「キヲツケテ!」


「Mag-ingat ka!」


 ホセはドラゴンの背中で、笑顔を浮かべサムズアップした。

 こうして移動を開始した一行だが――ここですんなりいくほど、ダンジョンブレイクは、甘くない災害のようだ。


「っ、敵襲!」


 道路を進んでいると、路地裏から狼のモンスターが続々と現れ、足止めを食らう。

 しかしこの相手ならば、戦える。

 樹達は守りを固めつつ、1体ずつ確実にモンスターを倒していく。

 しかし湧いてくるモンスターの数は多く、戦闘は20分ほど継続。

 強烈な緊張感もあり、スタミナが削れていくのを感じる中――どすん、どすん、という絶望を告げる地響きが道路の奥から聞こえた。


「サイクロプス……!」


 敵を認知した樹はそう言って、歯ぎしりをした。

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