真のナンバー2
現場に恐怖が走る。
ワイバーン。特に仲間を焼かれ、殺されたのを見たポイント7のメンバーの動揺は、かなりのものだ。
「そ、そんな……!」
「青宮だって、11体も倒してないのにね……」
白井と乾が絶望的な声を上げる。
しかしその瞬間――“移民冒険団”のリーダー、ホセが声を上げた。
「オマエタチハ、サガレ! ヒトリデ、ダイジョウブ」
そう言って、ホセは槍を取り出し――召喚魔法を唱えた。
現れたのはワイバーンよりも大きい、10メートルは超えそうな緑色のドラゴンだ。
四つ足でぶ厚い、キラキラと輝く鱗。
ギロリと鋭い相貌。
その存在感は凄まじく、空を飛ぶワイバーンはドラゴンに注目し、止まった。
「グオオオオオオ!!!」
ドラゴンが叫ぶと、大きな二対の翼を羽ばたかせ飛ぶ。
ホセは大きくジャンプし、そのデカい背中へと乗った。
自衛隊は混乱する。
「なんだこれは!?」
「召喚魔法だ、敵じゃない!」
「あ、あいつに任せればいいのか!?」
「たしかに、あれほどの存在を操れるのならば……!」
「移民冒険団のリーダーか! “真のナンバー2”とか名乗っているらしいな!」
「い、いみん……? 冒険者連中は、全員ネーミングセンスがイカれているのか?」
ホセを乗せたドラゴンはワイバーンの元へと飛翔する。
11体のワイバーンは一斉に、炎の魔法をドラゴンめがけて放つ。
1つだけでも、守りを固めた戦士達へ大ダメージを与えるほどの高火力魔法。
それが一身に引き受ける形となった。
さすがのギルドマスターとて、ドラゴンであろうとまずいのではないか。
誰もがそう思った。
「――ゴォォォォォ!!!」
ドラゴンは方向と共に、魔力を宿したブレスを吐く。
その攻撃は超強力な上級雷魔法となり、ドラゴンの口から荒ぶる稲妻がいくつも走る。
高威力の炎魔法と雷魔法がぶつかり合う。
その瞬間はあまりにも早く、空に大爆発を起こした。
ズドンっ! ゴゴゴゴゴゴ! と、遅れて、耳をつんざくような大音量が地面を叩く。
「「「うわああああああああああ!?」」」
地面にいた誰もが、膝をついて顔を覆う。
あまりの強力すぎる衝撃に、動けなくなる。
「一体、なにが起きて……」
樹が言いながら、顔をゆっくり上げる。
耳鳴りを感じながら、空を見る。
やがて黒煙が晴れて――ホセと、ドラゴンが伝説の竜騎士のごとく、威風堂々と空を飛んでいた。
「すごすぎだよ、これ」
乾が茫然と言い放つ。
白井も立ち上がりながら、ホセとドラゴンを恐れるように見た。
「噂には聞いたことけど……ここまでなんて」
「噂?」
樹が首をかしげると、白井が解説を続けた。
「真のナンバー2……だけど、四之宮さんと関係が悪くて、実力が思うように認められていない……っていう噂だよ」
「な、なにそれ? ホセさんは四之宮派なんじゃないの?」
「四之宮派にならざるをえないが、正解じゃないかな。四之宮さんは移民を積極的に冒険者協会へ取り入れた人だから。その恩があるんだと思う」
「だけど……四之宮さん個人は、えっと、ホセさんを気に入ってなかったってこと?」
「そういうことだと思うよ」
ホセの表情は険しかった。
そして油断する地上の戦士達へ向けて、叫ぶ。
「マダ、オワッテイナイ!」
ホセの視線の先には、1体のワイバーンが残っていた。
しかしその姿は、先ほどまでのとは違う。
全長は10メートルを超え、首の数が三つになっている。
「「シャァァァァァ!!!」」」
三つのワイバーンの頭が、ドラゴンとホセへ向けて、空気を揺らす威嚇の咆哮を上げた。




