7つのボスフロア
「そうですか……風間 迅が死にましたか」
猪塚があまり興味なさげに呟く。
青宮、猪塚、自衛隊の隊長、そしてフェミ旅団と同じポイントであるギルド“移民冒険団”のリーダー、ホセ・ガルシア・サントスというフィリピン人の30代後半の男、この3人で状況の共有と報告をする。
ちなみに移民冒険団は、四之宮派だ。
「中立派は弱いですね。獅子山の味方をする者は、頼りない者ばかり……」
猪塚がちらり、とドローンを見ながら、つぶやく。
やはりそういう方向に話をもっていきたいようだ。
ホセもそれに続くかのように、首肯した。
「シシヤマ、アイツ、ヒリキ」
片言で“非力”などとなじってくる。
「これからどうしますか?」
青宮が自衛隊の隊長へ話を振る。
同業者は後継者争いに熱心すぎて、人類の未来をかけた戦いという自覚がなさすぎる。
こんな時に、言い合っている場合じゃないのだ。
「ある程度敵の数を減らせたので、ボス討伐へ向かいましょう」
ドームの中では、7つの“赤い光の柱”が天へ向かって長くそびえ立っていた。
これはダンジョンブレイク内に出来た小さいダンジョンへワープする、空間の歪みだ。
ルールと、戦いの流れをまとめるとこうだ。
1,歪みの中、ボスフロアへ入れるのは指定された人数まで。
2,ボスフロアへ入った瞬間、外部へモンスターが召喚される。
3,召喚されたモンスター、ボス共に撃破に成功した時、柱は破壊される。
4,柱を全て破壊しなければ、フェーズは3へ移行する。
「ここから本番か……」
青宮の言葉に、自衛隊の隊長は頷く。
ポイント6の柱はここから近い。
4人はメンバーと隊員を引き連れて、赤い光の柱へと向かった。
数分間歩くと、ポイントへ到着。
間近で見ると、東京タワーのごとく高くそびえる光に、圧巻される。
猪塚が歪みへ触れると、システムから告げられた人数を報告した。
「中に入れるのは、2人だそうです」
「少ないな……」
信用がないので、青宮も触れる。
『――定員は2名までです』
いつものシステムが無機質に告げた。
「窮屈な部屋だな」
「メンバーは私と青宮さん。この両名でいいですね?」
「なに?」
青宮が猪塚の提案に振り返るも、隊長とホセは納得したように頷いた。
「順当な采配だろう」
「ソトハマカセロ」
適当な決め方に、青宮は猪塚を見る。
「外も危険になるんだろ?」
「もっとも重要なのは中です。中で敗北すれば、外で勝利したところでやり直しになるだけ。ダンジョンブレイクのボス討伐に失敗は許されません。ソロ討伐が得意なあなたと、女性リーダーの私が行くのは、順当かと」
(こいつと2人きりなのが嫌なんだが)
おちおち背中も向けられない。
だが、実力的に猪塚の采配が無難なのも事実であった。
青宮はスマイル・アドベンチャーのメンバーのところへ行き、決定したことを報告する。
樹は納得したように頷く。
「まあ、そうなるだろうね~。外は任せて!」
「……わかった」
不安になる。
ましてや、荒木がわけのわからないタイミングで抜けたのだ。
いざという時は彼がいるという安心感も、今はない。
そんな心中を察したのか、樹が頬を膨らませた。
「もー! 大丈夫だから、あなたはあなたの仕事をするの!」
「……ああ。わかっているよ」
後ろ髪引かれる思いだが、歪みへ向かう。
猪塚と並び、赤い光へ向けて手を伸ばした。
「では、参りましょう。青宮さん」
「さっさと片づけるぞ」
シュン、と2人はボスフロアへと転送。
瞬間――空に大きな、赤い魔法陣が浮かぶ。
そこから勢いよく現れたモンスターに――スマイル・アドベンチャーのメンバーと、ポイント7の隊員達が息を飲む。
「これは、中々にヤバそうだね」
乾が冷や汗を垂らしながら、つぶやく。
樹達も表情を強張った。
魔法陣から現れたのは――ポイント7を壊滅させたワイバーンであった。
しかもそれが、11体。
絶望の戦いが、幕を開けた。




