表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/55

早めに、23時に帰るか

 昨日眠りについたのは、3時過ぎ。

 そして朝目覚めたのは、8時前であった。

 携帯のアラームを止めながら、ん~、と唸り声を上げつつ、寝間着姿で起き上がる。


「さて、今日もやるか……」


 昨日は夜中まで狩りを続けるという、とんでもない労働をした後なのに、テキパキと動いていた。

 ダルいな、今日は行きたくないな、という考える暇も前はなかったので、体が勝手に動くのだ。

 その社畜、かなり訓練を受けている。

 パンを食べて、顔を洗い、着替えて、軽く部屋を掃除して……。

 諸々のルーティンを手早く終えて、部屋を出た。

 冒険者協会の支部へ到着したのは、9時ちょうどぐらいだ。

 いつもの、ほんわかとした受付のお姉さんに、まずは魔石の買い取りをお願いした。


「わかりました! わっ、魔石47個! 昨日頑張ったんですね~」


 戦利品――モンスターの死亡後、核から回収できる魔石。人類の新たなエネルギー源や、アイテムや武器、戦闘服の素材になったりする。

 全ての冒険者に与えられる収納スキル「アイテムボックス」へ魔石を回収していた。アイテムボックスは色んなものを入れられるが、大きさ・重量に関係なく1項目につき1枠を使用する。

 水を持参すれば、そこで1枠消費される、といった感じだ。

 拡張アイテムなど特別なことをしない限り、収納の上限は50。

 つまり、最大でも魔石は50個までしか持ち帰れない。

 そして今、青宮が狩りをしているエリアは1体につき魔石のレートはおよそ300円。状態や品質に個体差でムラがあると、そこからさらに下がる。

 売却時、手数料として協会へ20パーセントもっていかれるので、初級エリアの日給はおよそ10000~12000ぐらいがレートだ。

 命がけのハードなダンジョン攻略で、バイトレベルの収入。

 さらに回復アイテムなどの出費が重なると、手取りが減る。

 ちなみに青宮が使用していた回復アイテム、ポーションは1個につき1000円かかる。

 リザレクト・ポーションに関しては50000円だ。

 この2つのアイテムは常にアイテムボックスへ入れている状態。47個という中途半端な数字になっているのは、そういった事情である。

 リュックに入れて、ギリギリまで魔石を確保するという方法はあるが、一個400円ごときの魔石でそこまでする必要性は、青宮には感じなかった。いちいちリュックを降ろすなどの時間を短縮して、戦闘や移動する時間を増やした方がいいように思えたのだ。

 それにこの日給なのは、初級エリアだからだ。

 次の階層へ行けば、相場は上がる。


「これは……クリムゾンシープの魔石ですか。運が良いですね」


 アイテムボックスへの転送をしていると、受付のお姉さんがそんなことを言った。


「運?」


「はい。レッドシープを100体討伐すると、稀に出てくると言われるレアモンスターです。良好な魔石が採取できるので、一個100000円です」


「おおっ」


 ゴーストほどではないが、かなりの大金だ。命をかけただけある。

 が、受付のお姉さんは首を傾げた。


「あの……これ、お1人で狩ったんですか?」


「はい」


「ええっ? 青宮さんって、昨日レベル3でしたよね……? クリムゾンシープって、たしかレベル14だった気が……?」


「すごく強かったです」


「よくご無事でしたね……」


 決算が終わった後、入場手続きへと移ったのだが、そこでも受付のお姉さんは驚いた。


「っ!? 昨日の退出時間が深夜の2時……! あ、青宮さん、こんな無茶な狩りをしているんですか!?」


「え? ああ、まあ」


「し、しかもレベルが3から8……! 普通、1日に1つか、ボスを倒して、2つ上がればかなり上出来、ぐらいのレートなんですよ! それを5って……!」


「良いペースですか」


「ダンジョンの前に、過労で死んじゃいますよ! もう、ダメですよ、青宮さんっ!」


 プンプン、と受付のお姉さんが怒る。


「頑張り屋さんなのは、と~~っても素敵なところですけど、無茶はダメですっ。冒険者協会は、原則、冒険者を自由にする方針なので、こういったところにルールは設けていませんが……注意はしますよ。今日は早く帰ってくださいね!」


「わ、わかりました」


 ものすごい勢いだったので、頷く。

 ただ、1つ疑問が浮かぶ。


(自由にする方針って……一部冒険者へギルド加入を義務づけているのに?)


 昨日の職員の意味深なつぶやきといい、なんだか業界の闇を見たような気がした。

 だが……。その社畜、社会の闇というのは嫌というほど見てきた。


(まあ、この業界も色々あるということだろう)


 並大抵のことでは不安にならず、すぐさま適応する。

 ただ一方で、出来ればいつかブラックな生活から抜けたいという思いもある。

 なんとか、ホワイトな環境へ身を置きたいところであった。


「入場手続き終わりました。では、今日は無理しないでくださいね」


「はい」


(今日は早めに、23時ぐらいに帰るか)


 微妙にバグったことを考えながら、青宮は扉を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ