サイクロプス
猪塚の周囲には5つの杖が浮遊していた。
杖1本につき、1つの属性が付与されており、強力な攻撃魔法を操ることができる。
猪塚は右手を伸ばし――白い杖を手繰り寄せ、手にした。
「浄化させてあげましょう――ホーリー・ジャベリン」
杖の先端に、白い魔法陣が広がる。
そこから聖なる槍が飛び出し――その大きな魔力の奔流は、サイクロプスの巨体をも呑み込み、そして後方にいるモンスターをも貫いた。
地面すらもえぐれるほどの強力な攻撃。
巻き込まれたモンスターは姿を消していた。
圧倒的な高火力。
まさにギルドマスターの名にふさわしい一撃だ。
だが、猪塚は――息を飲んだ。
「効いて、ない……?」
現れるのは、体に傷のついていないサイクロプスだ。
大半のモンスターを即死させる一撃を受けておいて、ノーダメージ。
そしてサイクロプスは戦いを楽しむかのように、にやりと口角を上げた。
この中で戦闘能力が高い猪塚めがけて、走り出す。
巨体に似合わない、俊敏な動きであった。
「させないよ……!」
フェミ旅団のメンバー……かつて合同ダンジョン攻略でも一緒になった女の子の1人が、盾をもって立ち塞がる。
しかしサイクロプスの棍棒で払われ、その体が宙を舞った。
「っ、あぁぁぁぁ!?」
なんとか盾でガードして致命傷は避けたが、衝撃は殺せない。
猪塚は女の子を受け止めた。
「リーダー……!」
だが、余韻に浸っている場合ではない。
サイクロプスの足止めにすらならなかったため、距離を詰められた。
重々しい棍棒が、上から下へと一気に振り落とされる。
「っ!」
猪塚はとっさに宙を舞う杖をかざすも、それでは防ぎきれないことをわかっていた。
後継者争いとして、こんなところでリタイヤしたら話にならない。
そう思った瞬間であった。
ズドオオオオオオオオっ!!! と、凄まじい音と共に、サイクロプスが吹き飛んだ。
背後から飛んできて、棍棒に対して武器を一閃した青宮が、フォローに入ったのである。
サイクロプスの巨体が、道路をゴロゴロと転がり回った。
「無事か?」
青宮が言うと、女の子の方が顔を赤くした。
樹との会話の時に、青宮を狙うと発言した子なので、尚更その思いが強くなる。
「は、はい♥」
対して、猪塚は歯ぎしりをした。
(青宮 翼……やはり、危険な男。獅子山は大したことないけど、この男が獅子山派についているというのが、私達最大の難関。彼がいれば、簡単に戦況はひっくり返る)
サイクロプスが起き上がり、青宮を睨みつける。
先ほどまで上がっていた口角は戻っていた。
対して青宮は、にやりと笑う。
「さっきまでの、余裕そうな顔がないな。どうしたんだ?」
「オオオオオオオオオ!!!」
言葉が通じているわけではないだろうが、サイクロプスは激怒したかのような咆哮を上げる。
その声量は威圧感共に凄まじく、地面を揺らしたのであった。




