第20話 今の私が出来ること…
スノウ・リングとの会話から10日後、ミアは研究室と図書館を行き来しながら研究を進めていた。
自分の決意のために、アン教授や研究員の方々、そして通信にてベル博士にも連絡を取りながら、自分の成すべきことを行っていた。
「よし、これで強化アダプタの完成だ…ミアさんの方の新型ブレスの方はどうだい?」
「えっと…どうもうまく動作チェックでエラー出るところがあるんですよね~」
ミアは設計を行いつつ、開発を急いでいたが、新型のブレスに関しては完成がかなり掛かりそうであった。
根を詰めるのもよくないとの事で、休憩ついでに図書館に資料を取りに行きつつ、喫茶スペースにて資料の本を読みつつキャラメルラテを頼んで飲んでいた。
「甘い…落ち着くなぁ………私も…甘いかな~~~」
静かに落ち着いている喫茶店の中で、ラテを見ながら黄昏れていた。
そして、その中でいくらかの時間が経っていたのであろう。遠くから甲高い電子音が聞こえてきた。
いつの間にか眠っていたミアは、ブレスの通信機能が動作しており、その音で目を覚ましたのであった。
慌てて起きたミアは、ブレスのロックを解除し、通信に出た。
「はいっ!ミアです。」
〔あ、もしも~し、リオだよ~♪ミア、元気にしてる???〕
「リオ~♪おひさ♪どうしたの???」
〔そうそう、総監から聞いたんだけど、なんかそっちっでスノウ・リングに会ったんだって?〕
「うん…そうなんだ。ちなみに、決闘の話とかも伝えたんだけど聞いてる?」
〔聞いてるよ~。私もルナも準備はしておくよ~。ちなみになんか、もともとのミアの任務ってどんな感じなの?〕
「あ~、ごめん…そっちはなかなか難しい状態…結構ギリギリまでこっちにいると思う…」
〔了解~。無理せずに頑張ってね~♪こっちは師匠達の仕事内容を見れてスゴイためになるのよ~〕
ミアはリオとの会話の中で、近況報告をしながら久々の会話の中で、お互いが笑顔になっていた。
幼い頃からの友人のため、やはり家族と同じくらい落ち着いたのであろう。二人は優しい声で笑っていた。
しばらく、懐かしい話も含めて会話をした後に通信を閉じた。
ミアは少し冷めたキャラメルラテを飲み終えると、再び図書館の中で資料を探し始めた。
そして、しばらく複数の資料を見ていると、今度はアンから連絡が入った。
〔ミアちゃん、やっと図書館の館長とハルジリン最高責任者からの許可が降りたから、図書館の隔離書室に入れるようになったよ~♪あそこにはだいぶ古い資料もあるから多分、何かの情報が手に入ると思おうよ。入り口に司書さんがいるから教授からって言えば開けてくれるよ~〕
「ありがとうございます。早速行ってみます♪」
ハルジリン中央図書館の奥、大きな庭園を挟んだ先にある隔離書室、そこにはハルジリンの最高責任者の許可がないと入れない封印されている書室である。
今回は、ハルジリンの上層部に絶対的な信頼のあるアンの補助力もあり、入室の許可が降りたのであった。
ミアは書室に入ると、早速資料を調べ始めた。それはとても古い文献でもあり、言葉の解釈も調べないと分からない内容も多く、簡単ではなかったがミアはそれを一つ一つ、しらみつぶしに確認していた。
「すごい………こんな応用の仕方があるなんて…こっちの資料は新型ブレスの構造に利用できそう…あ、こっちの資料もルナとリオの魔法に応用できそう。」
出てくる資料は、どれも古いが得られる情報は今の魔法理論を覆すような内容が多かった。
逆を言うと、昔の魔法使い達が使ってた魔法の原理を、現代の魔法は簡素化してしまっているため、本質が見えていなかったとも言えた。
その日に見きれなかった内容は、翌日に来て引き続き調べていた。もちろんブレスの作成も欠かさず、睡眠時間を削りながらも自分のやるべきことを、しっかりと行っていた。
「時間がない…もうすぐ戻らないといけないのに…病気の対応策も…新型ブレスも全然出来上がってない…どうすれば…」
ミアは、連日の疲れと焦りで意気消沈していた。無理もない、なぜなら彼女も大人と混ざって動いているが、まだ10代前半の少女である。睡眠時間を削り、毎日研究や情報収集を行っていれば、大人ですら身体持つはずがない。彼女はそんな状況であっても、先に進むことは諦めなかった。
そんな時、書室内の中でも奥にある本に目が止まった。
それは、この書室の中でも一番古びており、ところどころがボロボロになっている本であった。
だが、ミアはこの本には何か力を感じ、吸い寄せられるように手に取った。そこには【VFM】とだけ表紙に記載があった。
ミアも、この本には他の本たちにない何かを感じ、恐る恐ると開いてみた。
「これは…読みづらい…けど、読めそう…えっと~、この…魔法…使う…V…必要…?」
最初のページに乗っていた内容は、読めこそしたものの、大分印字もかすれており、全部読み切る事が出来なかった。
だが、分かる範囲だけでもとその先も読み続けた。幸い、その後ろのページは印字されている部分は見る事が出来、翻訳もそれほど難しくはなかった。
本の中に記載されていたのは、古代の魔法の使い方や効果であった。それは現在の魔法より更に協力で、使用できれば絶対的な勝利が訳されたような魔法ばかりであった。
「何これ…この、魔法が使えれば…キングダムに勝てるかも…でも、使うには何かが必要って…あれ、後ろにも何か書いてある…?」
後ろに記載されていたのは、この魔法を資格無き者が使った場合に、どうなるかという内容が記載されていた。
「この魔法は、使用した者に絶対的な力を与える…しかし、資格無き者が使用した場合は………これって!?」
それをみた瞬間、ミアは本を閉じた。だが、ミアは司書にその本を含めいくつかの本の貸出を依頼し研究所に戻った。
研究所に着いた後、彼女はそそくさと自分の研究机に座ると、借りてきた資料を再び読み始め、その内容を利用して新型のブレスの開発を進めた。
休める時間は、自分の部屋にてお留守番をさせているキュースケと遊んだりをして身体の疲れを取っていた。
そして、ハルジリンでの最後の夜となった。
「荷物ok、整理整頓ok…後は朝にこの本を返せば大丈夫だね♪………キュースケおいで~」
呼ぶと、ミアが買っておいた専用のカゴハウスの中からキュースケが現れ、鳴きながらミアの足にぎゅーっと抱きついた。
「あともう少しで、お前のご主人様と戦わないといけないんだよ~。ちゃんと助けるからね~」
言っては見たものの、キュースケに通じているかは不安であった。
甘えん坊なキュースケを抱きしめながら、その日はゆっくりベッドで疲れをを取った。
そして翌朝、ハルジリンからアルストフィアへの帰還の日になった。
ミアは、借りていた書類一式を図書館へと返却すると、荷物を持ち駅へと向かった。
その際に、駅のホームにはアンが来ていた。
「ミアさん。貴方のおかけでこの1ヶ月、とてもいい勉強が出来ました。貴方の発想力…ぜひこれからも生かしてください。ただ…病気の方は…」
「アン教授…良いんです。病気については結局分からなかったけど、それでも当初の目的はある程度達成できたと思っていますから、強化アダプタや新型ブレス…ブレスの方はあと少しってところですけどね♪」
「…もしまた、何か力になれることがあったら私のところに来なさい。絶対、貴方の助けになってあげるから♪」
「ありがとうございます♪…じゃあ…魔法少女の方程式が…貴方の前に現れた時、その時は協力をしてください。よろしくおねがいします。」
そう言うと、ミアは深々と頭を下げた。
言葉に、アンは気づきミアの頭を撫でた。それは、もうアンの前にはミアは現れないと言うことを悟っての事であった。
そして、列車のベルの音がなり、ミアはハルジリンを去っていった。
社内の席で座り、隣にはキュースケがふかふかの椅子の上で寝ていた。
「アン教授、ごめんなさい…」
その言葉は、虚しいまでに小さく、儚いほど誰のもとへも聞こえなかった。
ハルジリンからの帰還後の翌日、ミアはM'sK本部へと報告へ来た。
そこへは、クレハ、シオン、ベルの三人が待っていた。
ミアは、任務の結果報告と、この1ヶ月にハルジリンで起こった事を人つずつ報告していた。
「なるほど、内容報告ありがとうございます。通信で受けた報告も含めかなりの情報が手に入りました。今日はこのまま自由行動を取ってください。」
「了解しました♪ベル博士、アン教授からの引き継ぎがありますので、このまま研究所に行っていいですか?」
「ほいほい~♪なら一緒に行くかい?♪」
「ぜひぜひ♪」
報告後、ミアはベルと共に研究所へと向かって行った。
総監室では、クレハとシオンが報告書を確認していた。
「キングダムの5兄弟はもともとは、捨てれたりした人間だった…か…どう思います?」
「それが、本当なら5兄弟も可愛そうだね…あと、タイタン族の村の襲撃事件、何かおかしいと思うから調べてみます。」
「よろしくおねがいします。」
二人は、報告の内容を確かなものにするため、ミア達とは別に動いていた。
いっぽう、ミアはベルの研究所に到着してドアを開けるとそこにはリオとルナがいた。
「ミア~~~、寂しかったよ~~~」
「リオ!急に抱きつかないの、ミアの首が締まってるわよ!」
「く、くるし…っぱぁ…リオ、ルナ…ただいま♪無事帰ってきたよ」
三人は、お互いの目を見合ってギュッと抱きしめあった。
そして、三人の目からは小さく涙がこぼれていた。普段から中の良い三人のため、ここまで長い期間を過ごしていなかったのは出会ってから初めてであった。
そして、その足元ではキュースケもミアの足をぎゅーっと抱きついていた。
「可愛い~~~♪この子が話に出ていたキュースケ?」
「そうだよ~♪本当は家でお留守番してほしかったんだけど着いてきちゃった。」
「へぇ~、これがあのタイタン族の子供かぁ~」
リオとルナがキュースケと遊びつつ、その間にミアは、机に座りパソコンを弄りだした。
そして、少し時間が経った後に、ミアが真剣な声で二人に語り掛けた。
「ねぇ、二人にお願いがあるんだけど…」
「お願い???」
ミアはそう言うと、自分のバッグから未完成状態のブレスを出した。
そして、それを二人に見せながら伝えた。
「これが完成したら…このブレスをユキワに渡そうと思う…」
唐突であった、それを聞いた二人は慌てながら何を言っているのかと問いただした。
ミアは、そのブレスを持ちながら少し間を置いて語りだした。
「二人には、ユキワの過去の事を前に話したと思うんだけど…その話をした後ね、ユキワは笑ってたんだ…悲しい目で…私、分かったの…あの娘は優しい…でも、出会う人を間違えて、憎しみを植え付けられて…道を間違っただけ…だから、私は賭けたいの!本当のユキワに…だから!!私は、ユキワとの次の戦い…倒す事はしない…助ける…どんな事があっても」
その目は、一ヶ月前のミアから想像もしないほど、前を…未来を見据えた輝きの目をしていた。
リオとルナはその凛々しさにカッコいいとさえ思った。
だが、彼女の思いも以外にもユキワを助けると言うのはいくつのも難問があることも事実であった。
三人は、それをどうするかと考えていた。
「どちらにしても、キメラモンスターを倒さない事にはユキワとの対話も難しいでしょ」
「私とルナでなんとかキメラモンスターを惹きつけて、その間にミアがスノウ・リングをなんとかするのは?」
「そうしてもらえると助かるけど、二人で大丈夫?」
「ふふふ…私達二人がこの一ヶ月間、何もしてなかったとお思いですか?」
「こうみえても、私もリオもそれなりに強くなってるんだよ♪」
ルナが言うと、二人は笑顔でVサインをした。
それを見たミアは、最初は驚いていたが、落ち着いた目を閉じ再びパソコンを弄りながら二人に再び、声をかけた。
「二人とも!頑張ろう…」
そう言うと、ミアは清々しさとも感じれる気持ちになった。
いくらか時間が経ち、その日は夜になった。リオとルナは自宅に帰ったが、ミアだけはそのまま研究室に残っていた。
それをベルがサポートするようか形であり、ある程度の連携が取れていた。
「ミアっち、正直な話を言うと、新型ブレスは間に合わないと思うぜ…」
「…ですね。でもギリギリまでは頑張りたいんです。」
「頑張るね~。でも詰めすぎると身体に良くないよ…適度に休んでね」
「ありがとうございます。でも、できるだけギリギリまでは頑張りたいんです。」
「…ほんと、貴方って子は…ブレス用の強化アイテムも自分のために作ったんじゃないんでしょ?」
「はい。この先、魔法少女の方程式はもっと強くなります。そのために、このリードリオンユニットはある人の為に作ったんです。」
「ミアっちはいい子だね~、しょうがないからいい話を一つ教えてあげる♪」
「えっ?」
ベルはそれを打ち明けると、ミアはよりやる気が出てきた。
そのやる気はスノウ・リングとの対決の日まで続いた。




