第19話 真実・・・そして憎悪へ
2つの病気を持ったミアは、それを治す方法がないか探すためハルジリンにて日々、模索をしていた。
本部から言い渡された任務を含め、毎日が忙しい日々だったある日、唐突に彼女が現れ、そしてミアは新たな決意をするのであった。
【森林都市ハルジリン】ここは四方を森に囲まれた緑豊かな地。
街の中にも緑が溢れ、古き良きクラシック感のある建物が連なっていた。
そして、この街のもう一つの特徴は、勉学の街との呼ばれ、複数の学び舎の並ぶ大型学園都市でもあった。
この都市の中央地区近くにある一つの建物、これはラミイ最大の魔導図書館である。その図書館の一室に、彼女はいた。
「ミアさ~ん♪良かったら一緒にお昼どうですか?」
「あ、行きます♪ちょっと片付けますので少し待っててください。」
ミアは、声を掛けてきた一人の男性と一緒にランチを取るため、読んでいた本にしおりを付け部屋から離れた。
男性はミアと一緒に廊下を歩きつつ、会話をしていた。
「しかし、ミアさんがここに来てからもう半月も経つのか~、こっちに連絡なしでベルの紹介状持ってきた時はビックリしたよ」
「すみません。てっきり連絡が行ってるものだと思ってました。でも紹介状の中の手紙見ていただいてからの行動が流石だと思います。さすが、ベル博士と一緒にメモリーブレスの基礎を作り上げた方ですね・・・アン教授です♪」
二人は、日の光が降りる中で笑いながらそんな話をしつつ、建物内の喫茶スペースに行きサンドイッチとコーヒーを注文した。
ミアは、アンにブレスの外部インターフェースを使用した強化案と、病気の事を打ち明けており、アンもそれを聞いて全力でサポートをしてくれていた。
「ちなみに、ブレスの強化アダプタの完成度ってどんな感じですか?」
「う~ん…80%ってとこかな~。ミアさんが例の物を手に入れてくれたから、この短時間であそこまでの物が完成したんだよ♪」
それを聞いて安心したミアは、嬉しそうに昼食を取っていた。
アンも、それを見ながらコーヒーを飲みつつ優しい笑みを浮かべていた。
二人は食事を終えると、別行動をするために別れた。
アンは再び研究室に、ミアは買い物をするためのバザーへと歩いていった。
この街のバザーは、ミラサキーノの商店街をも超えるほどの巨大商店群のため、情報をも商品として集まっていた。
ミアは、このバザー内で自分の症状の改善方法がないかの情報を探していた。
しかし、情報を探し始めてからの数日間経っていたが対応できる方法は簡単には出てこなかった。
少し疲れたミアは、バザーの中央にある休憩所の椅子に座って休んでいた。
「今日も収穫無しか~、まぁ簡単に情報手に入ればこの症状もすぐに直るだろうしなぁ~…それにしても寒いな~…今日は宿舎に戻ったら鍋でも作るかなぁ…」
そんな事を考えながら、空を見上げてマッタリしていたら、足元に何か違和感を感じた。
何かが足元のズボンを掴んで引っ張るような感じがあり、恐る恐るミアは足元を見てみた。
そこには、猫と熊のを足して2で割ったような子猫サイズの二足歩行の生き物がいた。
その生き物は、キュー、キュ~っと鳴きながら足を掴んでいた。
「か…か…可愛い…なに!!この子!凄く可愛くてヤバイ…」
ミアは、その生き物の可愛さに我を忘れ、撫で回していた。
少しすると、後ろの方から誰かが近づいてくる音が聞こえた。
そして、ミアの後ろに来るとすみませんと声を掛けてきたため、ミアはその生き物を抱きしめたまま振り返った。
その瞬間、お互いが凍りついた。
「あれ…ミアお姉ちゃん…」
「うそ…なんで…貴方がここに…スノウ・リング…」
そこにいたのは、ユキワの時の姿のスノウ・リングであった。
ミアは、目つきを変え、いつでも動けるようにブレスに手を掛け、臨戦態勢を取った。
それを見た、スノウ・リングは呆れたように顔をして、ミアの側に歩いていった。
「ミアお姉ちゃん。私はここでは戦う気はないですよ…あと、ここではユキワって呼んでください。もともとここには、キュースケの服を買いに来ただけですし…」
「…キュースケ?」
「ミアお姉ちゃんが抱きしめている、その子です。なんですからそこのテーブルに座りましょう。飲み物奢りますよ♪」
ユキワはミアを座らせるとスタスタとお店に行き、飲み物とクレープを2つずつ買ってきた。
笑顔でテーブルに戻ってくると、1セットをミアに渡してきた。ミアは少し不安がっていたが、恐る恐るそれを受け取り口に入れた。
「…!?…このクレープ美味しい…初めて食べた~~~♪」
「ですよね♪ここのクレープが楽しみなのも含めて、たまにここに来てるんです。」
そう言うと、ユキワもクレープを食べながら満面の笑顔をしていた。
お互いが食べ終わり、ユキワはキュースケをテーブルの上にあげて遊んでいた。
ミアは、少し落ち着きながらユキワに話しかけた。
「ねぇ、ユキワ…貴方達キングダムは何を考えているの…人が苦しんでるのを見ながら、なぜ更に人を傷つけるの?」
「…他の兄弟達が何を考えているかは私はわからいです。お父様はこの世界の完全なる征服…私は、復讐ですかね…」
ミアの問いかけに、ユキワはドリンクを飲み始めながら語りだした。
先程までとは変わり、表情も少し暗くなりながら話を続けた。
「ミアお姉ちゃん。私達兄弟はね…もともとは魔力の高い人間なんだ。でも、それぞれの問題があって迫害を受けていたのをお父様が拾ってくれたっていうのが兄弟の始まりなの…」
「キングダムの5兄弟に…そんな過去が…うそ…迫害って…」
「私も、住んでた村で家族が村八分にあってしまって…強い魔力は魔物を引きつけるって言われてね…で、まだ小さかった私を家族は山に捨てたの…未だに覚えてるわ…あんたなんて産まなければ幸せになれたのにって、母親の言葉をね」
ユキワのその言葉に、ミアは絶句した。
そんな、ミアを見ていたユキワは再び唇をあげ軽い笑みを作りながら続けて話をした。
それをしっかりと聞くしかなった。
「山に捨てられた私は、幼いながらにもう家には帰れないと思ったわ。だからあるき続けたの…私の暮らせる場所を…川の水や木の実、野草…いろいろな物を食料にして探した。そして数週間後、疲れ切って倒れていた私を助けてくれたのは、タイタン族の人たちだったわ…」
「…タイタン族って人間の倍くらいのサイズの種族ですよね…見た目の割に温厚で、人への介入もそこまでしない…」
「そう…私はそのタイタン族の住む村の一つに助けられ、そこで暮らし始めた。凄く良いところだったよ…緑が溢れて、皆家族みたいな村で…私もいつの間にか家族って言ってくれてたしね♪」
「そんな平穏な場所にいたのに…なんでユキワは今、キングダムにいるの…?」
落ち着いた会話の中で、ミアがその言葉を口にした瞬間、ユキワの顔つきが変わった。それはまさに鬼のような形相であった。
そして、ユキワはさっきよりも口を荒くしながらミアに声を上げた。
「それは、貴方達!M'sKのせいでしょ!!」
「えっ!?ちょっとまって…それってどういう…」
「あの日、私は生まれたばかりのタイタン族の赤ちゃんだったキュースケを連れて散歩をしてた。キュースケはなんでか、タイタン族だけど人間よりも小さいサイズで生まれたから皆が心配していた…けど、私が守るって言って私みたいな迫害が起こさないようにしていた。そして私は見たの…散歩から帰って来る時に…村から火の手が上がっているのを…」
「そ…それって…!?」
「私は隠れながら村に戻ったわ…そうして私は見たの…M'sKの腕章をした複数の人間が、村を住んでいるタイタン族の皆もろとも焼き払っているの…」
「えっ!!そんなことって…M'sKはむやみにそんな事をしない…」
「っ!!じゃあなんなの!!あのタイタン族の皆…私の家族を私達の目の前で焼き殺したあのM'sKの腕章を付けた人間は!!全てが終わった後に村にって、焼け焦げた皆を見た私達の気持ちもわからないで!!」
「ユキワ…」
ユキワの話には説得力があった。そしてその話は、ミアの中でユキワの事を更に考えさせられる事にった。
ユキワはそのまま、話を続けた。その言葉一つ一つが、泣きそうなくらいの悲しみ、そして怒りに溢れ震えていた。
「その場に、どれくらいいただろう…その時に、お父様…キング・オブ・プロフ様の名において、オルハリアンお兄様が私のところに現れたの…私はそのままキングダムに連れて行かれたわ…そしてお父様に会い言われたの…お前の求めた世界を作れってね…」
「ユキワの求めた世界…?」
「私は、考えたわ。その時は今より全然幼かったし、でも私はそこで決めたの…お父様に着いていき、そしてお父様の理想の世界が出来たら、その一部でいい…この子達が幸せに暮らせる国を作ろう…ってね♪」
「………」
「それを伝えたら、私はお父様から力と新しい名をもらったの…プリンセス・スノウ・リングとしてね…」
その話は、ミアにとっては夢のまた夢であった。自分より年下の女の子が、そこまで壮絶な状態で生きていたこと。そして、自分がどれだけ幸せに生きていたかを痛感させられた。
だが、ミアにはどうしても気になることがった。そして、それを伝えられずにはいられなかった。
「ユキワの事はわかった。でも…でもね…貴方は、キメラモンスターを作るのに沢山の人を殺した。それは、タイタン族を襲った奴と変わらいんじゃないのかな?」
ユキワが、三人と戦う時には必ず、周囲の人間を鍵の扉の先に集め、そのエネルギーを使ってキメラモンスターを作っていた。
ミアはそれを行った事は、タイタン族を襲ったM'sKであろう人物達と変わらない殺しを行った人間だと伝えた。
ユキワは、それを聞くと再び口を閉じ、少しの間の後に語り始めた。
「………ない…」
「えっ!?なに…?今なんて言ったの…?」
「…殺してない………今まで、キメラモンスターを作った時に、回収した人達は私の作った空間で眠ってもらっているの…」
「殺してない!?…本当なの…?ならお願い、その人達を開放して!!」
「それはできない!!殺してはいなくても生命力の8割を貰ってキメラモンスターを作っている。それを回復させるには1年以上、私の作った空間で休んでてもらうしかない。それに殺しはしないけど、私の家族を失った痛みを、皆にも分かって欲しい………他の兄弟達はどうか知らないけど、私はM'sKメンバー以外の人達は殺さない。私の家族を殺したM'sKだけは許さない。だから…近づきやすかったお姉ちゃんたち、魔法少女の方程式を狙ったの♪」
ユキワの憎悪は、M'sKと言う組織そのものに向けられていた。
それを狙って、キングダムはユキワの心を取り込んでいたのであろうとミアは悟った。
体中を震わせながら、涙を貯めながらもユキワはその目をミアに向け思いの丈をぶつけていた。
その声は周りにも聞こえ、周囲の人たちがざわついていた。
その中で、ミアはいきなりユキワを抱きしめた。驚いて、力づくで離そうとするもそれを拒むほどの力で抱きしめていた。
「ちょっ!?ミアお姉ちゃん…何をして…」
「ごめん…ごめんね…ユキワが苦しんでいるの、知らなくて…ただ、敵だから倒すって選択肢しか見つけられなくて…」
ミアは、抱きしめたユキワに涙を流しながら語りかけた。
自分の非力さでユキワの苦しみをわかってあげれなかったこと、家族を失った心を癒やしてあげれないこと…
いろいろな思いを詰め込みながらユキワに話した。
「ユキワの辛い気持ち、分かってあげれなくてごめん…私は、本部に戻ったらタイタン族の村の事を調べてみる…だから、ユキワ…私に貴方を助けさせて…貴方は優しい人…だから…キングダムではなく…私のところへ来て…」
言葉をまとめられず、ただひたすらにミアはユキワへ気持ちを伝えた。
最初は軽く暴れていたユキワも、次第に落ち着きながらミアの言葉を聞いていた。
ミアの優しい言葉を聞きながら、ユキワは心を落ち着かせ、ため息をついた。
「ありがとう…ミアお姉ちゃん…でもね…もう、遅いの………」
そう言うと、ユキワは再び強い力で抱きしめられていたのを振り切ると、ミアと少し距離を取った。
そして、ユキワは姿をスノウ・リングへと変わった。
「1ヶ月後…私達が初めて出会った場所…サイメロ村に三人で来て…魔法少女の方程式と最後の戦いを申し込みます!!私は、お父様から次が最後と言われましたから…だから全力であなた達を倒します。」
「ユキワ!!待って…!!私は貴方と戦いたくない!」
「………私が、キングダムに入る前に出会えてたら、もっとお姉ちゃん達と仲良くなれたかもしれないね。あとちょうど良かったからキュースケは貴方に預けるわ!!………ここで貴方に出会えたから、任せてもいいと思ったんだよ…ミアお姉ちゃん…じゃあね♪」
そう言うと、ミアはキュースケを残して消えていった。
キュースケは主に置いていかれたのを悟り、ひたすらに鳴いていた。それは鳴くと言うより、泣くと言うのが正しいのかもしれない。
ミアは泣いているキュースケを抱き締めながら誓った。
「ユキワ…貴方は、絶対に私が助ける………私の魔法使いとしての全力をかけて…」
ミアは、その足でアンの研究所の走っていった。
そして、研究所の扉を勢いよく開けると、アンとその助手の方たちがビックリしながらこちらを向いていた。
「ミアさん!?どうしたの…そんなに慌てて…」
「アン教授…お願いがあります………今回のプロジェクトとは別に協力してほしいことがあります…時間が間に合うか分からないですが…」
ミアはそう言うとアンの側に歩いて行き、今までに見たことない真剣な強い目で言葉にした。
「私にメモリーブレスの作り方を教えてください!!誰かを助けるための、強く優しい力を持った新しいブレス作りに協力してください!!」
(ユキワ…貴方ならきっと新しい未来を作れる。だから、一ヶ月後、絶対にどんな事があっても私が助けてみせる。)
ミアは強い思いを持ち、一ヶ月後…プリンセス・スノウ・リングとの最後の戦いが始まるのであった。




