第13話 過去の決意、今の・・・ 後編
闇に飲まれた一面黒の世界、右も左も…上も下も分からず、そしてそんな中に少女は立っていた。
「ここは…そっか私達、試練を受けていたんだ!!ルナ!!ミア!!」
リオは、ルナとミアを探し大きな声を出した。そこには、自分の声だけが反響し返事は帰ってこなかった。
何度も声を出し、見えない道を歩いていた。
「見えない…ここはどこなの…もしかして、1人でこの暗闇から抜けるのが試練なの…かな」
そんな事を考えながら、リオは更に前か後ろか分からない道を歩いていた。
そのうち、目を明けているのか瞑っているのかすら分からなくなり一度、歩みを止めて休憩をするため、地面に腰を降ろした。
もはやそこは、地面であるのか?重力があるためかろうじて地面であろうと思える暗闇の中を、リオは座りながら恐怖を感じていた。
その時、暗い空間の中でも感じた。誰かがいる気配がした。
リオは立ち上がり警戒をした。
「誰かいるの?ねぇ誰!?」
リオのその声もむなしく、返事は帰ってこない。だが、間違いなく近くに誰かがいる。
そしてそれは動いている。ゆっくりとだが、一定の距離を取りながらリオの周りをウロウロと移動しているのを感じた。
「いったい誰!?貴方は私に何をしたいの!?」
「………」
ここでリオは思い出した。ここに来て、一度も魔法を使っていないことを…幸い、メモリーブレスが腕に装着されているのは感覚でわかったため、イチかバチかで動いてみることにした。
「…炎魔法!ファイアウォール!さあ!炎で明かりができた!貴方の顔を見せてもらうわ!!!」
「っ………」『ニヤッ』
炎の明かりに照らされ、近くにいた者の正体が現れた。それはどうやらリオと同じ年齢程度の少女のようであった。照らされた瞬間は顔が見えなかったが、徐々に目が慣れていきその少女の顔が見れた瞬間、彼女は不敵な笑みを浮かべ、リオはその顔に唖然とした。
「!!…うそっ………なんで………」
リオはその顔を見ると両手で自分の口を塞ぎ、絶句した。
そうそこにいたのは、リオとうり二つの少女だったのだ。
「こんにちわ…本当の私、心の世界へようこそ」
もうひとりのリオは、そう言うと不敵な笑みを浮かべながら近づいてきた。
そしてリオ本人のそばまで来ると小さな声で耳打ちをしてきた。
「大丈夫、今の私は何もしないわ…そして今はから貴方は………最高の闇を味わうのハハハハハハ」
そう言うと、もうひとりのリオは本人の目を手で隠し、再び眼の前が闇に包まれた。
そして、リオの意識は再び消えていった。
「…オ…リオ…リオ!!寝てないで早く起きて!」
「ん…あれ?ルナ…どうしたの?」
「どうしたの?じゃないわよ!!まったく~。いくらテストで悪い点を取ったからってふて寝はないわよ!メッ!」
「ごめんなさ~い…そういえばミアは?」
「ミアは、黒板のところで先生と話をしてるよ。新しく担任になったオオカ先生が元M'sKのスタッフらしいからいろいろ聞いているみたい。まぁ、私達もいつかはM'sKに入りたいものね」
「そうだね~…ん?」『あれ?なんだろ…この違和感…これ、なんだろう』
「私も、早くM'sKに入ってSTAR☆DROPの月光さんの弟子になりたいわ~」
「もう~♪ルナは相変わらず月光様ラブなんだね~♪リオ~おっはよ~ん」
「おは~、ミアはもう話終わったの?」
「うん。とりあえず、聞きたいことはある程度聞けたからね。やっぱり私達は魔力コントロールが不得意だから、そこをなんとかしないとって言われた~」
「それ、難しいよね~私達の中の魔力は高いって言われてるけど…扱えないことにはね…メモリーブレスがあればうまくコントロールできるみたいだけど…ルナじゃないけど、M'sKのメンバーになるにはまだまだほど遠いな~」『この会話…前にもしてた気がする…たしか…1年前…それに、意識はあるのになんで身体は動かないの…まるで過去の話を私視点で見ているような…』
それは、不思議な体験だった。
過去の自分がそこにいて、友人たちもそこにいる。そしてそれは少し前の自分達を見ている。
だが、今の自分の心はそこにいるのに、そこで生きているのは過去の自分…
そして、過去の自分たちは一年前と同様に事件が起きていく状況へと進んでいくのであった。
その頃…リオ達が元いた世界では、病室で意識を失っている三人と、オオカ、日光、月光の3人がいた。
オオカは、一定の魔法陣の中で意識を集中させており、日光と月光はそれを不安そうに見ていた。
「なぁ、師匠…一旦休んだほうがいいんじゃないか?」
「バカ言ってるんじゃない!この試練は…受ける者も審判する者も怠けれないのくらい分かってるでしょ…だからアンタ達はいつまで経ってもバカ弟子なんだよ」
『リオ、ルナ、ミア…三人共、ちゃんとこの試練を乗り越えて戻ってくるんだよ…それまで私は…』
心配して声を掛けた日光を一喝したオオカは再び、魔法陣に魔力を注ぎ込み意識を集中させた。
オオカ自身も既に疲弊し、息も荒く汗だく状態になっていた。
「月光…やっぱり俺たちが審判者になったほうが良かったんじゃないか?」
「それは僕も同意見です。でも、今の状況がそれを許してくれない…今、キングダムが動き出したら、動けるメンバーはそんなに多くない…」
「クソっ、あいつら三人にもっと早く出会えていれば…」
「今は、三人と師匠を信じましょう…師匠…無理はしないでください。」
そして、心の世界では時が進んでいった。
リオは剣技の練習用の木刀を肩に背負いながら帰り道を三人で歩いていた。
『よく覚えている。この先で複数のゴブリン達が街を襲ってきたんだ。結果的には召喚士が悪巧みを行おうと、召喚魔法でゴブリンを呼び出したらしいけど…それでも人が傷ついていくのを見捨てることはできなかったな…』
「きゃーーーーーーーーー!!」
「何!?今の声…」
「あっちの方みたい!行ってみよう」
「うん!」
『そうそう…それで、襲われていた親子を助けたんだよね。自分たちが何かできるってほどでもないのに、無駄に頑張って…あれ…ちょっと意識が…また…と、び…』
過去のリオの中にある、本来の意識が一瞬飛んだ。
そしてすぐに意識を取り戻すと、再びありえない状態になった。
『うそ…なんで…?なんで目の前に私がいるの…』
「ゴブリン!今度は私達が相手だ!」
『えっ!?ちょっとどういうこと…これ…え…これって…』
そう、再び意識が戻った時、リオの精神はゴブリンの中に入っていた。
眼の前で、敵意を剥き出しにしている過去のリオは持っていた木刀を振りかざし、ゴブリンに向かっていった。
『まって、なんで私が向かってくるの!?きゃあ!!っつ…いた・・・ゴブリンの痛みが私にも…』
木刀とはいえ、その打撃がゴブリンに伝わるとその痛みがリオ自信にも伝わってきた。
そして過去のリオは、複数のゴブリンに乱打していく。ルナとミアもうまくコントロール出来ないながらも、魔法を使いゴブリンにダメージを与えていった。
『やめて…痛い、怖い、これ以上…傷つけないでーーー!!』
ゴブリンの中にいるリオは、恐怖から自分の精神が少しずつ崩壊していき、過去の自分に敵意を剥き出しにした。
そして、それはゴブリンにも伝わったのか、ゴブリンの攻撃が強くなっていく。
『!?…今の…私の心がやったんだよね…私が…私に攻撃をしたなんて…』
「きゃっ、何こいつ…さっきより強くなっていってる…」
『私が怪我をしている…知ってる。この先…私はゴブリンにやられそうになる。』
「くっ、武器が壊れた!!ルナ!ミア!大丈夫!?」
「私も、もう魔力が…」
「ごめん、すっからかんで回復も補助も厳しい…」
「っ…もうだめかも…」
『大丈夫だよ。すぐに起こるよ…奇跡への…軌跡が…』
ゴブリンの攻撃が当たりそうになった瞬間、リオの目の前にいたゴブリンが真っ二つに切り裂かれた。
ルナやミアの眼の前にいたゴブリンも一瞬で消えていった。
そして、三人の目の前には二人の男性が立っていた。
「危なかったな、お嬢ちゃんたち!」
「あ、あなた達は…!?」
「二人共、大丈夫ですか?…君は…」
「ま、まさか…月光…さん…」
「あれが…日光さんと…月光…さん」
「ま、お蝶ちゃんたちがなんとか時間を稼いでくれたおかげで、避難もなんとかなったみたいだし、後はお前たちも怪我をしてるみてぇだし、避難しな…」
そう言うと、日光と月光は振り返り、ゴブリンの方を向くと声を上げた。-
「全てを照らし…光となりて闇を打ち消す!光の勇者 日光!!」
「闇に隠れ…悪を打ち消す一筋の光!闇の勇者 月光」
【光と闇 2つの力で悪を打ち消す!我ら魔導の勇者 STAR☆DROP 】
「俺たちが!」
「僕たちが!」
【奇跡を起こす】
そう言うと、二人は周りのゴブリンたちを倒していった。
それはまさに、鬼人が如く神速で切りつけ、後方からは休む暇もないほどの魔法弾が放たれる。
『かっこいいね…やっぱり師匠たちは………俺達は魔物だけじゃなく、時には魔法犯罪を起こした人間さえも倒さないといけない時がある。だから俺たちは、殺める者たちへの最大の敬意として名乗りを行わないといけない…だったけかな…思い出した…それにわかった。私が受けたこの試練の意味…人だけじゃなく、魔物をも殺すと言うことの重さ、死ぬことの恐怖…それを学び…先へ進むこと』
「トドメだ!!シャイニング・オーバー・ブレード!!」
『ありがとう…過去の私…過去のみんな』
日光の必殺が炸裂し、その場のゴブリンが全て消滅した。
そして、ゴブリンの中にあったリオの意識もそこから消え去った。
焦ったり、泣きわめいたりすることもなく…それは、落ち着いた笑顔であった。
「んっ………ここは………最初にきた暗い場所…」
「その声はリオ!?無事だったの!?」
「えぇっ?ルナなの!!近くにいるの!?」
「私もいるよ~♪二人共大丈夫???」
「ミアも…良かった…」
「でもおかしいわね?私、確かゴブリンになっていたはず…」
「ルナも…!?」
「ルナもってことはリオもなってたんだね~?私達三人、同じ場所でゴブリンになっていたってことだね…」
「そして、それはやっぱり…私達の試練だったってこと…だよね…」
「えぇ、私もリオもミアもこの件でわかった事があるからここにいる。ってことでいいんだよね?」
目が覚めると、三人は最初にいたであろう暗い場所に戻っていた。
だが、前回と違うのは3人全員が同じ場所にいて、声が聞こえることであった。
そして、少しの会話の後にその場が明るくなり、三人はお互いを目視で確認できるようになった。
三人は、顔を見ると泣きそうな笑顔になり、お互いを抱きしめあった。
「ルナとミアが一緒にいてくれる。それだけでこんなにも心が強くなれるんだね…」
「何言ってるの…それは私もだよ。」
「私も、二人はやっぱり私の大事な人だよ…」
三人がそう呟きながら、離れないでいると…突然、遠くから手をたたき拍手をする音がした。
三人は、その音を聞くと一度離れ、周りを警戒した。
「おめでとう…魔法少女の方程式の諸君。これで心の開放の試練は達成だ!」
そう言うと、全身が白ずくめの魔導服を着た男性が目の前に現れた。
その男は、再び拍手をし三人に近づいてゆき、3~4メートルほど手前で止まった。
「あなたはいったい…誰ですか…?」
「ルナ君、良い質問だね」
「ルナ君!?それになんで私の名前を…」
「私は、心の広場の管理者にして、紡ぎ出す魔法使い…まぁTとでも呼んでくれ」
「T…さん?あなたはどうしてここに?」
「うむ、私は審判者の依頼を受けて、君たち三人を心の開放の試練を受けさせるため、そして試練をクリアしたものへ新たな道を伝えるために現れたのだ。ドヤァ」
「…リオ、ミア…あのドヤ顔のおっさん何なんですか?」
「私もちょっと…」
「そう?私、あの微妙な感じ好きだよ~♪」
「あれ?三人共、地味に酷いこと言ってない?まぁ、いいか…それでは三人共、審判者ユイナ・オオカはあなた達に試練を与え、あなた達はそれを見事クリアしました。そして今よりあなた達の心に新たなる光を与えます。」
Tと言う男がそう言うと、三人の周りに光が現れ、その光が三人の中に入っていく。
溢れ出るほどの量の光は、三人を包み込みながら満ちていく。
「これは…なんか凄く心が強くなれた気がする。」
「温かいね…忘れてはいけない思いがこうやって積み重なっていくんだ」
「一年前のあの時の気持ち、忘れてたのはきっと思い出すため…心がもっともっと成長するためだったんだ…ね、リオ!ルナ!」
三人は、光に包まれながらそう言うと、満面の笑みで再び抱きしめあった。
「青春だね~。そんな中で悪いんだけど、悪い知らせを一つ用意したよ」
「Tさん…悪い知らせって…」
「あぁね…心の開放の試練は受けるものもだいぶ精神的、体力的ダメージを受けるものなんだ。」
「はい、私達もそれは覚悟してそれを受けてます。」
「それが悪い知らせなの?」
「いや、そうじゃなくてね…それ相応の試練を受けるものが三人もいるんだ!それを与える審判者にかかる負担も大きいってことだ」
「えっ…ちょっとまって…それって…」
「リオちゃん正解だね…君たちが目を覚ました時…この世には閃光の勇者オオカ・ユイナはいなくなる。」
「そ…そんな…オオカ先生が…」
「うそ…そんなことって…」
「それが、STAR☆DROPやM'sK上層部がなかなか君たちに試練を与えられなかった理由になるね。現役のメンバーなら、数ヶ月程度の戦線離脱程度で済むと思うけど、今の状況で主力メンバーがいなくなるわけにわいかない。君たちの審判者は、生きていく分には問題ないが、大きな魔法が出来ないレベルまで消耗していた身体を無理して、君たちの審判者を務めた。」
Tのその話に、三人は震え涙を流しながら崩れ落ちた。
なおもTは話を続けた。強いしっかりとした言葉で…
「これが、心の開放の最後の試練だ!!立て!!魔法少女の方程式よ!お前たちの師の師オオカ・ユイナの意思を受け継ぎ、そして…お前たちが目指す未来を切り開け!」
Tがそう言うと、その場がまばゆい光に包まれ、三人の姿が消えた。
それをみたTはため息を付いて地面に座り込む。
「まったく…ミレーヌス家のバカ娘といい、リントフィア家の長女といい、今度はユイちゃんか…管理者なんてやるものじゃないな…大切な連中の死ばかり見えてしまう。」




