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 「ようこそ、楽園へ。ここにはありとあらゆる差別がありません。差別こそあらゆる悲劇の源泉です。

 差別のない世界なんてあり得ないとお考えですか?まあその通り、と言ってはなんですが本当にその通りなのです。勿論「差別」は「区別」だ等と幼稚な議論をする気はありません。差別と区別は全く違います。物事を左右に分けるのが区別だとすれば、それを上下に分けるのが差別です。ですから差別が無くなったからと言って区別が無くなるわけではありません。

 そうれはそうと差別がない世界などあり得ないと言いました。そうなのです。そもそも上と下というこの概念はどこから来ているのでしょうか?恐らくそれは善悪の概念でしょう。上は善、下が悪、そしてその善悪の狭間で人々は千尋の谷を這い上がっているのでしょう。因みに宗教というものは、形はどうあれ必ず善を指向します。そう考えると熱心な宗教家も出世欲に駆られ上を目指して邁進する俗人とそう変わらない事になりますね。従って私は何も宗教的な事を申し上げるつもりはありません。

 しかしこの善悪という概念は、人間の作り上げた拵えものの概念であるかと言えば、決してそうではありません。生きとし生けるものは不幸にして、先験的に善悪の概念を抱いて産まれてくるのです。それは考えてみれば分かるでしょう。死ぬより生きる方が善い、餓死するより食った方が善い、虚弱体質よりは頑強な体を持っている方が善い、知能が高い方が善い、適応能力がある方が善い、その他諸々…。それらには特に理由はありません。理由は無くても先験的にそうだと、皆知っているのです。

 先験的、ということは産まれた瞬間から既に知っているという事です。それを完全に無くすにはどうたらよいでしょうか?そうです。死ぬしかありません。その通り。ここは死後の世界。死後の世界は楽園です。この楽園の快適さは生きているうちには絶対に体験できません。所謂ピュシスなどというものははなから存在しないのです。

 どうですか?あなたも早くこちらにきて、差別の無い、真の心の安息を得てみてはいかがでしょうか?」

「死後の世界の他にもう一つ善悪を逃れ得る道がある」俺は言った。「それは芸術だ」と。そうしたら

「それは嘘です」と即座に返された


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