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やあ、久しぶり。君が一番必要としているものを手に入れる方法を教えよう。僕が誰かなんて事は聞かないでくれ。そんなことは君にとってどうでも良い筈だ。ただ初対面ではないから、久しぶりと言っておこう。
君が最も必要とするもの、それはまさに人だね?まさか違うとは言わせないよ。君の虚無も、孤独も、焦燥も何もかも、人がないことからきているのだ。君の心の中に誰か人がいれば一気に片がつくはずだ。君だってそれが何となくは分かっているだろう?さあさあ、こうして折角僕がきっかけを与えようというのだから、この機会を逃しては君の人生は浮かばれないままだよ。欲しいものを素直に欲しいという勇気が是非とも君には必要だ。
無論君がそうして身構えるのも分からなくはない。僕は何も無条件でそれを与えようなどと考えている訳ではない事は君もお察しの通りだ。しかしまあ条件はいくつかあるが、どれも簡単なものだ。そう構える事はないよ。
一個目、常に誠実でいる事
二個目、常に笑顔でいる事
三個目、相手の名前を覚える事
四個目、相手の話を聞いてやる事
五個目、相手の関心事を取り扱う事
六個目、とにかく相手を褒めてやる事
どうだい?簡単だろう?何の専門知識も能力も必要としないが、これだけで君は今の状態から救われるんだよ。これができれば僕は君がどこへ行っても孤独を感じずに生活できる事を保障する。人間の感性は千差万別十人十色などと言うが、根底のところではみんな一緒なのさ。ただそこに辿り着くまでの道筋が違うというだけの話だ。下らない自己啓発本みたいだと君は笑うだろう。だが生きるなんていうのは元々どうしようもなく下らないものさ。それは君自身とて例外ではない。君にはまず自分が正真正銘の下らない人間であることを認める覚悟が必要だね。君は下らない奴らに下らない奴扱いされるのは嫌だろう?だったら下らない人間である事を自分自身で認め切ってしまう事だ。そうすればわざわざ他人から下らない人間扱いされる事もない。彼らはいつだって隣人を愛するからだ。
何だって?別に下らない奴だと思われても構わない?そんな言いつけを守る気は毛頭ない?そうそう、その調子だ。その覚悟があれば却って僕がさっき挙げた条件を遵守する事は容易いことだろう。そもそも死を覚悟した人間しかまともに生きられない世の中だ。つまり君はおおよそにおいて順調なんだよ。君に言って喜ぶかどうかは分からないが、君は充分にまともなんだよ。言ってしまえば僕が君に何か言ってやること自体が無用の事なのさ。さっき僕が言った事をおざなりにしちまったら何も残らないが、そもそも最初から君にそういう選択肢はないんだ。得られるものの全ては人から来るんだから、それでいいのさ。その他は何も難しく考えなくていいってこった。うん、君は反抗したがるだろうね。でもそれも良いと思うよ。全てを失ったところに全てが待っているという事さ。つまりどうあがいても君が失敗する事は不可能なんだ。よかったね。




