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 目白に住んでいた事がある。学生の頃の話だ。山手線沿線で新宿や池袋の間にある街だけれど、賑やかなところでは全くない。むしろ恐ろしい程何も無い。そこらの学生は皆電車に乗って何処か別の場所へ遊びに行く。

 俺はその何も無い街の、更に奥まったところにある、物音一つしないようなところに住んでいた。静寂が耳に鳴る。そこを歩けば足音だけが響き渡る。俺はそんなところに建っている小さなアパートの一室で引きこもっていた。食料調達やその他特別の用事があるとき以外にはそこを出なかった。本を読んだり、ギターを弾いたり、パソコンを触ったり、そういうどうでも良い様な事を延々とローテーションして暮らしていた。何も考えていなかった。ただつくづく嫌気がさしていた。自分は何故こんな人間に産まれてしまったのかという漠然とした嫌悪が頭の中をぐるぐる回っていた。どんな人種に産まれるにしたってだ、もう少しマシな人生があったに違いないのに、どうして、何が悲しくてこんな人生を選んでしまったのか、一体それは誰のせいなのか、いやそもそも俺はどうしてこんな気持ちにばかり入り浸っているのか、等と繰り返し繰り返し。

 俺はそのアパートを出てからも結局一人暮らしを続けている。そしてやっぱり同じ様な事を考えている。目白にいた頃から何となくそんな気はしていた。俺はずっとこうして一人無意味な人生送っていくのだろうなという予感はあった。そしてやっぱりそうなった。どうでも良い時間の上を、どうでも良い人間がどうでも良い事をして音もたてずに滑っていく。この生活がずっと繰り返される。死のう死のうと思いながらやっぱり止そうの繰り返し。永劫回帰。もうたくさんだ。どうして生きるか死ぬかの二つしか無いのか?生きながら死ぬ事は出来ないだろうか?何かの置物のように存在だけの抜け殻状態になっていることは出来ないだろうか?しかしそれでは死んだも同然だろう…。弁証法など単なる逃避だ。役に立たない。

 俺の何がそんなに悪いのか?いや、この期に及んで善悪は問題ではないだろう。むしろ見方によっては、俺は善人かも知れないのだし…。


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